2019.08.01
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糖尿病患者の合併症、検査実施状況に格差
NDBで分析、国立国際医療研究センター

メディカルサポネット 編集部からのコメント

国立国際医療研究センター糖尿病情報センターの杉山室長ら研究グループは、糖尿病患者の各種合併症検査の実施状況についてNDBを用いて分析した結果、都道府県や施設間でばらつきがあることを明らかにしました。糖尿病で恐ろしいのは“血糖値が高い状態が続く”病気自体ではなく、その症状が引き起こす腎症、網膜症、神経障害などの深刻な合併症で、早めの対策が重要となります。患者の重症度の差などを調査した結果ではないため単純比較はできないとしながらも、杉山室長は「内科医と眼科医間の連携の強化や患者へ検査の大切さを伝えることも大切」と注意を促しました。

    

 国立国際医療研究センター糖尿病情報センターの杉山雄大医療政策研究室長らの研究グループは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、治療ガイドラインで推奨されている糖尿病の各種検査の実施状況について都道府県や施設間でばらつきがあることを明らかにした。代表的な合併症の網膜症の検査実施率を都道府県別に見ると、最高が51.0%、最低が37.5%で13.5ポイントの開きがあった。【吉木ちひろ】

  

論文の共同責任著者の杉山室長(左)と大杉満糖尿病情報センター長

  

 調査の対象は、2015年度に糖尿病薬の定期的な処方を受けていた外来患者約415万人。杉山室長のほか、東京大大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座の門脇孝特任教授らの研究チームがNDBを用いて、日本糖尿病学会の治療ガイドラインなどで推奨されている各種検査を年1回以上受けている割合を測定した。検査の実施率を糖尿病診療のプロセス指標として明示し、政策提言することで全国の診療の質の均てん化につなげる狙いがある。

 

 調査結果によると、血糖コントロール指標(HbA1cまたはグリコアルブミン)が測定されていた患者は96.7%に上る一方、網膜症検査を受けたのは46.5%、尿定性検査は67.3%、尿アルブミンまたは蛋白の定量検査は19.4%と、検査によって実施状況に開きがあった。都道府県別では網膜症検査のほか、尿定性検査で54.1―81.9%、尿アルブミンまたは蛋白の定量検査で10.8―31.6%と差があった(尿検査の実施率を調べたのは、レセプトデータから検査の実施状況が読み取れる200床未満の病院と診療所のみ)。地域差の原因は調査では明らかになっていないが、患者の重症度の差などを調整した結果ではないため単純比較はできない。

 

 杉山室長は調査結果について、「網膜症の検査は認定施設(日本糖尿病学会認定教育施設)でも8割を超えない。内科医と眼科医の間の連携強化や患者へ検査の大切さを伝えることも大切」などと指摘した。

 

 

出典:医療介護CBニュース

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