2020.10.20
3

【識者の眼】「COVID-19薬物療法ガイドラインの特徴」山川一馬

メディカルサポネット 編集部からのコメント

収束の兆しが見られない新型コロナウイルス感染症の薬物療法に関して、日々様々な質の臨床エビデンスが発表され続けているようです。そこで、日本集中治療医学会、日本救急医学会が、臨床医が限られた時間の中で、必要な確実性の高いエビデンスを取捨選択できるよう、COVID-19の薬物療法に特化したガイドラインを作成しました。ここでは、大阪医科大学救急医学教室准教授で日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会COVID-19対策タスクフォースの山川一馬氏がCOVID-19薬物療法ガイドラインの特徴について述べています。

 

2019年末に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)は、2020年初頭より世界中に広がり、今なお収束の兆しが見られない。COVID-19患者の多くは無症状または軽症で経過するが、高齢者や基礎疾患を持つ感染者を中心に一部重症化し、致死的な経過をとる。社会的インパクトの大きさと緊急性を背景に、種々の薬物療法に関しても日々様々な質の臨床エビデンスが発表され続けている。玉石混淆のエビデンスが存在する状況下で、意思決定のために必要な確実性の高いエビデンスを取捨選択するために割くことができる時間は臨床医には限られている。

 

そこで、日本集中治療医学会、日本救急医学会による2学会合同の「日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会」では、COVID-19の薬物療法に特化した特別編『COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations』を作成し、初版を2020年9月9日、第二版を10月14日に公開した。本ガイドラインの特徴は、以下の通りである。

 

①薬物治療に特化したガイドライン

 

薬物療法に限定して推奨を提示している。COVID-19診療においては、薬物療法以外にも、呼吸管理、凝固管理、併存する感染症管理、精神的ケアなど、多くの留意点が存在するが、それらは対象外である。

 

②日本で初めて推奨を提示したガイドライン

 

「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き(厚生労働省)」や「COVID-19に対する薬物治療の考え方(日本感染症学会)」など、わが国には既にCOVID-19に対する診療ガイドラインが存在する。これらはいずれもエビデンスならびに治療選択肢の提示に留まっており、明確な推奨・非推奨は提示されていない。わが国で初めて推奨の提示を行うガイドラインを作成した。

 

③完全GRADE準拠ガイドライン

 

GRADEシステムは、医療におけるエビデンスの確実性と推奨の強さを評価作成する手法の一つであり、Up To Dataや世界保健機関(WHO)ガイドラインにも採用される国際標準手法である。本ガイドラインはわが国ではいまだ数少ない完全GRADE準拠ガイドラインである。

 

④迅速リビングガイドライン

 

COVID-19に関連するエビデンスは時々刻々と変化している。本ガイドラインは、living systematic reviewに基づき、迅速性を重んじたアップデートを随時行っている。最新版である第二版は2020年9月30日時点で得られたエビデンスをもとに作成した。

 

 

以上、本ガイドラインの作成コンセプトを概説した。ガイドラインの原稿は、日本集中治療医学会、日本救急医学会のホームページから無償ダウンロード可能である(https://www.jsicm.org/news/upload/J-SSCG2020_COVID-19_1_ver.2.0.0.pdf)。

 

山川一馬(大阪医科大学救急医学教室准教授、日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会COVID-19対策タスクフォース)[J-SSCG2020特別編]

 

 

出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP