2023.06.05
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令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.1 

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

  

  

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

  

第1回は介護保険成立前夜から、現在の介護業界の現状に至るまで、日本の介護の流れダイジェストです。介護にあまりなじみがない方でも今までの流れが一望でき、介護業界が長い方は振り返りと経緯の解説で当時の状況や関連性が理解できます。

  

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

 

目次

  • 1.  介護保険法施行前夜
  • 2.  2000年4月の介護保険法スタートに向けて
  • 3.  措置時代から介護保険法時代へ
  • 4.  施設から在宅へ舵を取る

  

  

社会保障審議会 介護保険部会(第92回) 令和4年3月24日 介護保険制度をめぐる最近の動向について

    

令和6年介護保険法案が通常国会で審議中である。5月には成立の見込となっている。今後は介護報酬改定の審議も始まる。ここで介護保険法20年の歴史を振り返り、令和6年介護保険制度改正に備えたい。

 

   

1. 介護保険法施行前夜

1994年4月厚生省は、高齢者介護対策本部を設置して、政府が介護保険制度について本格的な検討に着手した。

1969年の厚生白書では、寝たきり老人という単語が登場し、1972年には小説「恍惚の人」が痴呆性老人に触れて大ベストセラーとなっていた。措置の時代では、特別養護老人ホームは低所得者に利用が限定され、1982年に、訪問介護が所得税課税世帯でも利用が可能となる。

1986年には介護老人保健施設が増設されたが、実質的に利用が限られており、多くの高齢者は病院に入院を選択する時代であった。これを、高齢者の社会的入院と呼んだ。1989年4月の消費税導入に合わせて、12月にはゴールドプランが策定。1990年には、在宅介護支援センター。1992年に訪問看護が創設された。

1994年には21世紀福祉ビジョンが公表され、介護保険制度に繋がる。1994年12月には、新ゴールドプランが策定され、介護保険制度の導入が現実化した。

この中で、ホームヘルパー17万人、デイサービス/デイケア1.7万カ所。在宅介護支援センター1万カ所。訪問看護5千カ所。特養24万床、老健29万床と言った目標が具体化する。

そして1997年12月9日、介護保険法が、国会で成立した。

 

        

2. 2000年4月の介護保険法スタートに向けて

介護保険法の施行は2000年4月と決定した。その実施までの導入期間において、様々な検討が行われることとなる。

制度の肝であるケアマネジャーについては、1998年4月10日介護支援専門員に関する省令が公布された。ケアマネジャーについては、制度の施行時に4万人以上の育成が必要であるとされた。そのため、ケアマネジャー試験の対象職種は幅広く認められる。

また、認知症対策として、当時スウエーデンで普及が進んでいた、グループホームの整備が急務とされた。1999年3月で103カ所しかなかったものを、1999年12月のゴールドプラン21では、2004年度末までに3200カ所とする計画が盛り込まれている。

グループホームと併行して、介護施設のユニット化の促進も掲げられた。そして、身体拘束ゼロへの取組も取り上げられた。

当時の医療では、抑制と呼ばれる身体拘束が当然視されていた中で、身体拘束禁止は大きな進歩であった。

要介護認定は1999年10月からスタートした。そして1994年4月厚生省が高齢者介護対策本部を設置して6年後、世紀の大事業と呼ばれた介護保険制度が、2000年4月1日、ついに船出した。  

 

   

3. 措置時代から介護保険法時代へ

介護保険法の最大の特徴は、措置の時代に参入を認めていなかった営利法人の参入を解禁したことである。

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