2022.07.21
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【外国人材相談事例#2】お願いした仕事の「仕上がりがおかしい」問題の処方箋

【外国人材相談事例#2】お願いした仕事の「仕上がりがおかしい」問題の処方箋

 

執筆者:山下弘喜

 

仕事をお願いする時に、少し難しい業務なのでやり方を説明してから「できる?大丈夫?」といつも確認をします。すると二つ返事で「できます」と言うので任せるのですが、だいたいできてないんです。本人は、「できましたー!」って嬉しそうにやってくるのですが、そうじゃなくて……。みたいなことばかりで、結局自分でやり直すことも多いです。

 

お願いしたことと違うことをやっていることが多かったり、思ったほどの仕上がりになってなかったり。どうしたらいいでしょう。

このような相談をうけました。

  

私は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っているのですが、その繋がりからいろいろ相談を受けます。

 

今回は、依頼した仕事の仕上がりが、期待と違った際の対処方法について解説していきましょう。

 

 

▽前回のお悩み相談はこちら

【外国人材相談事例#1】「伝えたことと全く違うことをしている」問題の処方箋 【外国人材相談事例#1】「伝えたことと全く違うことをしている」問題の処方箋


 

相談内容の背景

某制作会社の工藤さん(仮名)は、ディレクターとして次の制作企画を仕上げるべく、事前調査や関係者の手配、原価計算などの具体的な落とし込みの作業に取り掛かっていました。比較的大きな企画となる今回の業務は、同チームで分担して行かないと納期に間に合わない状況。工藤さんは韓国からきた朴さん(仮名)に仕事を割り振ることにしました。

 朴さんは、前職の韓国の会社で優秀な成績を収めている、いわば「できる」社員として入社してきています。日本語も堪能です。

 

しかし、今回のように仕事を割り振って、いつまでに◯◯を資料にしてくれ、といった最終的な仕上がりまでの裁量を任せると、出来上がった資料がどうも的を外していたり、時間をかけなくていいところに時間をかけていて肝心なところの内容が薄かったり、求めたアウトプットが返ってきません。

 

朴さんとしては、自分なりに考えて良いと思ったものをいつも丁寧にやっていると主張してきます。

 

確かに雑に仕事をしている訳ではないのですが、結果的にできていないことに工藤さんは困惑してしまっています。

 

 

【今回の問題】『スケジュール通りの進行管理』を良しとする習慣と『より大事なことに時間を多くかける』習慣の違いによる、すれ違いがおきている

アジアでは、時間軸に沿った時間の使い方より柔軟な時間の使い方が大多数

日本の仕事の進め方(時間の使い方)の特徴として、スケジュール通りに決められたことを順番に行っていくこと良しとするビジネス習慣があります。そんなこと当たり前でしょう?と思われがちですが、アジアの中ではこの特徴が顕著な国は、日本とシンガポールぐらいです。

 

下記図のように、直線的な時間を使うよりも、柔軟な時間の使い方をする習慣になっている国のほうがアジアでは多く見られます。

 

Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋 

※参照 Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋

  

例えば会議の進め方を例にとって、違いを説明しましょう。

 

通常、日本の場合だと会議にはアジェンダがあって今日は何を話し合い、何を決めるということが順番にあり、会議内で一つずつ時間内で決めていくという暗黙の了解があるかと思います。

 

そのため、進行管理やタイムキーパーのような考え方もあり、時間軸に従って物事を進めていくことが当たり前という、共通認識があります。

 

一方、柔軟な時間の使い方をすることが習慣になっている国では、アジェンダが用意されていようとも、その時の議論の内容次第で、より重要なことにたくさん議論の時間を使ったり、必要ならば話がどんどん脱線したりします。

 

「より良い結論を導き出すために重要なことである」となった場合、彼らにとっては時間内に結論を出すよりも議論を深めていくことの方が優先度が高いというビジネス習慣があるのです。

【日本とシンガポール】

スケジュール通りの進行管理。

会議は時間軸に従って物事を進めていく。

 

【その他のアジア諸国】

より重要なことに、時間を多くかける。

会議は時間内に結論を出すより、重要なポイントの議論を深めるやり方

今回のケースでは、工藤さんは「いつまでに何をする」というゴールを決めて指示を出していたのですが、朴さんは上記の習慣に従って、自分の考える「より良い結果」を求めてプロセスの途中で脱線しています。

 

そのため、工藤さんが予想もしなかったことに多くの時間を費やしてしまい、アプトプットが異なる、ポイントがずれるといった結果になるのです。しかしながら、朴さん本人は、重要だと思った部分をより深めたことでよりよいアウトプットを返すことができていると思っています。

 

ここで、もし工藤さんが「余計なことしなくていいから!」と一方的に否定してしまうと、せっかく期待に応えようと思って頑張っていた朴さんのモチベーションは、一気にフラストレーションに変わってしまうでしょう。

 

 

「できます」は、どうなったら、「できている」かの認識が違う

今回のケースでもう一つある認識の違いは、何を持って「できる」状態なのかということです。

 

よくある例ですが、日本人に「あなたは英語ができますか?」と聞くと、学校教育で少なくとも何年間か習っているにもかかわらず、大抵の人は「できません」と答えます。

 

一方で、「こんにちは」と「ありがとう」しか知らない外国人に、「あなたは、日本語ができますか(話せますか)?」と尋ねると「できます」と答えてきます。

 

このように、どこまで習得していれば、できるといえるか?の尺度が違うのです。

 

したがって、「できる」と言うのであればこれぐらいまでできるよねという、世界共通の尺度はない、ということを認識しておく必要があります。

 

これが、お願いした仕事の仕上がりを左右するため注意が必要です。

  

 

 

 

  

外国人採用サポネット

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