2018.10.13
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世界の認知症施策の動きとわが国の施策の良い点や改善点は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

新オレンジプランは、認知症高齢者等にやさしい地域づくりを目指しています。柱となるのは(1)普及・啓発の推進、(2)適時・適切な医療・介護等の提供、(3)若年性認知症施策の強化、(4)介護者への支援、(5)高齢者にやさしい地域づくりの推進、(6)研究開発及びその成果の普及の推進、(7)認知症の人やその家族の視点の重視、です。これらは、認知症の公衆衛生対応についての世界行動計画(Global action plan on the public health response to dementia 2017 - 2025)でも参考にされるなど高く評価されています。海外での認知症施設の成功例として、オランダの「認知症村ホフヴェイ」が有名です。今まで通りの『普通の暮らし』がコンセプトで、入居者はライフスタイルごとに分かれたゾーンで生活できる画期的な作りですが、その運営は「高い保険給付」や「ボランティア」によって支えられているなど、日本もまだまだ学ぶことがありそうです。

 

世界(先進国,発展途上国)での認知症施策の動きとそこから見たわが国の施策の良い点や改善点について,厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室専門官であったご経験から,秋田大学高齢者医療先端研究センター・大田秀隆先生にお聞きしたいと思います。

【質問者】

武地 一 藤田医科大学認知症・高齢診療科教授

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【回答】

【2017~25年度の世界行動計画が,わが国の「新オレンジプラン」を参考に策定された】

大きなインパクトがあったものは,2017年5月に開催された第70回世界保健機関(World Health Organization:WHO)年次総会での「認知症の公衆衛生対応についての世界行動計画(Global action plan on the public health response to dementia 2017-2025)」1)の承認です。

本行動計画は,WHOの関連する諸行動計画,WHOとAlzheimer’s Disease International(ADI)が2012年に発表した報告書,Global Dementia Observatory(GDO)の目的,2015年3月の第1回WHO認知症閣僚級会合の成果文書,持続可能な開発目標(sustainable development goals:SDGs),国連の障害者権利条約等をふまえたものとなっています。①認知症の人の人権,②認知症の人と介護者のエンパワメントと関与,③認知症のリスク軽減とケアのための根拠に基づいた実践,④認知症に対する公衆衛生対応における多セクター協力,⑤認知症のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ,⑥公平性,⑦認知症の予防,治療,ケアに関する適切な配慮,の7つの分野横断的な原則が定められ,その中で行動分野(action area)と世界的な目標(global target)が具体的,明確に定められています。

既にWHO西太平洋事務局(Western Pacific Regional Office:WPRO)による啓発活動,認知症予防に関するガイドラインやMental Health Gap Action Programme(mhGAP)やiSupportといったツール等,様々な対応がなされています。また,この認知症行動計画の全面実施に向け,可及的速やかに野心的な国内対策を行うよう加盟国(および該当する場合は地域経済共同体)に要請,本決定の実施状況に関する報告書を2020,23,26年の総会に提出することになっています。

今回の策定が「新オレンジプラン」を参考にしていることは特記すべきことです。各国の認知症施策は「National Dementia Action Plans(2017)」2)や「Towards a dementia plan:a WHO guide(2018)」3)に詳しいですが,各国様々な違いや特徴があるものの,認知症の人の思いを尊重し,住み慣れた地域での生活の継続をめざすという基本理念のもと,首相・大統領レベルのリーダーシップや,当事者・市民の積極的関与が求められます。その中でもわが国の認知症施策は,世界的にもよく評価,注目されています。

今後の改善点として,各施策における地域の特性を加味した質の向上や,客観的なアウトカム評価指標が挙げられます。

【文献】

1) World Health Organization:Global action plan on the public health response to dementia 2017–2025.
[http://www.who.int/mental_health/neurology/dementia/action_plan_2017_2025/en/]

2) Alzheimer's Disease International:National Dementia Action Plans. 
[https://www.alz.co.uk/sites/default/files/pdfs/national-plans-examples-2017.pdf]

3) World Health Organization:Towards a dementia plan:a WHO guide.
[http://www.who.int/mental_health/neurology/dementia/policy_guidance/en/]

 

【回答者】

大田秀隆 秋田大学高齢者医療先端研究センター センター長/教授

 

執筆:

武地 一 (藤田医科大学認知症・高齢診療科教授)

大田秀隆 (秋田大学高齢者医療先端研究センター センター長/教授)

 

 出典:Web医事新報

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