2018.12.04
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喘息治療における生物学的製剤の使い方は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

季節の変わり目や風邪をひきやすい時期になると、喘息コントロールができなくなる患者が増加します。経口ステロイドを持続して使用しないとコントロールが不良になるTh2優位型のケースは生物学的製剤を導入し、それで効果が乏しい場合には気管支サーモプラスティを考慮してください。

 

吸入ステロイドだけではコントロールできない喘息患者の治療に用いられる生物学的製剤は,従来より使用されていた抗IgE抗体に加え,抗IL-5抗体,抗IL-5Rα抗体が新たに臨床に登場しました。それに伴い,実臨床においてこれら製剤をどのように使い分けていくべきかという問題も生じていますが,その使い分けのポイントについてご解説下さい。また,重症喘息治療において,経口ステロイドやサーモプラスティなどの治療法に対して,生物学的製剤をどのようなタイミングで用いるべきかご教示下さい。
東京女子医科大学・多賀谷悦子先生にご回答をお願い致します。

【質問者】

權 寧博 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野教授

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【回答】

【高用量吸入ステロイドを用いた従来の治療でもコントロール不良なTh2優位型では生物学的製剤を導入】

 

高用量吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)に長時間作用性β2刺激薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,長時間作用性抗コリン薬のチオトロピウムやテオフィリン製剤など複数の抗喘息薬を継続しても,喘息コントロール不良でしばしば全身性ステロイドの投薬が必要となる重症喘息において,生物学的製剤およびサーモプラスティによる治療が適応となります。その前に,吸入アドヒアランスや好酸球性副鼻腔炎など合併症の治療が適切に行われているかを確認し,ホコリ,ダニや職業性の抗原など感作アレルゲンや喫煙などの増悪因子の回避の指導を行うことが大切です。

 

重症喘息の病型分類の中でもTh2が優位な病態である,小児発症のアトピー型喘息や成人発症の好酸球優位型喘息において,生物学的製剤の効果がみられます。

 

抗IgE抗体は,通年性吸入抗原に対して陽性を示すアトピー型喘息で,総IgE値が30〜1500IU/mLで適応となります。抗IgE抗体による増悪抑制効果のバイオマーカーとして,血中好酸球数>260/μL,FeNO>19.5ppbや血清ペリオスチン濃度>50ng/mL(保険収載なし)が報告されています。慢性蕁麻疹にも適応があります。

 

一方,抗IL-5抗体や抗IL-5α受容体抗体は,アトピー型喘息の有無にかかわらず,血中好酸球数>150/μLで,特に300/μL以上の患者で有用です。最近では血中好酸球数>150/μLで,年間の増悪回数が2回以上の患者に推奨されており,特に,好酸球性副鼻腔炎・中耳炎合併例では,耳鼻科的所見も軽快することが報告されています。また,抗IL-5抗体は好酸球性多発性血管炎性肉芽腫症にも適応が通り,喘息に使用する3倍の投与量を必要とします。

 

以上の生物学的製剤を使用しても症状が残存する患者や好酸球炎症の関与が乏しいものには,気管支鏡を用いて65℃の通電温熱刺激を行う気管支サーモプラスティを考慮します。この治療では,肥厚した気道平滑筋を減少させ,気道の迷走神経が切断されることによりアセチルコリンの作用を減少させることが期待されています。適応は18歳以上の重症喘息で,ペースメーカーやICD埋め込み患者では禁忌です。

 

重症喘息に関する国際ガイドラインでは,重症喘息の定義に経口ステロイドを1年の50%使用していることが記載されています。実臨床の場において,経口ステロイドを持続して使用しないとコントロールが不良になるTh2優位型では生物学的製剤を導入し,それで効果が乏しい場合には気管支サーモプラスティを考慮します。今後は,併用治療なども検討されていくと考えます。 

【回答者】

多賀谷悦子 東京女子医科大学呼吸器内科学教授・ 講座主任

 

執筆

權 寧博 (日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野教授)

多賀谷悦子 (東京女子医科大学呼吸器内科学教授・講座主任)

 

 

 出典:Web医事新報

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