2020.01.17
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よき医師を養成するには?(群星沖縄臨床研修センター長/徳田安春さん)

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2004年、沖縄県内の民間病院が、よき臨床家を育成するため、一致団結し初期研修医教育を行うプロジェクト「群星沖縄臨床研修センター」を立ち上げました。超高齢社会が到来している日本では専門の診断・治療だけできれば済む時代ではないため、守備範囲の広い研修を行っています。「競争より協働」の精神で、将来診るであろう患者さんのために切磋琢磨しています。

 

研修は医療を受ける患者さんのため。

愛情をもって研修医に接し

質の高い研修で守備範囲の広い医師を育てよう

 

初期臨床研修制度の見直しが2020年に実施される。「日本型病院ジェネラリストの育成」を全国各地で展開し、現在、群星沖縄臨床研修センター長を務める徳田安春氏に、よい医師を育てるポイントを聞いた。


徳田 安春(とくだ・やすはる)

1988年琉球大学卒。2005年ハーバード大院にて公衆衛生修士取得。

沖縄県立中部病院内科副部長・臨床研修委員会副委員長、筑波大学大学院医療医学系教授、JCHO本部研修センター長・本部顧問などを経て、17年より現職。

著書に『Dr.徳田のフィジカル診断講座』など。

沖縄の民間病院が 良医育成のために団結

─群星沖縄臨床研修センターはどのようなプロジェクトですか。

 

沖縄県内の民間病院が、よき臨床家を育成するために、思想信条を超えて一致団結し、初期研修医教育を行うプロジェクトです。8つの基幹型病院と20カ所の協力型病院、計28病院が連携して、研修医にとってベストな研修プログラムを提供しています。

 

1年目は基幹型病院で基本的な診療科をローテーションで回り、2年目は協力型病院や他の基幹型病院の希望の診療科で研修を受けます。研修期間中は、指導医やシニアレジデントなどがきめ細かく屋根瓦式指導を行います。

 

研修医は、救急医療、外科系が強いなど、それぞれの病院の得意分野を生かした研修を受けられます。一方で、各病院にとっては、初期研修に必須の科が揃っていなくても研修医を受け入れられるメリットがあります。

 

このプロジェクトは、初期臨床研修必修化された2004年、沖縄県立中部病院元院長の宮城征四郎先生(群星沖縄臨床研修センター名誉センター長)を中心に立ち上がりました。大学病院中心ではなく、経営主体やバックグラウンドの異なる民間病院が、初期臨床研修のために連携するのは、全国でも珍しいのではないでしょうか。

 

守備範囲の広い研修を

─ジェネラリストの養成を目指しているのですか?

 

ジェネラリストを育てるためでもありますが、将来は、大学病院などの高度先進医療機関で働きたいと考えている研修医も大勢参加しています。

 

大学病院に紹介されて来る患者は、すでにある程度診断がついている患者がほとんどです。日本専門医機構のプログラムで専門医を目指す医師も、市中病院の初期研修で救急疾患やコモンディジーズの患者をたくさん診て、守備範囲を広くしておく意義は大きいと考えています。

 

特に高齢者はさまざまな疾患を抱えており、大病院に勤める専門医であっても自分の専門の病気の診断・治療だけできれば済む時代ではありません。超高齢社会が到来している日本では、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科などの特殊診療科へ進むことを希望している研修医も、今後ますます全人的に患者さんを診る総合診療医的な視点が求められます。

 

 

─心がけていることはありますか。

 

教育内容の標準化です。各病院の医学・医療の内容や指導の仕方に差があっては、研修医が複数の病院をローテーションする中で問題が生じます。これは臨床研修を実施する全ての病院に通じることですが、グローバル・スタンダードの医療を実践し、教育内容を標準化して研修医を指導することが大切です。

 

それから、教えるためには指導医も研鑽を積まなければなりません。当センターでは指導医の指導に力を入れていますし、定期的に臨床教育セミナー(Faculty Development)を開催し、国内外のエキスパートの講演を聞いて議論し学ぶ機会を設けています。また、ミシガン大学の教授が各病院を回って教育回診を行い、研修医や指導医が同大へ留学して学ぶ機会もあります。

 

 

─プロジェクトの成果を感じていますか。

 

スタートから15年経ち、研修修了者の中から、基幹型病院の研修委員長も誕生しています。指導者のリーダーになる人材も輩出しているという意味でも、このプロジェクトは着実に発展してきているといえます。

 

研修修了者は沖縄県内、全国の医療機関で活躍しており、米国レジデントやフェローシップに進んだ医師、厚生労働省の技官になった医師もいます。

 

また、このプロジェクトの特徴は助け合いです。「競争よりも協働」の精神で、研修医同士、指導医同士がお互いに悩みを共有したり助け合ったりしています。充実した初期臨床研修を提供するという目的でお互いに顔の見える関係になったことで、病院間の患者の紹介や医療面での連携もよりスムーズに行われるようになりました。

 

 

─若い研修医の指導に困ったときにはどうしたらよいですか。

 

研修医や若い医師には愛情をもって接することが大切です。指導者側は、自分の受けた教育をそのまま踏襲しようとしてしまいがちですが、昔ながらの厳しい指導は、いまの若者には通用しにくい面があります。「近頃の若者は」と嘆くより、指導医のほうが意識を変え、時代に合った適切な指導法を身につけるべきではないでしょうか。

 

研修は研修医のためではなく、将来診るであろう患者さんのために実施しているわけです。研修医が、バーンアウトせずに研修が続けられるように指導医が気を配ることが重要です。

 

 

─「よき医師」とはどういう医師だと考えますか。

 

話をよく聞く医師です。いくら技術力が高くても、患者の話をまったく聞かずきちんと説明もしない医師は、トラブルのもとです。

 

今後はAIが医療現場にもどんどん入ってくるなかで、人間同士のコミュニケーションはAIにはまねできない部分でもあります。

 

 

─今後、実現したいことはありますか。

 

研修プログラムの国際比較、国際連携によって、どういう研修をすると最も効果的なのかエビデンスを構築し、初期臨床研修の内容をさらにレベルアップさせたいです。まずは、台湾や韓国などアジアの病院と連携して、初期臨床研修のアウトカム評価と比較を行い、エビデンスを構築したいと考え、準備を進めているところです。

 

医学教育、研修医教育にもエビデンスや質の評価が必要です。初期臨床研修のアウトカム評価を行い、お互い良いところは取り入れ合って研修がレベルアップすれば、医療の質の向上にもつながるはずです。

 

(聞き手・福島安紀) 

 

 出典:Web医事新報

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