2019.01.08
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「オンライン診療料」の新設について思うこと[炉辺閑話]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2018年度診療報酬改定で初めて算定されたオンライン診療。多方面からの運用が期待されていますが、患者にとっても、医師にとってもメリット・デメリットがあります。このたび、医師の立場からのエッセイを、日本医師会常任理事の松本吉郎先生が寄稿されてました。医療関係者の方々はそれぞれどのような思いを抱いていらっしゃいますか? 一人ひとりが思いを整理しておくことは、より良い制度へのブラッシュアップへの第一歩になります。

 

オンライン診療はあくまでも対面診療の補完である。最終的に、医療の責任をとるのは医師であり、オンライン診療は医師の対面診療に取って代わるものではない。

私も委員を務めている中医協で審議した結果、①情報通信機器の条件、対象疾病、どのような状況に使用しうるか等のガイドラインを設けた上で、②7項目におよぶ基本的な考え方をまとめ、③不適切な受診防止のための算定回数制限などを設け、④対面診療との報酬上の差をつけた上で、 限定的に保険適用することとなった。このため、算定要件や施設基準は厳しいものにした。

私は皮膚科専門医であるが、たとえばアトピー性皮膚炎の患者さんをオンライン診療で診ていくのは不安であり、リスクを伴う。症状が安定していると判断するのはあくまで診療の結果であり、ステロイド外用による副作用や、ヘルペスウイルス、黄色ブドウ球菌、真菌等に感染しやすいことを考えると、対面診療で診ていくべき、との今回の判断は正しいと思う。また、遠方の患者さんの症状が安定したのならば、できる限り近医に紹介、逆紹介するべきと考える。

オンライン診療については以下のことが大切と考えている。

①あくまで「かかりつけ医」が対面診療の補完に用いる一手段であり、一部の患者に用いるべきであること。
②利便性のみを追求するものであってはならないこと。
③離島・へき地での適切な利用を妨げるものではないが、へき地の拡大解釈にならないように注意が必要。
④訪問診療における適切な活用については妨げるものではない。
⑤ビジネスを追求したものであってはならないこと。
⑥オンライン診療によって新たなリスクが生じることもありうること。
⑦電話等再診の不適切な利用の二の舞になる恐れもあること。
⑧職場や学校においては、病気の治療のために医療機関を気兼ねなく受診できる社会環境を整えるべきであること。

したがって、オンライン診療は今後も慎重に進めるべきで、今回の診療報酬改定の検証には時間をかける必要があると考えている。

 

執筆:松本吉郎 (日本医師会常任理事

 出典:Web医事新報

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