2024.12.12
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介護事業者の経営情報の報告義務化への対応方法

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.1~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

 

第1回は、「介護事業者の経営情報の報告義務化への対応方法」です。

今年度から義務化された経営情報の提出ですが、提出方法や提出時に必要なIDについてなど、情報を整理出来ず困っている介護事業者の方も多いかと思います。そこで今回は、現状で決まっている手続きの流れや仕組み、用意しなければならないもの、会計事務所への委託の可能性などを解説します。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 今年度から経営情報の提出が全サービスに義務化に


経営情報をまとめている図

  

今年度より、全ての介護サービス事業者様が経営情報を都道府県知事に提出すること義務化された。

 

社会福祉法法人や、みなし指定事業者も例外では無く、期日までの提出が求められる。期日までに報告が行わない場合には、期間を定めて報告することを命ずることが出来るとされている。命令は軽微な行政処分であり、提出を拒んだ場合には指定の取り消し、業務停止処分に出来るとされた。

  

経営情報を提出しなくても良いケースは2つ示されている。1つは 1年間の収入が100万以下の場合である。長期間休業していたり、決算月ギリギリに許認可が受けて稼働日数が少ない場合や、みなし指定を受けていて稼働率が少ない場合などが該当する。もう1つは、自然災害に被災して報告出来ない場合である

  

 

2. 提出すべき経営情報は何か

従来から、社会福祉法人は財務情報の提出が義務化されている。今回、提出が求められるのは経営情報であるため、改めての提出が必要となった。

 

提出データは、税務署に提出している決算書を提出するのではない。基本的には、事業所別の情報を報告する。介護事業者は運営基準において、会計の区分による経理をしなければならない。

会計の区分では、拠点ごと、事業所ごとに経理を分けることが求められる。そのため、事業所ごとの提出が基本となる。提出すべき情報は、以下の4つである。

 

①事業所施設ごとの名前、名称、所在地、法人番号、消費税の区分、経理方法、事業所番号等の基本情報。

 

②事業所、施設ごとの収益と費用の内容。

基本的に、事業所ごとの収支計算書を提出する。ただし、収支計算書をそのまま提出するのでは無く、集約したものになる。損益計算書などの勘定科目を、指定された報告区分に集計する。最低限、提出すべき区分は、収益、給料費、業務委託費、減価償却費、水道光熱費、その他経費の6つである。損益計算書上で、細かく勘定科目を分けていたら、それぞれの区分に分類して、合算して報告することが必要となる。まだ、任意で報告を求めている内訳区分もある。

 

③職員の職種別人数の報告。

例えばデイサービスであれば、管理者1名、生活相談員1名、看護職員1名、介護職員3名、機能訓練指導員1名と言うように、決算年度の初日の属する月に在籍した職員数を報告する。

 

④その他必要な事項。

併設サービスの有無。医業や障害福祉事業の兼業の有無を報告する。

 

この、①から④の4つの情報を、基本的には事業所ごとに、やむを得ない場合は法人単位で提出することになる。

 

報告すべき収益・費用の内容 対応する会計上の勘定科目 任意記載の項目
介護事業収益 介護事業収益 うち施設介護料収益、うち居宅介護料収益、うち居宅介護⽀援介護料収益、うち保険外収益
給与費

給与費

給与に係る費用

うち給与
職員に⽀払う俸給、諸⼿当及び賞与

うち役員報酬、うち退職給与引当⾦繰⼊、うち法定福利費
業務委託費 洗濯、清掃、夜間警備及び給⾷(給⾷材料費を除く)など事業所の業務の⼀部を他に委託するための費⽤や派遣会社に⽀払う⾦額 うち給⾷委託費
減価償却費 固定資産の減価償却の額
⽔道光熱費 介護事業費⽤のうち、「給与費」「業務委託費」「減価償却費」「⽔道光熱費」の項⽬として報告したものを除くもの
その他費⽤ 事業費及び管理費のうち、「給与費」「業務委託費」「減価償却費」「⽔道光熱費」の項⽬として報告したもの及び、⽀払利息並びに為替差損を除くもの うち材料費、うち給⾷材料費、うち研修費、うち本部費、うち⾞両費、うち控除対象外消費税等負担額

事業外収益

うち受取利息配当⾦、うち運営費補助⾦収益、うち施設整備補助⾦収益、うち寄付⾦

事業外費⽤

うち借⼊⾦利息

特別収益

特別費⽤

法⼈税、住⺠税及び事業税負担額

厚生労働省通知等に基づき、編集部作成

 

    

3. 提出期限と提出手段

提出期限は、各会計年度終了後、3月以内とされた。

提出方法は、電子的な方法を用いる。新たなデータベースシステムが構築される。このデータベースに電子申請として提出する。この場合、2つの方法が想定される。

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