2025.02.03
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2025年度の生産性向上の取組のポイント

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.3~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

 

第3回は、「2025年度の生産性向上の取組のポイント―前編」です。

補正予算により年度内に処遇改善のための補助金が緊急的に設けられることは多くの方が周知のことと思いますが、その受給には、業務の洗い出しや効率化、改善方策の立案といった生産性向上の実施を前提とした取組を行うなどの要件が課されています。また、2025年度からの介護職員処遇改善加算の算定要件にも生産性向上の取り組みが盛り込まれることもあり、介護事業者にとって「生産性向上」は重要な課題となっています。

そこで今回は、生産性向上のためには何から取り組めばよいのか、その流れとポイントを解説します。5Sや3Mといったキーワードを理解し、実践するためにも、ぜひこの記事を参考にしていただければと思います。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 新たな補正予算と処遇改善加算の算定要件

 

生産性のイメージ

 

年度内に処遇改善のための補助金が緊急的に設けられる。

 

この補助金の詳細などは次回のコラムで解説の予定であるが、その受給には、業務の洗い出しや効率化、改善方策の立案といった生産性向上の実施を前提とした取組を行うなどの要件が課されている

施設系では生産性向上推進体制加算の取得が前提とされ、この加算の上位区分を満たすためには、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフトなどの導入が必須となる。

 

2025年度からの介護職員処遇改善加算の算定要件にも生産性向上の取り組みが盛り込まれる

処遇改善計画書については、主な特例措置が一年延期され、生産性向上への取り組みも、2025年度中に実施する旨の誓約で良いことになったが、一年以内に実施することが必須となっている。

 

すべての介護事業者において、生産性向上は、もはや避けては通れない緊急課題となっている。

    

  

2. 求められる生産性向上への取り組み

 

業務の見直しのイメージ

 

2025年度の介護職員等処遇改善加算の算定要件には、生産性向上への取り組みがこれまで以上に重視される。

また、新たに創設される補助金の受給要件にも同様の基準が設けられる。

生産性向上は、ICTの活用や業務の効率化を通じて、介護現場の課題を解決し、利用者のケアの質を高める重要な取り組みである。

 

ICT化というと高価な機器や複雑な技術を想像しがちだが、その本質は日常業務の見直しを進め、業務の無駄や非効率を解消することにある。

介護現場では、介護記録ソフトや見守りセンサーなどのデジタルツールの導入が進んでいるが、一方でベテラン職員が新しい技術を敬遠するケースもある。

ICT化を成功させるには、経営者が強く関与し、トップダウンだけでなく現場の声を反映しながら、職員が納得できる形で導入を進めることが重要である。

 

例えば、議事録作成にはAI文字起こし機能を活用し、手間を削減することができる。

また、業務プロセスの標準化やファイル管理ルールの徹底を行うことで、紙とデジタルの両面での業務効率化が可能となる。

 

産性向上を実現するには、ICTの導入だけでなく、現場の業務プロセスを見直し、持続可能な仕組みを構築することが求められる。

 

  

3. 生産性向上委員会の編成と 5S の実施

 

整頓のイメージ 

現代のICT化が進む中で、ペーパーレス化は理想とされているが、介護現場では依然として紙ベースの書類が多く使用されている

 

排泄表、食事表、入浴表などの記録が紙で管理される理由は、導入されたシステムが現場のオペレーションと完全に適合していないためである。

その結果、現場の業務は従来の作業プロセスを基に運用され、新たなシステムは部分的にしか活用されていない。

 

この状況では、システムの補完として紙の書類が必要とされる。

また、紙の書類は一覧性が高く、現場スタッフにとって視認性や使いやすさの面で優れていることも一因となっている。

さらに、システム導入がトップダウンで進められた結果、現場のニーズに十分対応できていない。

 

ICT化を成功させるには、現場の課題を分析し、それに応じたICT機器やプログラムを段階的に導入することが求められる

 

生産性向上を目指すには、まず生産性向上委員会を編成し、介護現場の課題を可視化することが重要である。

この委員会では、ICT導入に限らず、作業の簡素化や効率化につながるアナログ手法も検討する。

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