2019.07.25
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介護医療院への転換に行政セクショナリズムの壁
日慢協、移行定着支援加算の延長など6要望を整理

メディカルサポネット 編集部からのコメント

18日に日本慢性期医療協会の定例記者会見が開催され、「介護医療院」「老健の多機能な施設への転換」などが取り上げられました。療養病床からの介護医療院への転換は、申請を拒否する自治体が全国的に存在するなど、依然進んでいません。日慢協は要望解決に向け、煩雑な事務手続きなど、現状の問題点を洗い出すと共に、移行定着支援加算の算定期限の延長を厚生労働省に求めています。

   

日本慢性期医療協会(日慢協)は、療養病床からの介護医療院への転換が「進んでいない」として問題点を整理した。介護保険への負担増加や介護施設が充足していることを理由に開設申請を拒否する自治体があるほか、事務手続きの煩雑さが壁になっているという。武久洋三会長は18日の定例記者会見で、「医療・介護政策の一環であるにもかかわらず、(老健局だけでなく)厚生労働省としてのスタンスの取り方や市町村への徹底が不十分」などと指摘。来週中をめどに問題点の是正と、移行定着支援加算の算定期限の最低2年間の延長などを同省に要望する。【吉木ちひろ】

  

行政窓口の状況を説明する日本介護医療院協会の鈴木龍太会長(18日、東京都内)

   

 日慢協が求めるのは、2021年3月31日を算定期限とする移行定着支援加算(93単位/日、18年度介護報酬改定で新設)の最低2年間の延長のほか、▽転換の事務手続きの迅速化▽都道府県の地域医療介護総合確保基金の適用範囲の拡大と介護医療院へのさらなる補助の検討▽介護保険運営主体の都道府県への移管▽介護保険料の一部市町村での高騰を抑制するための対応▽主に介護ニーズによって長期入院している患者の受け皿となっている医療機関を無くし、病院と介護施設の機能を明確化するため、財務省などの各省庁や国民へ働き掛け、社会全体の合意形成を図ること―の6点。

   

 介護医療院は、19年3月時点で全国に150施設が開設されている。都道府県別では北海道で15施設(761床)、山口で10施設(622床)が開設されている一方で、岩手、宮城、新潟、滋賀、和歌山、宮崎ではゼロだった。こうした地域差が生じる理由について武久会長は、「ほかに介護施設が十分ある」などとして申請を拒否する自治体が全国的に存在している実態を説明した。日慢協は、医療療養病床からの介護医療院への転換が介護保険料の上昇につながることをその理由の一つと見て、地域医療構想の枠組みから厚労省内での連携を深めるとともに、市町村担当者に対する丁寧な説明を求めている。

   

■転換前向きな自治体でも、煩雑な事務作業が負担に

   

 日慢協の内部組織・日本介護医療院協会の鈴木龍太会長(医療法人社団三喜会理事長)は、介護医療院への転換について「対応に前向きな自治体でも物理的に時間がかかっている」と補足し、東京都の状況を例示した。

   

 都内には18年12月末時点で介護療養病床が4121床あったが、都が施設改修の補助金額を明示したのは19年の3月。厚労省の調査では19年3月時点で1施設が介護医療院を開設していることが分かっているが、この施設は既存施設の改修なしで介護医療院へ転換したという。鈴木会長によると、分かっている範囲で3施設が都の補助を受けて既存施設を転換改修の上、新たに介護医療院を開設した。都では転換改修の申請を随時受け入れているが、改修が必要な施設では、申請を出せるタイミングが3月以降になったことに加え、事務手続きの煩雑さやこれまでかかっている時間を計算に入れると、現行の算定期限には「到底間に合わない」と訴えた。

  

 

出典:医療介護CBニュース

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