2020.01.16
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医療機関の第三者承継、日医が支援体制充実へ
約4割の医療機関が将来「閉院」検討など踏まえ

メディカルサポネット 編集部からのコメント

日本医師会総合政策研究機構の調査によると、約4割の医療機関が、将来「閉院」も検討しているという結果が出ました。それを踏まえ日本医師会は、第三者承継に関する支援体制を充実させていくと表明しました。民間の仲介業者エムスリーと、診療所と第三者医業承継に関する包括連携協定を締結し、すでに秋田でトライアル事業を実施していることを明らかにしました。

 

 日本医師会は15日の定例記者会見で、医療機関の第三者承継に関する支援体制を充実させていく考えを表明した。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査結果によると、民間医療機関の約4割が将来の選択肢の一つとして「閉院」を考えていたという。医師不足が深刻化する秋田県では、民間事業者との提携を通じて事業承継に関する情報提供などの取り組みを先行させていることも明らかにした。【吉木ちひろ】

 

第三者承継について日医の対応や考え方を述べる小玉常任理事

 

 小玉弘之常任理事はこの日の会見で、日医総研による第三者承継に関する調査の結果について概要を紹介した。それによると、都道府県医師会・郡市区医師会では診療所の承継について不安を抱えている会員が多くいるという認識があるものの、承継に備えるための組織整備や支援体制づくりに着手している拠点はごく一部だったという。また、医療機関の経営者を対象とした調査では、回答した1,088施設のうち38.2%が第三者承継を将来の選択肢として考えていた。さらに、承継プランの検討に当たって経営者が不安に思う内容として、「信頼できる相談先が見つかるか」「後継者候補を自力で探せるか」「妥当な金額で事業譲渡できるか」が三大事項に挙がったことを説明した。

 

 日医は仲介事業者による第三者承継のあっせんが増加する中、その実態が把握できていないことについて「医師偏在の助長もさることながら、手数料・譲渡価格について不本意な承継につながるリスクを包含している」と問題意識を持つに至ったという。

 

 日医として拡充させていく具体的な支援として、▽第三者承継に関する契約内容が適当なものか、医師が相談を希望した場合に承継に関する専門家につなぐ▽都道府県医師会・郡市区医師会から、第三者承継に関する相談があったときに弁護士や税理士、仲介業者の候補先を示す▽譲渡を希望する医師と承継を希望する医師との引き合わせについて、日医の持つ女性医師バンクの機能拡充などによって対応する―ことを想定しているという。

 

■エムスリーと医業承継に関する包括連携協定、秋田でトライアル事業実施

 

 民間の仲介事業者を日医が具体的に示すことについて、小玉常任理事は「引き継ぎを検討する医師の探索等において、民間事業者の力が現時点においては必要と考えている」と述べた。また、承継事業に関与する狙いとして、医師が不足する地域のさらなる医師不足の進行防止や都道府県医師会・郡市区医師会との連携の緊密化、医師会への入会促進効果などが期待できることも補足した。

 

 これに関連して日医は、エムスリー(東京都港区)と診療所の第三者医業承継に関する包括連携協定を15日付で締結したことも明らかにした。第三者承継に関するセミナーの共催や同社が持つプラットフォームを活用して日医会員への情報提供などを行うもので、すでに秋田県の2市でトライアル事業を実施している。

 

 トライアル事業の実施期間は2020年度まで。医療機関の譲渡を検討する医師から信頼できる相談窓口を求める意見が多かったことから、エムスリー側から日医に打診があり実施に至ったという。

 

 

出典:医療介護CBニュース

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