2025.01.09
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令和6年度において急務のBCPの作成と研修、訓練の実施

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.2~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

 

第2回は、「令和6年度において急務のBCPの作成と研修、訓練の実施」です。

BCPとは事業継続計画のことですが、介護事業者においてもBCP作成は義務化されており、未策定であったり、研修や訓練を行っていない場合は運営基準違反となり指導対象となります。しかし、BCPを策定すると言っても、何から手を付けてよいかわからない方も多いかと思います。

そこで今回は、BCP策定や研修、訓練の実践的なポイントを解説します。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 令和6年度から義務化が始まっている

令和3年度の介護報酬改定で、全介護サービス事業者に業務継続計画(BCP)の策定や研修・訓練の実施が義務化された。

 

研修や訓練は、在宅サービスで年1回以上、施設サービスで年2回以上の開催と記録が求められる。

令和6年度の改定で設けられたBCP減算は特例適用時に令和7年4月から始まるが、減算は報酬算定要件であり、義務化そのものは令和6年4月から変わらない。

 

未策定の場合、減算対象にはならないが運営基準違反となり指導対象となる。研修や訓練の未実施も同様である。

 

BCP作成の義務化

出典:厚生労働省 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

   

  

2. ありがちな誤解について

BCP作成時にありがちな誤解として、厚生労働省のひな型を全て埋めなければならないという考えがある

 

しかし、ひな型は例示に過ぎず、必要な部分だけを使用すれば良い。

BCPは研修や訓練で得た実体験に基づいて見直す必要があり、完成することはなく、作成完了時点がスタートとなる

作成過程では職員と知恵を出し合い、必要に応じて地域との連携や共同訓練といったハードルの高い項目を後回しにすることも可能である。

 

ひな型をすべて埋める必要はなく、まずは完成を目指し、その後の研修や訓練で内容を充実させていくことが重要だ。他事業所との共有や専門家のアドバイスも有益であり、常にアップデートを行う姿勢が求められる。

 

感染症BCPについては、5類移行後も大幅な変更は不要である。感染症対策の基本は共通しており、計画は新型ウイルスの発生を想定したものとする

コロナ禍初年度の状況を想定して作成すれば、将来のウイルス流行にも対応可能である。

 

BCPは職員が出勤できない最悪の状況を前提に作成すべきであり、感染症以外にも自然災害など幅広いリスクを考慮する。

  

     

3. 机上訓練(シミュレーション)が有効である

BCP策定後の研修・訓練では、机上訓練(シミュレーション)が有効である。練のプロセスを通じて新たな考えや対処法の気づきが生まれ、BCPの改善につながる

検討テーマの設定が重要であり、自然災害や感染症に応じた具体的な状況を想定すると良い。参加者全員が発言でき、BCPの周知と見直しにつながる点がこの方法の大きなメリットである。

 

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