2025.06.25
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訪問介護における外国人材導入の現状と課題

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.8~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

  

第8回は、「訪問介護における外国人材導入の現状と課題」です。

 

外国人技能実習生と特定技能者の訪問介護業務への参入が正式に認められ、外国人介護職員の役割が拡大することが期待されています。

しかし、これは単なる業務の拡大にとどまらず、訪問介護の特性に応じた人材受け入れ体制の見直しが必要です。

では、具体的にどのように受け入れ態勢を構築すればよいのでしょうか?

今回の記事では、外国人材が訪問介護業務に参加するために、各事業者が取り組むべき課題や方法について具体的に解説します。

介護事業を経営している方に必ずお役立ていただける内容となっております。ぜひお読みください。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 人手不足解消の鍵を握る制度改正

2025年4月、介護業界は外国人技能実習生および特定技能者の訪問介護業務への従事が正式に解禁されるという制度的転換を迎えた。

従来、外国人材は施設系サービスに限定されていたが、訪問介護領域にまで業務範囲が広がったことにより、慢性的な人材不足に苦しむ地域現場にとって新たな選択肢が開かれたといえる。

  

とりわけ、生活援助や身体介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護といった利用者の日常生活に深く関与する分野で、外国人介護職員が果たす役割は今後急速に拡大すると見られている。

ただし、この制度改正は単なる業務対象の追加ではなく、訪問介護の特性を踏まえた人材受け入れ体制の再設計を求めるものである。

  

  

2. 訪問介護特有の高度な能力要求と文化的適応

訪問介護は、施設とは異なり介護職員が単独で利用者宅に赴き、1対1でケアを行うため、職員には相応の判断力、観察力、対話力が求められる。

利用者との信頼関係を築き、微妙な体調の変化を察知しながら柔軟に対応するには、言語的な運用力や日本文化への理解が不可欠である。

  

制度上、訪問介護に従事する外国人材は、介護職員初任者研修の修了1年以上の施設勤務経験を必要とする。

これは現場での即応力や基本的な技術を担保するための基準ではあるが、実際のサービス提供においてはそれだけでは不十分であることも多い。

例えば、日本語能力はN4以上が目安とされるが、感情的なやり取りや緊急対応のためには、N2~N1レベルの会話理解が求められる場面が少なくない。

  

加えて、訪問介護においては、掃除や調理、洗濯、買い物といった「生活援助」業務が多く、それぞれの家庭に根付いた文化的背景に即した支援が必要となる。

清掃の基準や調理方法、味付け、宗教的な配慮に至るまで、利用者の生活習慣に適合する柔軟な対応が外国人材にとって新たな学習課題となる。

  

 

3. 小規模事業所が直面する導入の壁と対応策

外国人材の受け入れにあたっては、特に小規模な訪問介護事業所にとって高い壁が存在する。

初任者研修の支援体制、OJTの実施、同行訪問による現場指導など、人材育成に必要な工数とリソースの確保が困難なケースが多い。

また、事業所によっては日本語指導のノウハウ多文化マネジメントの経験が不足しており、外国人職員の孤立や離職につながるリスクもある。

  

こうした課題への対応として注目されているのが、地域資源との連携とICT・AI技術の積極的導入である。

 

 

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