2025.03.12
5

新年度の職場環境等要件と新たな補助金制度

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.5~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

 

第5回は、「新年度の職場環境等要件と新たな補助金制度」です。

2025年4月から、介護職員等処遇改善加算の算定要件である「職場環境等要件」が変更されます。この改正は、介護業界の慢性的な人材不足や現場の負担増加に対応し、職場環境の改善をより実効性のあるものにすることを目的としていますが、これにより、事業所ごとに求められる対応が大きく変わる可能性があるようです。

介護事業を経営している方必見の内容になっております。ぜひお読みください。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 処遇改善加算の算定要件である「職場環境等要件」が変更

2025年4月から、介護職員等処遇改善加算の算定要件である「職場環境等要件」が変更される。この改正は、介護業界の慢性的な人材不足や現場の負担増加に対応し、職場環境の改善をより実効性のあるものにすることを目的としている。これにより、事業所ごとに求められる対応が大きく変わる可能性がある。

 

(1)新しい職場環境等要件の概要

2025年度以降の職場環境等要件は、以下の6つの区分に整理される。それぞれの要件に対し、事業所は具体的な取り組みを進める必要がある。

 

①入職促進のための施策

介護業界の人材確保を促進するため、幅広い採用の仕組みを整備することが求められる。具体的には、職業体験の受け入れや、ハローワークや専門学校との連携強化を進めることで、新たな人材の確保を図る必要がある。

 

②職員の資質向上・キャリアアップ支援

職員の能力向上を支援するため、定期的な相談機会の提供や、研修の実施が求められる。また、キャリア段位制度の導入を進めることで、職員が自身の成長を実感できる仕組みを整備することが望ましい。

 

③仕事と家庭の両立支援・多様な働き方の推進

介護職員が長く働き続けられるよう、ワークライフバランスを考慮した支援が必要となる。例えば、育児・介護休業制度の充実、短時間勤務制度の導入、業務の属人化を防ぐ仕組みづくりが求められる。

 

④職員の健康管理施策の充実

介護職員の健康を守るため、健康相談窓口の設置や定期健康診断の実施、ストレスチェックの導入が必要となる。また、休憩スペースの整備など、働きやすい環境づくりも求められる。

 

⑤生産性向上のための施策

介護現場の業務負担を軽減し、効率的な働き方を推進するために、ICT機器の導入や業務改善活動を推進する必要がある。ただし、介護ロボットやICT機器の購入費用そのものは、補助金の対象外となる場合がある。

 

⑥やりがいや働きがいの醸成

介護職員がやりがいを感じながら働けるよう、職場内でのケアの好事例を共有することや、職員の意見を反映した勤務環境の改善を進めることが求められる。

 

(2)適用猶予措置について

2025年4月からの職場環境等要件の変更に伴い、適用猶予措置が導入されることが決定している。事業所が2026年3月末までに要件を整備することを誓約し、処遇改善計画書に記載した場合、2025年度の時点で要件を満たしているとみなされる。この措置により、事業所は計画的に環境整備を進めることができる。

 

さらに、「介護人材確保・職場環境改善等補助金」の申請を行った事業所については、2025年度の職場環境等要件の適用が猶予される。この補助金を活用することで、経済的負担を抑えつつ要件整備を進めることが可能となる。

 

新たな職場環境等要件の導入により、事業所は介護職員の働きやすさを向上させるための施策をより具体的に実施する必要がある。特に、ICTを活用した業務効率化や職員のキャリアアップ支援の強化が求められる。

 

出典:厚生労働省 第243回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

【資料3】処遇改善加算等について

    

  

2. 介護人材確保・職場環境改善等補助金

介護人材確保・職場環境改善等補助金は、介護業界における人材不足の解消と職場環境の改善を目的として、2024年度に導入された新たな補助金制度である。この制度では、介護職員一人あたり最大5万4000円相当の支援を受けることができる仕組みとなっており、事業所が職員の負担軽減や働きやすい環境の整備を進めるために活用することが可能である。

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP