2018.05.07
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全国訪問看護事業協会/上野桂子さん、髙砂裕子さん

INTERVIEWS

▼目次

 

1.インタビュー紹介

プロフィール

一般社団法人 全国訪問看護事業協会 

副会長  (写真右

上野 桂子(うえの けいこ)さん

常務理事(写真左)

髙砂 裕子(たかすな ひろこ)さん


【業態】訪問看護事業協会

【設立】1995年7月7日

【本社所在地】東京都新宿区新宿1-3-12 壱丁目参番館401 

 
訪問看護師が安心して働ける環境を整備し、
柔軟性のある、この職場の魅力を伝えていきたい

2-1.現状

年々増加する訪問看護ステーション。一万ヵ所突破も目前

---訪問看護サービスの現状と課題について教えてください

 

全国訪問看護事業協会が独自に各都道府県に調査したところ、訪問看護ステーション数は、平成24年より増加傾向にあり、平成29年4月時点で9,700ヵ所にのぼります。今後、もっと増えていくでしょう。しかし、ステーション数増加の一方、利用者が集まらない、人材を確保できないなどの理由で休廃止に追い込まれたステーションも少なくありません。ステーション自体に、地域偏在があり、訪問看護師の数も不足しています。また近年は、利用者の増加とともに、重度化・多様化・複雑化が進んでおり、人材確保と同時に看護の質の向上も必要です。

 

ステーション経営のポイントは職員の負担軽減

---訪問看護ステーションが休廃止に至るのは、どのような理由からでしょうか?

 

訪問看護ステーションは保健師・看護師・准看護師を常勤換算した人数が2.5人いなければ開設できません。さらに、ある程度の利用者を確保できるまで赤字になります。そのような訪問看護事業運営のノウハウを知らずに開設し、経営に行き詰まるケースがあります。また、開設基準の2.5人を満たしただけでは、職員の負担が過大となり、離職につながりかねません。対策として先にステーションの人材を増やして大規模化すればよいと考えられるのですが、

小規模なステーションではその先行投資ができない…というジレンマがあります。経営側が現場に無理を強いる施設は、職員が疲弊してしまいがちです。最近では、もともと訪問看護で働いていた看護師が開業するケースが増えています。これも業界の特徴かもしれませんね。

 

誰もが研修に参加しやすい環境づくり

---訪問看護師の質を高めるために取り組まれていることはありますか?

 

訪問看護ステーションが、利用者に問われるのは「看護の質」です。当協会も、さまざまな研修会プログラムを実施しておりますが、訪問看護ステーションによっては、通常業務の利用者訪問をこなすだけで精一杯となり、研修で職員が1日抜けることが人員配置的に困難というところもあります。

そこで当協会では、より負担なく参加できるように、研修プログラムをなるべく第2、第3土曜日に開催するなどの配慮を行なっています。どこでも第1、第4の土曜日はレセプト請求、報告書などの事務作業が山積みですからね。

 

信用は口コミから

---では、利用者に「選ばれるステーション」になるカギはどこにあるのでしょう?

 

訪問看護ステーションの信用は、極論を言ってしまうとクチコミによる部分が一番大きいのです。そのためにも「断らないこと」が大切です。一度断ると「あそこのステーションは、どうも手一杯みたい」という話が、医師やケアマネージャーにすぐ広がってしまいます。その後、手が空いたタイミングで連絡しても、なかなか浸透しません。利用者の確保には、タイミングが大事なのです。

  

2-2.育成

時間をかけた育成で新卒も戦力に

---新卒受け入れに苦戦されていることはありますか?

 

訪問看護師になる方は、看護師として十分なキャリアが必要という見方がありました。今でも「新卒から訪問看護は難しい」といった先入観が根強くあります。学生が、訪問看護を希望しても、先生方が薦めるのは、やはり大病院です。私たちは、新卒で入職しても、一から育成できる教育環境を整備することで「新卒では無理」という先入観を覆したいのです。看護学校の先生方にも、「訪問看護師は、新卒からもできる」ということを理解してほしいですね。決して「無理」と言ってほしくはないのです。

 

2014年、聖路加国際大学の先生方と協力しながら『きらきら訪問ナース研究会』を立ち上げ、新卒育成のためのガイドを作りました。新卒は病院でも独り立ちするのに、1年はかかりますが、訪問看護では、2年くらいの期間をかけ教育する必要があります。今後、複数のステーションで「良い成功事例」を示すことで、新卒から訪問看護師を育成できることを証明したいと思っています。いくつかの都道府県訪問看護連絡協会等でも独自の新卒育成プログラムを開発し、実際に活用している事例もあります。

 

 

外部研修で広い視野をICT化による不安軽減

---入職前後のギャップや、業務へついていけないなど、挫折してしまうスタッフへはどのような対策をされていますか?

  

病院と大きく違うのは、新卒が一人だけというケースが多く、孤独に陥りやすいことです。そのため、職場全体でのフォロー体制や、しっかりとした指導者を置くことも大切です。訪問看護ステーション内での研修はもちろん、定期的に病院と合同の研修を行なったり、協会運営の研修に参加したりするなど、外部のプログラムを有効に活用してほしいですね。

 

不安軽減という点では、近年、訪問看護もiPadなどの導入により、ICT化が進んでいます。訪問時に不安なことがあったら、訪問先から写真を撮り、すぐに先輩看護師に送ってチェックしてもらうなどの仕組みが導入され、一人で訪問することの不安の軽減につながっています。ICT化によって得られる情報の量も質も段違いに多く、高くなりました。このような仕組みを導入することも、職員の定着率を高める上で効果的かもしれません。

 

 

『訪問看護アクションプラン2025』=より多くの方に訪問看護を知ってもらうためのガイドブック

---『訪問看護アクションプラン2025』とは、どのようなものなのでしょうか?

 

2009年3月に訪問看護推進連携会議が中心となって『訪問看護10ヵ年戦略』を作成しましたが、それから5年が経過し、訪問看護をめぐる状況が大きく変化したため、見直し・再編したのが『訪問看護アクションプラン2025』です。2025年に向けて、訪問看護を担当する事業者・事務所・職員が取り組むべきアクションプランとしてまとめています。

 

制作の過程で、あまりに訪問看護というものが認知されていないことに驚き、訪問看護を知らない方が見てもわかるように基本的な内容から作ったところ、ご高評をいただきました。訪問看護が、もっと一般的に知られるきっかけになればという願いが込められております。

 

 

2-3.定着

新卒でも育休後でもさまざまな働き方ができます

訪問看護の限りない可能性を広げ、伝える仕組みづくりを

長期的な就業に向け、職場全体でフォローできる環境を

---子育て中の看護師が活躍するために、何が必要でしょうか?

 

産休や育休を経て、現場復帰された看護師は、どうしても無理をして頑張ってしまう傾向があります。

 

勤務時間や休みの調整など、柔軟な働き方ができる職場づくりが重要です。最初の面接では送り迎えしている保育園や、子育ての時間など、現状について十分話し合う機会を設けます。子育ての期間は永遠に続くわけではありません。職場全体で、ゆとりをもって働いていただけるようフォローすることが大切です。

 

訪問看護はさまざまな働き方ができる職場です。それもこの仕事の魅力の一つだと広く発信していきたいですね。

 

 

現状・育成・定着 のポイント

Point.01 「現状」
経営者の人材マネジメントが
ステーション経営の鍵である

Point.02 「育成」
社内研修と合わせて、外部研修を有効活用する

Point.03 「定着」
職場全体でフォローし、ゆとりのある働き方を提案する

 

取材日:2017年10月10日

 メディカルサポネット編集部

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