2018.10.10
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【他科への手紙】呼吸器内科→一般内科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

結核症の検査としてIGRA(Interferon-Gamma Release Assays)という血液検査が普及しましたが、IGRA検査だけで「活動性結核症」の診断も除外もできません。IGRA法はどのような場面で用いるのか、陽性だった場合の判断はどうするかを踏まえたうえでその他の臨床所見をあわせての総合判断を行ってくださいIGRAの陽性や陰性は重要ですが、それだけに判断を引っ張られ過ぎないように注意が必要です。

 

結核症の検査として、クォンティフェロン®や、T-SPOT®.TBといった血液検査が普及しました。総称してIGRA(Interferon-Gamma Release Assays)と呼びます。簡単に言えば、血液検査から「ヒトが結核菌に対する免疫反応をしているか」を判別する検査です。結核菌に感染したことがなければ、免疫反応はありません。つまり、免疫反応があれば、結核菌感染が存在することになります。

ヒトが結核菌に感染した場合、マクロファージは結核菌を貪食し、抗原情報をTリンパ球に提示します。その結果、Tリンパ球は結核菌の抗原で感作されます。結核感染者の血液をESAT6やCFP-10といった結核菌に特異的な抗原と培養すると、結核感染者の血液の感作されたTリンパ球からIFN-γが分泌されます。結核菌に感染しているかは、この分泌されたIFN-γ(つまりは、結核菌に対する免疫反応)がどのくらいあるかで、ある程度推測できます。これがIGRA法の原理です。

クォンティフェロン®は、この結核特異的な抗原によって分泌されたIFN-γを、ELISA法で定量的に測定することで、結核菌の感染の有無を診断します。T-SPOT®.TB検査は、結核特異的抗原の刺激によってIFN-γを産生するT細胞の数をEnzyme-Linked ImmunoSpot(ELISpot)法で測定することで、結核感染の有無を判断します。

原理を聞くだけで、採血だけで結核の診断ができる素晴らしいツールのように思えます。しかし、IGRA法は、結核菌に触れて感染したまま発病していない、もしくは治療後の「潜在性結核感染」の有無の判断に優れたツールですが、検査した時点で体の中で結核菌が増え続けて発病している「活動性結核」と区別することはできません。現時点では陽性であれば「少なくとも、潜在性結核症はありそうだけど、活動性結核かはその他の臨床所見をあわせての総合判断」となります。IGRA検査だけで「活動性結核症」の診断も除外もできません。

日本は第2次世界大戦前後(1940年代)、結核が死因の第1位となるほど蔓延し、「亡国病」と言われました。そのため、高齢になればなるほど、結核に感染し「潜在性結核」のままであるIGRAの陽性者が多くなり、判断が複雑になります。

IGRA法を主に用いる場面は、基本的には2つです。結核の接触者検診と、リウマチなどで生物学的製剤を投与する前の潜在性結核症の検索です。どちらも、「潜在性結核症」のうちに見つけることで、「活動性結核」に発展させないために用います。

「活動性結核」かどうかは、病歴、画像所見、細菌学的検査で総合的に判断することが重要です。IGRAの陽性や陰性は重要ですが、それだけに判断を引っ張られ過ぎないようにお気をつけ下さい。

結び

IGRAのみでは活動性結核の診断も除外もできません。IGRAは、基本的に潜在性結核症の診断に用いて下さい。

 

執筆:大藤 貴 (国立国際医療研究センター国府台病院呼吸器内科)

 出典:Web医事新報

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