2021.02.01
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【識者の眼】「新型コロナはどこで治療するべきか」武久洋三

メディカルサポネット 編集部からのコメント

新型コロナウイルス感染者は2021年に入ってからも増加しています。医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長の武久洋三氏は新型コロナウイルス患者の受け入れ病院は多くないとし、一般病棟、療養病床に関わらず受け入れるべきであると述べています。そして重症者は公立病院が引き受け、軽中等度者やポストコロナ患者は民間病院が受け入れ日本全体でコロナを征服しなければならないとしています。 

 

 

新型コロナウイルス感染者が2021年新年からも爆増している。政府がGo Toトラベルに固執し、12月まで引きずったことも原因であろう。ウイルスなので当然冬に大流行することくらいわかっていたにもかかわらずである。

 

赤字が出ても必ず税金で補塡してくれる公立病院の過半数が対応してくれているようだが、500床の病院でも対応しているのは、わずか10床程度のところもある。特に東京では病院に入れない患者の重症化や死亡が報道されている。まだ公立病院が十分にその役を果たしていないにもかかわらず、民間病院が25%程度しかコロナ患者を受け入れていないのはけしからんとの言動まで出始めている。しかしこのコロナ対応は都道府県庁から各病院に依頼されるものであり、まだ民間病院にまで依頼が来ていない状況である。民間病院であろうとも周辺地域の住民を守る気概は十分に持っている。要請があればできる限り受け入れる病院は数多くあるだろう。しかし厚労省はコロナ患者の治療は一般病床でないと認められないと強調してきた。つまり療養病床はお呼びでないし、別に助けてくれなくてもよいという姿勢だ。しかし20対1の療養病床は昨今の改定で医療区分2・3患者が80%以上を占めており、重症高齢者の治療をたくさん受け持っているのだ。この新型コロナは、高齢患者の予後が悪い。そこで、むしろ重症高齢者の治療に慣れている療養病床にお願いしてはどうか。何といってもこの新型コロナに対する特効薬はないのである。思考錯誤しながらの治療が続いているが、栄養と水分の投与が二の次となって重症化している症例も散見される。

 

病院病床が一般病床と療養病床に分かれたのは、まだほんの少し前の2003年である。それまでは病床の区別はなかったのだ。ほんの18年の間に療養病床は治療を託せない病床になってしまったのか。とんでもない。厚労省も病床のひっ迫に慌てて、1月13日から療養病床も一般病床と同様に対応してくれないかとエールを送ってきた。現在は療養病床だけの病院は少なく、多機能な病床を持つ病院が多い。新型コロナ患者は、もう既に療養病床を有する病院にも入院してきている状況である。

 

重症者はECMOのある公立病院が引き受け、軽中等度者やポストコロナ患者は多機能な民間病院が受け入れ、何とか日本全土を挙げてこのコロナを征服しなければならない。 

 

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[民間病院] 

 

 

出典:Web医事新報

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