2023.02.24
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新たなフェーズを迎えた医療マネジメント職育成
~知の共有と更新を目指す、事務長育成研修、スペシャリスト採用~

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.11

  

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院で事務部長を務める藤井将志さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第11回のテーマは新たなフェーズを迎えた医療マネジメント職育成です。

谷田病院では、「全員事務長宣言!」を合言葉にしたジョブローテーションによる医療マネジメント職育成をしていますが、その研修のひとつ、Off-JT部分をプログラム化して外部でも活用できるようにしたそうです。Off-JTと1カ月の事務長に同行し続けるOJTなどを組み合わせて事務長を育成するゼネラリスト養成のほか、即戦力となる専門職向け「スペシャリスト採用」もあり、週1~2回勤務の職員もいるとのこと。

新しい医療経営を次々と取り入れる谷田病院には、さまざまな病院や介護施設から経営支援の依頼が来ているそうです。

目次

  • 1.  自ら動く力と課題解決力を養う「事務長育成研修」
  • 2.  柔軟な働き方と生産性向上を目指す「スペシャリスト採用」
  • 3.  さらなる人材育成と知見の共有で、経営支援の輪を広げる

 

自ら動く力と課題解決力を養う「事務長育成研修」

谷田病院では、俯瞰的に病院経営を見られる人材を育成するため、医療マネジメント職として事務職員を採用しています。「全員事務長宣言!」を合言葉にしたジョブローテーションによる医療マネジメント職育成の仕組みは、本連載「病院経営の担い手を育てるネットワーク構築〜人材育成の仕組み化とオンラインサロン・セミナー活用〜」で詳しく紹介したとおりです。

 

この医療マネジメント職の必須研修のひとつにOff-JTがあります。月1回半日の勉強会では、病院経営に関するテキストの輪読や働き方に関するレクチャー、ロールプレイング、業務プロセス改善に関するディスカッションなどを行います。Off-JTは外部にも公開しているため、県外から事務長会の視察があったり、他院の事務職員が継続的に参加してくれたりと、徐々に取り組みが知られるようになってきました。こうした学びの場を外部の方にもより積極的に活用していただくため、2022年度から「事務長育成研修」としてプログラム化し、提供することにしました。

 

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.11 

人材育成は、座学研修だけでは出来ないと考えています。特に事務長というリーダーを育成するためには、座学で学んだ知識やロールプレイを実際の医療や介護の現場で発揮できるようにすることが大切です。そこで谷田病院の事務長育成研修では、病院経営の実践に必要なコツやノウハウなどの暗黙知を身につけるため、1ヶ月事務長同行(OJT)やジョブローテーションなど医療マネジメント職と同様のプログラムを採用しています。

 

例えば、事務長同行研修では、理事会運営や大学医局への訪問、各種団体・銀行との折衝などのトップマネジメントを体験していただきながら、「なぜやるのか」、「なぜこう判断したのか」を一つひとつ丁寧に言語化して伝えていきます。もちろん、質問は常時ウェルカムです。また、ジョブローテーションを通して日常業務の中で改善を積み重ねていくことも重視しています。事務長になると、部下から指示がくることはありません。自ら動き、課題を発見し、解決へ導く力が求められるため、業務改善へのチャレンジは必須です。プロジェクトリーダーとして院内の課題解決に取り組んでいただきながら、定期的に1on1を行い、コミュニケーション、リーダーシップ、チームビルディングなどのフィードバックをかけていきます。

 

2023年1月現在、事務長研修には県外から1名が参加中で、新年度にはさらに公的病院から計2名のスタッフが半年研修を行う予定です。終了時には自分から見ても、周りから見ても、「明らかに変わった」と言われる成長していただくことが筆者の目標でもあります。卒業後はそれぞれの職場で業務改善を続けられるように、互いにディスカッションできる場を設けたいと考えています。リーダーは孤独になりがちだからこそ、卒業生同志のゆるやかな繋がりを大切にしていきたいです。

        

柔軟な働き方と生産性向上を目指す「スペシャリスト採用」

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