2024.05.23
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院内SEが語る、医療DXサバイバル
採用難なら育てよう!リスキリングでシステム担当者を育成

       

編集部より

医療機関のDX化が2024年の診療報酬改定にも盛り込まれ、具体的な対応をゆだねられている各医療機関。「医療情報システム安全管理責任者」の専任配置が必要になるなど、この流れは今後も拡大していくと見ています。

本編では病院で情報システム担当・院内SEをしながら自部署の採用も担当する医療情報技師、診療情報管理士小坂佑士さんが、診療報酬改定で求められていることに対する行政支援等をわかりやすく解説します。

今回は、「採用難なら育てよう!リスキリングでシステム担当者を育成」です。診療報酬改定で医療DXが求められ、医療機関でIT人材が必要となっていくことが明らかです。医療機関以外でもIT人材の賃上げが進む中、どのように採用活動を進めていく必要があるか考えていきます。

  

執筆/小坂佑士 医療法人社団久英会 情報システム担当

 (医療情報技師、診療情報管理士、医療経営士3級、応用情報技術者)

編集/メディカルサポネット編集部

   

 

 前回でも触れた診療報酬改定では、「医療DX」という単語が散見される。その中身としては、オンライン資格確認や電子処方箋への対応を医療機関に求めるものとなっている。とくにオンライン資格確認は訪問診療や訪問看護ステーションでの訪問時に患者の居宅でも保険情報を確認できるようになる。

 

 また、診療録管理体制加算ではサイバーセキュリティ対策やIT-BCPの策定と訓練といった近年の情勢への対応を求められている。このIT-BCPの策定や訓練といったものは、これまでの事務職員や診療情報管理士が対応してきた業務範囲とは異なる分野となっている。電子処方箋等の導入については補助金が出るようになっているが、工事業者については能登半島地震のインフラ復旧をはじめ、大阪万博や各種企業の大型建築プロジェクトなどの影響で人員の確保が難しくなっている。

 

内閣府のGIGAスクール構想のロードマップを確認しても令和5年度までで一区切りと言えそうだが、環境が整ったあとは保守に人材資源を割り当てる段階となる。

 

今後2~3年先の情勢を思い浮かべるだけでもIT人材が必要になることがわかる。医療機関以外でもIT人材が必要になるという状況で、追い打ちをかけるように賃上げの話が出てくる。このような状況下の中、医療機関ではどのように採用活動を進めていく必要があるか考えてみたい。

    

1.システム担当者の採用状況

 筆者の所属する医療機関は福岡県である。先述したように診療録管理体制加算の中には、IT-BCPの策定や訓練が求められる内容が含まれている。また、データ提出加算の対象病棟や外来が増えていくことや、近年のオンライン資格確認などの対応から電子カルテに踏み切った医療機関もあるように感じている。これに伴って医療機関のシステム担当者を採用したいという声が高まってきている。

 

 しかし、近年の新型コロナ対応の報道や賃上げの影響もあり、医療機関の労働環境や賃金形態に魅力を感じてもらえなくなっている。以下にマイナビエージェントから医療事務と社内システムエンジニアの年収を示す。

 

  

図表1.医療事務と社内SEの年収

医療事務と社内SEの年収

筆者作成

出典: 平均年収ランキング|マイナビエージェント

出典:IT・エンジニアの職種図鑑 社内SE|マイナビITエージェント

    

 現状は多くの医療機関もシステム担当者を採用する場合、事務職員と同じ給与テーブルで計算されることが多い。この金額の差を乗り越えないといけないことは明白だ。さらには外資系企業の参入も増えていることからIT人材の採用市場の年収は民間企業が魅力的に映る場合が多い現状にある。このような状況の中、給与面以外に注目してもらい医療機関で働くことの魅力を準備しアピールしていく必要がある。

  

2.  リスキリングの活用

 経済産業省の資料によると、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されている。リスキリングの概念をもう少し詳しく説明すると、リスキリングは「リカレント教育」ではないとされている。リカレント教育は「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回し続けるありようのことで、新しいことを学ぶために「職を離れる」ことが前提になっている。

 

 2022年10月3日の所信表明演説で、岸田首相はリスキリング支援として、5年間に1兆円を投じると表明した。報道でも様々な取り組みや意見があるようだが、筆者は大学を活用したリスキリングに活路を感じており紹介をしたい。

出典:リスキリングとは|経済産業省

   

3. 放送大学を用いた職員教育

 筆者は魅力ある職場にするために、放送大学を職員教育に活用することを提案したい。

 

 

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