2022.07.14
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実態編―――医療機関における産業保健活動
~メンタルヘルス対策と働き方改革への取り組みの実情と課題とは?~

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメントvol.2

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント 

 

編集部より

皆さんの職場に仲間入りした新卒・中途採用看護師の方たちは研修を終えて各配属先で生き生きと看護実践できていますか?昨今、働く人たちのメンタルヘルスが重視され、さまざまな取り組みが行われていますが、医療現場に目を向けるとその実態はどうでしょうか?厚生労働省の調査によると、保健師・助産師・看護師は令和2年度(2020年度)における精神障害による労災請求件数の多い職種の第3位となっていることがわかります。中小規模病院やクリニックでは、医療従事者のメンタルヘルスサポート体制が十分とはいえません。メンタル不調による休職や退職は、本人だけでなく組織にとっても大きな影響を及ぼします。スタッフのメンタル不調に気付いた時、最も近い看護管理者は何をすべきなのでしょうか?

 

本特集では、看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメントと題して、産業医・社会保険労務士・看護管理者、それぞれの視点からお話しいただきます。第2回「実態編」では、研究論文をわかりやすく読み解きます。自院と同規模の病院が具体的にどのような産業保健活動を実施しているのか。気になる隣の芝生の産業保健事情を産業医・労働衛生コンサルタント・精神科医の室井慧さんに解説いただきました。

 

執筆/室井 慧(産業医・労働衛生コンサルタント・精神科医)

 

どこまで進んでいる?医療従事者を守る医療機関の産業保健活動

前回の記事(vol.1現場管理編)では、看護師におけるメンタルヘルス対策について解説しました。長時間労働や心理的にストレスフルな環境以外にも、医療機関には感染症や交代勤務、化学物質、放射線など多くの有害因子があります。そのため、医療従事者の安全と健康を守る上で、産業保健活動を行っていくことが重要になります。

 

しかしながら、医療機関によっては産業保健活動が不十分な施設もあるかもしれません。医療機関の産業保健の実情と課題を知ることは、今後の産業保健体制を構築するために参考になると思われます。そこで、今回は、医療機関における産業保健活動の実態を調べた研究[1]をご紹介します。

 

 

研究内容:対象施設と調査方法

この研究は日本産業衛生学会「医療従事者のための産業保健研究会」の助成により行われたものです。日本医療機能評価機構の病院機能評価に認定されている医療機関のうち、関東地方の医療機関470施設すべてを対象とし、2020年3月から6月にかけてアンケート調査を実施しました。質問内容は産業保健体制、感染症対策への取り組み状況、メンタルヘルスの取り組み状況、働き方改革への取り組み状況、今後1年の間に取り組みたい産業保健上の課題の優先順位についてで、140医療機関から回答がありました(回答率29.8%)。

 

今回は、メンタルヘルスの取り組み状況、働き方改革への取り組み状況、今後1年の間に取り組みたい産業保健上の課題の優先順位についての結果を抜粋してお伝えします。

 

 

 

 

各医療機関の実態は?そのリアルな活動事情と気になる弱点

1.メンタルヘルスの取り組み状況

以下に医療機関規模ごとの取り組み状況を見てみましょう。 

 

<表1>医療機関規模ごとの取り組み状況―1:メンタルヘルス

メンタルヘルス事例について産業医に相談できる体制 

 

ストレスチェックの毎年の実施

 

 

高ストレス者に対する面談の実施

  

参考文献[1] 内の「表1.産業保健活動体制の概要」をもとに編集部で作成

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/64/1/64_2020-045-E/_article/-char/ja 

 

「メンタルヘルス事例について産業医に相談できる体制」、「ストレスチェックの毎年の実施」、「高ストレス者に対する面談の実施」については実施していると回答する医療機関は9割以上であり、よく実施されているという結果でした。

 

<表2>医療機関規模ごとの取り組み状況―2:メンタルヘルス

求職者に対する職場復帰支援

 

 

年1回以上職員にセルフケアに関するメンタルヘルス教育の実施 

 

年1回以上管理職に対してメンタルヘルス対応教育の実施

 

参考文献[1]内 の「表3.メンタルヘルス対策の状況」をもとに編集部で作成

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/64/1/64_2020-045-E/_article/-char/ja  

 

一方、「休職者に対する職場復帰支援」は8割とやや少なく、「年1回以上職員にセルフケアに関するメンタルヘルス教育の実施」と「年1回以上管理職に対してメンタルヘルス対応教育の実施」については5割程度しかありませんでした。

  

2.働き方改革の取り組み状況

以下に医療機関規模ごとの取り組み状況をお見せします(表3)。

医師の働き方改革の取り組みについて平均74%の医療機関が取り組んでいるのに対して、医師以外の医療職については平均64%にとどまりました

 

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