2025.03.25
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若い芽を摘まない職場環境づくりが急務

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.4

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第4回は、「若い芽を摘まない職場環境づくりが急務」です。

介護という職業にあこがれ、介護という職業が誇りを持って入職してくる新入職員が定着するにはどうすればよいのでしょうか。そんな大切な人材をつぶし若い芽を摘み取っているのが、人材を求めているはずの介護事業者のケースが見受けられるといいます。

介護の仕事に理想を持って入職してくる職員の夢をつぶさずに成長できる環境を作るにはどうすればよいのでしょうか。

入職員が入職する前にぜひ一度目を通していただきたい内容となっております。職場環境並びに新入職員の育成のヒントとしてご活用いただけますと幸いです。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

  

1. 介護職員の定着率が向上しない職場環境とは

4月になると全国の介護事業者に新人職員が数多く入職してくることになる。

前回の連載記事で指摘したように、介護人材は今後ますます減少するのだから、そういう人たちが介護人材として成長し定着してくれないと、介護事業経営は継続困難となりかねない。

新人職員が定着する職場づくりを考えるに際して、新人職員が短期間で辞めてなかなか定着率が向上しない職場にはどのような問題があるのかという原因を逆説的に検証し、その対策を考えていくことも必要になる。 

  

   

2. 介護福祉士を目指す人の動機づけとは

 

 

新人職員の中には介護福祉養成校の新卒者も多数含まれるが、その人達が介護福祉士となって介護事業者で働きたいという動機づけは何かということを考えてほしい。

高校を卒業して介護福祉士養成校に入学してくる人たちは、学生時代の進路指導の際に担当教員から、介護の仕事に将来性はないので進路を考え直すように指導された経験を持つ人が多い。

そうであるにも関わらず強い意志で当初からの動機づけを護って入学してくる学生も少なくない

 

自分の大好きだった祖母が、特養で看取り介護を受けて亡くなったのだが、その時に親身になって祖母の介護業務に携わる介護福祉士の姿を見て、自分もあんな風に人の役に立ちたいと思ったことがきっかけで介護福祉士を目指している学生がいる。

また介護福祉士として働く自分の親の姿を見て、あんなふうに人の役に立つ仕事をしたいと思って入学してくる学生もいる。

後者はまさに親の背中を見て育った結果である。

そんな親の姿を見て育った若者が変な人間になるわけがなく、介護人材として貴重な志と可能性を持つ人ともいえるのではないだろうか

 

彼らは介護という職業にあこがれ、介護という職業が誇りを持って従事できる仕事であると考え、自分がその専門職になろうという思いを持っている。

介護の仕事に決して将来がないとは考えず、むしろその子たちは、自分の将来を自らの力で手に入れようとしているのである。

そういう介護人材こそ本当の意味で、「金の卵」だと思う。

そうした人材をつぶさないように、大切に育てることこそ介護人材が減る時代に一番求められることだ

 

ところがそんな大切な人材をつぶし若い芽を摘み取っているのが、人材を求めているはずの介護事業者である

介護福祉士養成校を卒業した人たちであっても、就職した初日から介護実務がこなせるわけではない。

職業として介護実務を経験したことのない彼らは、社会人として護るべき職業倫理や職場のルールを覚えなければならないし、そこで必要とされる実務に通ずる専門知識や介護技術を基礎から把握しなければならない。

 

しかしそうした基本知識を伝えようとせず、いきなりその職場のルーチンワークのみを指導して、あとは本人任せで介護実務の場に放り出しているような介護事業者が多い。

そのような環境に置かれた新人職員は、仕事がきちんと覚えられないという不満と、そのことによって適切な利用者対応ができないのではないかと不安を持ち続けることになる。

それがメンタルヘルス不調につながり退職に至るケースも少なくない。

そうしないためには、介護実務指導としてのOJTの前に、座学に時間を割いて正しい基本知識を与える機会を設ける必要がある。

入職初日から指導担当介護職員の後ろにつかせて、介護実務の場にいきなり放り出すような職場では、人材は定着しないと考えなければならないのである。

 

 

3. 新人職員の抱く理想をつぶさない職場環境づくり

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