2024.03.05
3

国がんが日本人のがんゲノム異常の全体像を解明
約5万例のがん遺伝子パネル検査

メディカルサポネット 編集部からのコメント

国立がん研究センター(国がん)は、C-CATに登録された5万例のがん遺伝子パネル検査データを解析し、日本人のがんゲノム異常の特徴を明らかにしました。TP53遺伝子変異の頻度が高いなど、日本人のがんゲノム異常に関する新たな知見が得られました。また、日本人に多い胆道がんなどでは治療薬の開発が不十分であることも明らかになりました。

   

 国立がん研究センター(国がん)は、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録された約5万例のがん遺伝子パネル検査データを解析し、日本人のがんゲノム異常の全体像を解明したと発表した。多数のがん種でTP53遺伝子変異の頻度が高いなど日本人のがんゲノム異常の特徴を明らかにした。【渕本稔】

 

 これまでのがんゲノム解析研究の対象は、欧米人が中心であり、欧米の知見をどの程度日本のがん患者に適応できるかが明らかではなかった。研究グループは、日本人のがんゲノム異常の全体像や特徴を明らかにするため、C-CATに登録された4万8,627例のがん遺伝子パネル検査データを活用し、がん種横断的ゲノム解析を実施した。

 

 その結果、治療薬の標的となる、または治療薬の効果予測可能なゲノム異常がある症例は全体の15.3%だった。26種類のがん種を比較したところ、甲状腺がんの割合が最も高く、292人中249人(85.3%)で治療薬の標的となるゲノム異常が見つかり、次いで浸潤性乳がん、肺腺がんの順で治療薬の標的となるゲノム異常が見つかりやすいことが明らかになった。

 

■日本人に多い胆道がんなどで治療薬の開発が不十分

 米国癌学会シーケンスプロジェクト(GENIE)の米国白人データとの比較では、大腸がん、胆管がん、頭頸部がんなど10のがん種で、日本人のほうがTP53遺伝子変異頻度は高かった。また、両データで比較可能なゲノム異常に限定し、がん種別の治療標的となるゲノム異常がある症例数の割合はほぼ同程度だったものの、全体では日本人よりも白人で割合が高いことが分かった。これは、C-CATにおいて治療標的となるゲノム異常が少ない膵臓・胆道がんなどの症例が多いためとみられ、欧米人に比べ、日本人に多い胆道がんなどではゲノム異常を標的とした治療薬の開発が不十分である現状も明らかとなった。

 

 この研究結果は、1月26日に米科学誌「Cancer Discovery」に掲載された。

 

  

 

  出典医療介護CBニュース

 

   


採用のご相談や各種お問合せ・資料請求はこちら【無料】

 

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP