2018.12.20
3

急増する梅毒

メディカルサポネット 編集部からのコメント

1940年ペニシリンが開発されて以降、急激に減少していた梅毒ですが、近年、「梅毒に対する警戒心が国民も医療従事側も薄れていた」こともあり、感染の報告が増えています。梅毒診療に不慣れな臨床医のもとにも患者が現れる可能性が高まっていることを踏まえ、日本性感染症学会は梅毒診療ガイドを学会WEBサイトで公開しています。梅毒患者のパートナーも感染している可能性があります。必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要です。妊娠中に感染した場合、早産・流産の可能性があります。

 

【パートナーにも検査を受けることを勧めるように指導することが必要】

梅毒の歴史は,古くは15世紀末にさかのぼる。当時,梅毒は西インド諸島の風土病だったが,コロンブスが新大陸発見の帰りに欧州に持ち帰って以降,世界的な広がりを見せ,現代に続いている。ここ数年に至っては急激な増加を示し,国立感染症研究所感染症情報センターの統計では,わが国における2017年の感染者は5700人を超え,先天梅毒も増加傾向にあり,関連学会より警鐘が鳴らされている。

特に異性間で感染が広がっており,男性は中年層まで,女性は若年層が中心である。マクロライド系薬の多汎用により,現在の流行株のSS14系統はマクロライド系薬に耐性を示している。

梅毒を症状から疑うのは困難なこともある。たとえば,第1期と第2期の症状が混在したり,飛蚊症,扁桃炎,急性肝炎,子宮頸癌などと類似する症状も多い。梅毒が疑われた場合には血清学的検査が有用であるが,RPRは必ずしも16倍を満たさない場合があることに注意が必要である。

また,近年普及してきたラテックス法は,急性期にはTP抗体がRPRより先に陽性になることにも留意する必要がある。血清学的検査を積極的に行い,梅毒の早期診断および治療のみならず,パートナーにも検査を受けることを勧めるように指導することが重要である。

特に,再発を診断する際には,イムノクロマト法によるキットにおいて「トキシン陽性」となりやすいため,診断の根拠としないよう注意する。

【参考】

▶ Stamm LV:Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(2):583-9.

【解説】

樽本憲人*1,前﨑繁文*2  埼玉医科大学感染症科・感染制御科 *1講師 *2教授

 

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP