2023.03.15
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ミッション:食事を食べなくなった理由を家族にわかりやすく説明せよ! 

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦 ~特養での穏やかな日常を目指して~ vol.5

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦  ~特養での穏やかな日常を目指して~

  

 

編集部より

特別養護老人ホームや有料老人ホームをはじめとする高齢者施設は、施設長を経営トップとして、介護職・事務職・看護職・外部機関など多職種の関わりによって日々の業務が進められ、高齢者の生活が保たれています。一方で、多職種が関わるからこそそこで生じる問題もさまざまで、解決には多職種の関わりが必要となるため大きなエネルギーを要することも多いのではないでしょうか。本コラムでは、大阪の特別養護老人ホームで「常勤医師」として働く堀切康正さんに、同施設における5年間の挑戦をつづっていただきます。「入居者様が穏やかに過ごせる施設」を目指し病院から特別養護老人ホームに活躍の場を移した堀切さんは、介護の現場で何を感じ、誰とどのように改革を進めてきたのでしょうか。

第5回は介護施設などで高齢者が食事をあまり食べられなくなったとき、家族にどうやって説明すると受け入れてもらえるか、です。

嚥下障害は外見から推し量るのは難しく、介護職員や医師による細かな対応が、家族によるスムーズな受け入れにつながることになるといいます。

 

執筆/堀切 康正(社会福祉法人 永寿福祉会 永寿特別養護老人ホーム 永寿診療所 管理医師)

編集/メディカルサポネット編集部

 

目次

  • 1.  高齢者の食欲不振 家族の認識と入居者の現状
  • 2.  入居者、家族、介護者のギャップを解消するためには?
  • 3.  嚥下状態や食事量についてご家族に誤解されないために必要なこと

 

  

高齢者の食欲不振 家族の認識と入居者の現状

「だんだん食べなくなってきた……」

高齢者施設に入居している大半の方には、こういう時期がやってきます。その際、その状況を家族に説明しても、全然分かってくれない事ってありませんか?

「食べないから元気が出ないんじゃないですか?もっと食べさせて下さいよ。」

そんなことを言われると、「どうすればいいんだ……」と思い悩んでしまいがちです。こういう時には、家族の認識と入居者の現状との間の「ギャップ」を知ることが重要です。

 

今回、ギャップの原因の分析と実行できる対策について検討してみました。このギャップに注目することで、食事が食べられなくなった際のより良い意思決定支援につながれば幸いです。

施設で嚥下障害対策と看取りを行うようになり、食事量が少なくなった入居者の家族と面談する機会が大幅に増えました。一般的に、食事量が少なくなる経過は、大きく分けると2つあります。

1つが、ゆっくりと食事量が少なくなる場合もう1つは、感染症などをきっかけにして、急に食事量が少なくなる場合です。

前者は、典型的な老衰としての経過です。食べれなくなった時には、体重減少もしているため、見た目の変化も出てきています。それと比較して、後者では、急な変化であるため、体重減少や見た目の変化が少ない事が多いです。家族に食事が食べられなくなってきているという話をして理解が得られにくいのは、後者です。

    

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦  ~特養での穏やかな日常を目指して~ vol.5

 

例えば、コロナ禍になる前、感染症治療後に食事量が落ちた入居者の家族と面談を行いました。当時は、入居者と面会をしていただいてから面談を行う流れにしていました。医者から話があると言われて、大抵の家族は緊張していたからです。まずは、今の入居者の顔を見ていただいて、落ち着いてもらおうと思っていました。そして、面談開始時に、面会した際の印象を聞くと、だいたいの家族が、「思ったよりも元気そうで安心しました。」と答えました。当初は、この家族からの返答を自分の意図した通りになっていると喜んでいました。

しかし、面談を数多く行っていくなかで、この「安心した」が問題だということがわかりました。安心して、家族の中の認識が甘くなり、家族の認識と入居者の現状との間にギャップが生まれていたからです。このギャップが大きければ大きいほど、家族が入居者の実際の状態を受け入れることが難しくなっていきます。

 

 

 

入居者、家族、介護者の嚥下に対するギャップを解消するためには?

このようなギャップが生まれる原因は、3つあります。

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