2022.10.19
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ー新連載ー ミッション:外部受診回数を減らせ!

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦 ~特養での穏やかな日常を目指して~ vol.1

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦  ~特養での穏やかな日常を目指して~

  

 

編集部より

特別養護老人ホームや有料老人ホームをはじめとする高齢者施設は、施設長を経営トップとして、介護職・事務職・看護職・外部機関など多職種の関わりによって日々の業務が進められ、高齢者の生活が保たれています。一方で、多職種が関わるからこそそこで生じる問題もさまざまで、解決には多職種の関わりが必要となるため大きなエネルギーを要することも多いのではないでしょうか。本コラムでは、大阪の特別養護老人ホームで「常勤医師」として働く堀切康正さんに、同施設における5年間の挑戦をつづっていただきます。「入居者様が穏やかに過ごせる施設」を目指し病院から特別養護老人ホームに活躍の場を移した堀切さんは、介護の現場で何を感じ、誰とどのように改革を進めてきたのでしょうか。第1回は外部受診回数を減らす挑戦に関する振り返りです。ギリギリのマンパワーでやりくしている高齢者施設にとって、外部医療機関受診は少なからずお悩みを抱えるテーマではないでしょうか。着任時に100件/月もあったという外部受診件数をおよそ半分にまで減らした舞台裏に迫ります。

 

執筆/堀切 康正

編集/メディカルサポネット編集部

 

 

  

特養常勤医師の多職種協働チャレンジ開始!

このたび連載コラムを始めることになりました、永寿特別養護老人ホーム永寿診療所の堀切康正です。特養では珍しい「常勤」の管理医師を務めています。診療所は特養内に併設されているため、勤務中はここに常駐しています。私は14年目の医師で、元々は外科医として病院に勤務していましたが、2018年から特養へとステージを移し内科医として働いています。

  

本コラムは、私が当施設で行った多職種協働チャレンジについてお伝えしていくものです。成功したことはもちろん、失敗の過程も包み隠さず書いていきますので、新しいことに取り組みたい・困っている事象を改善したいと考えている介護施設の経営者・管理職の方の参考になれば幸いです。

 

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦  ~特養での穏やかな日常を目指して~

 

現場観察で見つけた、医師が取り組むべきこととは?

  「ここを入居者様が穏やかに過ごせる施設、スタッフが幸せに働ける施設にする!」

 

初めての転職で気持ちが高揚し、やる気に満ちあふれていたこともあり、入職後すぐにこの目標を掲げました。しかし、それまで外科医として病院に勤務していた私は、介護のいろはから理解し学ぶ必要があったため、時間を見つけてはフロアに出向き、入居者様の1日の生活やそこに関わるスタッフの動きを観察し理解を深めようと努めました。

  

入居者様の生活を支えるスタッフの仕事は大変だと頭では理解していたはずでしたが、実際に目にした光景は想像を上回るものでした。特に、フロアで直接入居者様と接するスタッフは、施設基準を満たした人員配置が行われているものの常に忙しく動き回っており、現場の問題点に気付き始めると同時に「入居者様が穏やかに過ごせる施設」とのギャップにもどかしさを感じました。

  

日々の診療と並行してフロア観察を進めデータ収集を行うこと半年、現場が抱える大きな問題点の改善に着手しました。それは、外部医療機関の受診が多すぎるというものでした。当時、外部受診時は入居者様が生活するフロアスタッフが付き添うルールになっていたので、受診のたびにフロアスタッフが減り、残ったフロアスタッフで入居者様の対応に追われる状況が発生していたのです。

  

私が管理医師に着任する前(2017年度)、1ヵ月の受診件数は100件を超えており、その多さにはフロアスタッフ含めた多職種が非常に困っていました。当時の方針は、施設内の急変リスクを下げることであったため、安易にルールを変更することは難しく、施設の中でこの問題を扱えるのは医師である私だけでした。「入居者様が穏やかに過ごせる施設を目指す!」という目標の実現に向け、現場の深刻な問題となっていた外部受診件数を減らすことを最初のミッションと決めたのです。

 

熱血!特養常勤医師1,825日の挑戦  ~特養での穏やかな日常を目指して~

  

特養の“穏やかではない日常”を生んでいた原因

この問題を分析すると、2つの原因にたどりつきました。

それぞれの原因に対して方針を考え、スタッフと共有し相互理解をはかった上で実践へと移しました。

 

① 定期受診:外部医療機関と診療所で併診している方が多い

方針)

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