2022.02.18
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調剤料また抜本見直し、対物業務切り分けへ
リフィル処方箋、薬剤師が服薬状況を確認

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2022年度の診療報酬改定答申では、調剤料の枠組みを2年前に続き大幅に変更し、対物業務と対人業務への評価を切り分けられることが決まりました。一方、新たに導入する「リフィル処方箋」の使用は3回までとし、薬局の薬剤師は、リフィル処方箋に基づき調剤した患者さんの服薬状況などを確認した上で、必要に応じて処方医に情報提供することが求められます。他にも後発医薬品調剤体制加算のペナルティーが強化されるなど、対応すべきことをまとめています。

  

 

 中央社会保険医療協議会は2月9日、2022年度の診療報酬改定案を答申し、点数配分を巡る議論が決着しました。調剤関連では、調剤料の枠組みを2年前に続き大幅に変更し、対物業務と対人業務への評価を切り分けます。一方、新たに導入する「リフィル処方箋」の使用は3回までとされました。薬局の薬剤師は、リフィル処方箋に基づき調剤した患者さんの服薬状況などを確認し、必要に応じて処方医に情報提供します。

 

※この記事は「薬局経営NAVI」とのタイアップ企画です。

 

1.対人業務の要素を「調剤管理料」で評価

 

 中医協は、22年度診療報酬改定の点数配分を巡る本格的な議論を21年7月に始め、半年余り続けました。22年度診療報酬改定は3月上旬に官報告示される見通しで、厚生労働省はそれに向けて準備を急ぎます。

 

 調剤関連では、薬局・薬剤師による対人業務の促進策の一環で調剤料を抜本的に見直すことになりました。中医協がまとめた個別改定項目によると、これまで調剤料でカバーしてきた業務への評価を「薬剤調製料」と「調剤管理料」に再編。薬剤の「調製」や「取りそろえ監査」などは、対物業務として新設の「薬剤調製料」で評価されます。内服薬の場合、調剤料は薬剤の投与日数に応じて5段階に設定されていますが、薬剤調製料は一律24点です。

 

 これに対し、調剤料の評価対象に含まれる「処方内容の薬学的分析」や「調剤設計」のほか、薬剤服用歴管理指導料でカバーしてきた「薬歴の管理」など対人的な要素を含む業務は「調剤管理料」で評価します。内服薬の投与日数によって点数を設定する調剤料の枠組みはこちらが引き継ぎ、4段階とされました(表1)。

 

 調剤管理料に上乗せする「調剤管理加算」も新設されます。この加算は、複数の医療機関から内服薬を計6種類以上処方された患者さんが対象で、▽処方箋を初めて持参した場合▽処方箋を2回目以降に持参し、処方内容の変更に伴う薬剤の変更・追加があった場合-に3点ずつ算定します。

 

 この加算の新設は多剤服用の解消を促す狙いですが、中医協では支払側の委員が難色を示しました。6種類以上を処方された患者さんを対象にする枠組みが「ポリファーマシー是正」の方向性に逆行しかねないという主張で、次回以降の改定に向けて加算の効果を検証し、結果次第で廃止を検討すべきだとしています。

 

 また、薬歴管理への評価を調剤管理料が引き継ぐのに合わせ、薬剤服用歴管理指導料は「服薬管理指導料」として再編されることになりました。医療的ケア児に薬学的管理を行った場合、服薬管理指導料やかかりつけ薬剤師指導料に上乗せできる「小児特定加算」(350点)なども新設します。

 

 

表1 薬剤調製料と調剤管理料の点数設定

 

 

 

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2022年2月9日)の資料を基に作成

 

 

2.リフィル処方の活用促進策を検討へ

 

 一方、リフィル処方箋の導入は22年度政府予算案の編成を巡り政治決着で決まりました。

 

 個別改定項目によると、リフィル処方箋の対象には症状が安定している患者さんを想定していて、使用は3回までとされました。「リフィルによる処方が可能」と判断した医師が、処方箋に新しく作る「リフィル可」の欄に「レ点」を記入して発行する仕組みです。

 

 薬局の薬剤師は、リフィル処方箋により調剤する際、患者さんの服薬状況を確認しなくてはなりません。リフィル処方箋で調剤するのが「不適切」だと判断したら調剤は行わずに医療機関への受診を勧奨し、処方医へ速やかに情報提供します。

 

 リフィル処方箋を交付された患者さんを継続して指導できるように、薬剤師は同じ薬局で調剤を受けるよう患者さんに呼び掛けます。また、調剤する際、患者さんに次の予定を聞き、予定の時期になっても薬局に来なければ電話などで状況を確認します。患者さんが別の薬局で調剤を受ける意向なら、調剤の状況や「必要な情報」をその薬局にあらかじめ伝えなくてはなりません。

 

 政府は、リフィル処方箋による「再診の効率化」を見込んでいますが、どれだけ普及するかは不透明です。医療機関へのインセンティブもないのに、「再診の効率化」を狙う処方箋を医師がわざわざ発行するでしょうか。

 

 日本医師会の中川俊男会長は、改定案が決まった日の定例記者会見で、長期処方には患者さんのリスクが伴うことを指摘し、「リフィル処方箋を出すかどうかは医師、『かかりつけ医』が決める」と話しました。

 

 中医協が答申書と共にまとめた22年度改定の附帯意見では、リフィル処方箋の導入の影響を検証し、活用促進策を引き続き検討するとしています。新たな仕組みが適切に運営されて真価を発揮するのは先のことかもしません。

 

3.チェーン薬局向けに「基本料3ハ」新設

 

 調剤基本料の見直しでは、薬局のかかりつけ機能を引き続き評価する一方、チェーン薬局やいわゆる「同一敷地内薬局」への引き締めは強め、めりはりを利かせます。

 

 チェーン薬局への引き締め強化は調剤基本料3の見直しが柱です。その一環で、処方箋の受付が月40万回を超えるチェーンに所属する薬局が対象の調剤基本料3ロ(16点)を「薬局数300カ所以上」のチェーンの薬局にも広げることになりました。

 

 また、▽処方箋の受付が月40万回超▽薬局数300カ所以上-のいずれかのチェーンに所属し、特定の医療機関からの処方箋の受付割合(処方箋の集中率)が「85%以下」の薬局向けに「調剤基本料3ハ」(32点)を新設します。

 

 調剤基本料3にチェーンの薬局数の基準を設定するのは「損益率の状況等」を踏まえた対応です。22年度改定の基礎資料にするため中医協が行った医療経済実態調査では、薬局数が多いチェーンほど薬局の経営が順調な傾向にあることが明らかになりました。

 

 一方、同一敷地内薬局が算定する特別調剤基本料は9点から7点に引き下げ、地域支援体制加算や後発医薬品調剤体制加算の算定を本来の80%に制限します。

 

 同一敷地内薬局は、特定の医療機関と不動産の賃貸借や譲渡契約を交わした薬局などで、その医療機関からの処方箋を集中して受け付けます。厚生労働省は、そうした薬局では備蓄する医薬品の種類が少なくて済むとみていて、医療経済実態調査では「診療所敷地内薬局」の経営が順調な傾向にあることが分かりました。

 

 同一敷地内薬局を巡っては、医療機関との間に複数の第三者を介在させて不動産契約を交わすなど見極めの難しいケースがあることが分かっています。中医協ではそれへの対応も議論しましたが、具体策はまだ見えません。

 

4.地域支援体制加算2は大幅増の47点に

 

 薬局の地域医療への貢献を評価する地域支援体制加算は、調剤基本料1を算定しているかどうかや貢献の体制・実績によって4区分されることになりました。また、災害や感染症の発生時にも医薬品を供給できるように「薬薬連携」を進めるなど、地域支援体制加算の算定薬局の体制整備を促す「連携強化加算」(2点)も作ります。

 

 再編後の地域支援体制加算は、「加算1」と「加算2」が調剤基本料1の薬局、「加算3」と「加算4」はそれ以外の薬局向けで(表2)、点数の高い加算2と連携強化加算を合わせると現在の38点を大きく上回る49点を算定できます。

 

 

表2 地域支援体制加算の点数設定

 

 

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2022年2月9日)の資料を基に作成

 

 

 4つのうち地域支援体制加算1の実績要件は、調剤基本料1の薬局向けに20年度に設定された5項目がベースで、そのうち「在宅患者薬剤管理の実績」の基準を、21年8月に創設された「地域連携薬局」の要件(月平均2回以上)に合わせ、「年24回以上」(改定前は年12回以上)に倍増させます(表3)。地域支援体制加算1の算定は、表3の1-3を全てと4か5の計4つをクリアするのが条件です。

 

 

表3 地域支援体制加算の実績要件(調剤基本料1の場合)

 

 

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2022年2月9日)の資料を基に作成

 

 

 

 地域支援体制加算2のハードルはさらに高く設定されます。これを算定するには地域支援体制加算1の基準を全てクリアするのが前提です。その上で、これまで調剤基本料1以外の薬局に適用される9項目の実績要件のうち、3つ以上をクリアしなくてはなりません。「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」(改定前は年12回以上)の基準は24回以上に強化されます(表4)。

 

 さらに、「多職種連携会議への参加」を除く8項目では、これまでの常勤薬剤師の人数当たりではなく「1年間の処方箋受付1万回当たり」の実績を求めます。処方箋の受け付けが多いほど基準が高くなるので大病院の門前薬局などには不利かもしれません。

 

 地域支援体制加算3と加算4にもこの9項目が適用され、それぞれ3つ以上、8つ以上を満たさなくてはなりません。地域支援体制加算3では、9項目のうち「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」と「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」クリアが必須とされました。

 

 

表4 地域支援体制加算2の実績要件

 

 

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2022年2月9日)の資料を基に作成

 

 

5. 後発薬促進、減算ペナルティーを強化

 

 後発医薬品の使用促進では、後発薬の調剤割合(数量ベース)が高い薬局向けの後発医薬品調剤体制加算の基準を厳しくして評価を手厚くする一方、調剤割合が低い薬局の調剤基本料を減点するペナルティーは対象を拡大し、強化します。

 

 後発医薬品調剤体制加算は、後発薬の調剤割合(数量ベース)に応じて3段階で評価しています。現在は、最低ラインの75%をクリアすると点数が低い後発医薬品調剤体制加算1を算定できますが、見直し後は加算1の基準を「80%以上」に引き上げ、6点増の21点にします。

 

 これは、後発薬の数量シェアを2023年度末までに全都道府県で80%以上にする政府目標に合わせた対応で、後発医薬品調剤体制加算2と加算3も同じように見直します(表5)。

 

 調剤基本料のペナルティーは現在、後発薬の調剤割合が40%以下の薬局が対象ですが、これを「50%以下」に広げて現在の2点減を「5点減」にします。半年の準備期間を経て10月から適用されることになりました。

 

 

表5 後発医薬品調剤体制加算の見直し

 

 

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2022年2月9日)の資料を基に作成

 

 

 

出典:医療介護CBニュース

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