2022.07.13
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【外国人材相談事例#1】「伝えたことと全く違うことをしている」問題の処方箋

【外国人材相談事例#1】「伝えたことと全く違うことをしている」問題の処方箋

 

執筆者:山下弘喜

 

「伝えたことと全く違うことをしているんです。日本語は通じていると思っているんですが。もう、仕事が全然進まなくて。自分は現地のベトナム語がわからないから、自分で代わりにすることもできず、完全に仕事が止まってしまいます。どうしたらいいでしょう?」

 

筆者は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っています。その繋がりから様々な相談を受けるのですが、その中でもよくある相談内容から具体的な事例を元に紹介します。

 

相談内容の背景

某製造メーカーの岡田さん(仮名)は、ベトナムの工場の管理を日本の本社で行っています。岡田さん自体はベトナム語はできないため、日本語がN2で入社2年目のベトナム人ホンさん(仮名)を通訳を兼ねた業務アシスタントとして採用し現地とのブリッジ役として業務を行ってもらっています。

 

例えば、現地の工場の1年間分の固定費を現地の人に聞いて調べてもらって?とお願いしたら、何を勘違いしたのか、現地のスタッフ30人に1年間使ったお金を洗い出してもらおうとする指示を出してしまってました。現地の工場長から「なんでそんなことしなければならないのか?」とクレームが入り発覚したのですが、常識的に考えて、なんでそんなことするの?と呆れてしまった次第です。こういうことが頻繁に起こるので、ぜんぜん仕事が進まないんです。

 

と岡田さんは、まさにいま匙を投げようかと振りかぶっているところでした。

ホンさんの主張
現地の人に聞いてと言われたので、全員に聞かないといけないのかと思ってびっくりしていました。これは、私の勘違いと言われたのですが、ベトナムではこのように言われると、みんな同じように考えると思います。経理に話を聞けばよかったなんてどうやってわかるんですかね?クイズですか? と、こちらも正論です。

 

【今回の問題】会話の際に「想像していることが違う」ことによるすれ違いが起きている

コンテクストの違い

ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化というコミュニケーションをとるときに取る文化的なスタイルの違いが生じています。

 

話した言葉の背景、前後関係を共通した認識を持っていることを前提に話す文化(ハイコンテクスト文化)と話した言葉そのものを文字どおりにとらえる文化(ローコンテクスト文化)があります。

 

例えば「時間のあるときにやっといて」と言われたときに、言われた側はその時の相手のことを考えた上で、いつまでに出来上がっていれば良いかを推測し行動をとります。行間を読むとも言った行動パターンです。これがハイコンテクスト文化での会話になります。一方、ローコンテクスト文化だと文字通り「時間があるときにしかしない」ということになり、相手がどうあろうと、自分の時間が空かない限りその仕事がすむことはありません。なにしろ、そう指示されているからです。

 

 

「そこは察してよー」と言いたくなるのはハイコンテクスト側、ローコンテクスト側は、「それならいつまでにやってくれって言ってよ。なんでわざわざそんな回りくどい言い方するんだ?」と不思議で仕方ありません。

通常は、よくこのハイコンテクスト(日本語)とローコンテクスト(英語)の文化圏と比較され、日本語のハイコンテクストで会話をしても英語圏の人たちにはうまく伝わらないという事例が紹介されます。

 

Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋

※参照 Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋

アジア諸国は、ハイコンテクストの文化の国家が多く、日本はその中でも一番ハイコンテクスな文化です。

上記のアジアのコンテクストMAPを参照いただくと、アジア圏の国はハイコンテクスト文化が多くなっています。その中で今回は、ハイコンテクスト同士の日本語とベトナム語の文化の間で起こっていることなので、ちゃんとお互い行間読めてるんじゃないの?と思ってしまうところです。しかし、この状態が一番すれ違いが起きやすいケースなのです。

なぜなら、言葉の背景や前後関係の認識が、日本とベトナムで違うので、伝えた側と伝えられた側がイメージしている行間が全然違ってしまっている可能性があるということです。

 

日本語の通じてない部分を想像で補おうとするので余計にすれ違う

さらに、日本語が第二言語のホンさんは、無意識に日本語がわからないことがあったらなんとか想像して、相手の言ってることを汲み取ろうと全力で自分の常識の範囲内で想像力を飛躍させます。

 

すると、岡田さんが伝えようとしたことと、大きく違った行間を読んでしまい、違ったイメージのものをアウトプットしてしまうという結果になってしまうのです。

 

今回の場合、「現地の工場の1年間分の固定費を現地の人に聞いて調べてもらって?」は、岡田さんとしては現地の経理担当者に「固定費を洗い出してもらってデータをもらうこと」を期待していたが、ホンさんは「固定費」がどういうものかわからなかったが「多分使ったお金のことだろうと想像して」、「現地の人に聞いて」を「全員に聞いてほしいと思っているのだろう」と、行間を読んでしまったのでしょう。

  

 

 

 

  

外国人採用サポネット

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