2022.08.09
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【外国人材相談事例#3】「勝手に進めて失敗されちゃう」問題の処方箋

「勝手に進めて失敗されちゃう」問題の処方箋

 

執筆者:山下弘喜

 

私は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っているのですが、その繋がりから外国人材との働き方について相談を受けます。

 

その中でもよくある相談内容と解決策を、具体的な事例を元に紹介します。

 

【今回の相談内容】

  

『会議で決まった業務をチームで役割分担しながら進めていくことが多いのですが、途中でやり方を変えたり、指示したことと違う方法で進めたりするので困っています。

 

本人はそれでいいかもしれないですが、周りで一緒に働いている人に迷惑がかかってしまうケースがあったり、最悪の場合「できませんでした」と失敗してから報告してきて……。

「事前に相談して」と何度も言うのですが改善されません。どうしたらいいでしょう?』

 

 

▽前回のお悩み相談はこちら

【外国人材相談事例#2】お願いした仕事の「仕上がりがおかしい」問題の処方箋 【外国人材相談事例#2】お願いした仕事の「仕上がりがおかしい」問題の処方箋


 

相談内容の背景

IT企業でソフトウェア開発のプロジェクトマネージャーである高田さん(仮名)は、4〜5人の開発メンバーと一緒にチームで分担して開発作業を進めています。受託開発が主な現場では、要件定義で決まっている仕様書に沿ってコーディングしていく業務は、時間的にも余裕があるとは言えない環境です。
 
チームメンバーの中で唯一の外国籍であるベトナム出身のロイさんは、開発経験5年の中堅社員として活躍しています。ベトナム在住時代、オフショア開発現場で日本の仕事をしていた経験から日本語でのコミュニケーションを取ることができ、来日2年目です。

  

定例でメンバーと会議をして、進行管理を行っていく中で、方法やプロセス、役割分担を決めて仕事を進めています。会議の時には、ロイさんを含めメンバーの合意をとって仕事を進めていっているはずなのに、途中でロイさんは、仕様や方針を勝手に変更してしまうことがあります。

 

目的のプログラムが出来上がったとしても、他のプログラムに影響がでたり(出るかどうかをテストする必要があったり)、時には、「問題がありました」と締め切り前日に言ってきたりと、いわゆる「報・連・相」がないのです。かと言って細かくチェックする時間もないので、ある程度任せなければならない状況です。

 

あらかじめ相談してくれれば、調整もできるし、何よりロイさんは技術があるので、より良い仕上がりしていくこともできるはずなんですが……と悩んでいました。

 

 

【今回の問題】決定プロセスに対する考え方が違う

みんなに同意を取りながら決めていくか、自分の権限の範囲で決めていくか。決定プロセスにおいて日本は独特の文化がある

日本の仕事の決定プロセスは、強固な「合意形成型」で進行していく文化です

【合意形成型】

みんなで決めて仕事を進めると言うことを徹底しています。

「稟議」システムがその典型で、決定事項は、「全員の同意(コンセンサス)のもとで」と言う前提が企業文化として根付いていて、現場レベルになると会議で合意をとります。

自分で勝手に決めないで、上司や周りのメンバーに相談するという行為がないと仕事がやりにくいという習慣があります。

一方、アジアの多くは「役割 – 権限 – 責任」が一体となってその職域(ポジション)が明確な文化です。

【【職域が明確な文化】

仕事において、権限の範囲内で自分が責任を持って決断し、役割を担うべきと言うことが常識です。

自分が行う仕事は責任を持って自分で判断するべきであり、他人に(アドバイスは求めたとしても)合意をとってから仕事を進めると言う概念自体がなかったりします。

アジアにおける決裁の仕方の違いMAP
※参照 Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋

  

日本は、上の図のように極端に「合意形成型」の決定プロセスを重んじている文化です。それが当たり前なので、そうでないと仕事がうまく進みません。

 

また、逆も然りで、 この文化でない外国籍の人たちは、同意をとりながら仕事を進めていくことに大きな違和感を感じています

 

何に対して、誰に合意をとっていけばいいのかが感覚的にわかりません。なにしろ、どんなことにも周りの同意をとっていたら、仕事が一向に進まないというだけではなく、「自分で決められる権限が極端に狭すぎる」ということに対して「認めてもらえてない」と言う感覚に陥るからです。

 

その割に、「責任を持って」なんて言われても、自分で決めていないことに、なぜ責任を取らなければならないのかというロジックにつながるわけです。これは、日本の組織文化において、責任の所在が曖昧になる構造の問題に直面していることも事実として言えます。

 

フラットな組織か、上下関係の強い組織かどうかも関係している

職場に上下関係があまりなく、フラットな組織が形成されている企業文化では、コミュニケーションが取りやすいという理由から決定プロセスは自然と「合意形成型」になりやすいものです。上下関係や権限がはっきりしているヒエラルキー型の組織では、自分自身での判断に責任が伴うため、自己判断に重きが置かれやすい環境になります。

 

しかし困ったことに、日本はヒエラルキー型組織であるにもかかわらず、権限がはっきりしていない(もしくは極端に狭い)ため決定プロセスにおいては「合意形成型」にしなければならないというトリッキーな仕組みになっています。これに、外国籍の人たちはで混乱し、「仕事しづらい」と感じる一面のようです。

  

 

 

 

  

外国人採用サポネット

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