2023.11.20
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医療者を支える産業保健スタッフの取り組み

 

編集部より

「ナーシングビジネス」2019年vol.13 no.2より抜粋。『医療者を支える産業保健スタッフの取り組み』をご紹介します。

 

社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス

経営企画本部 人事部 人事総務課

代表取締役 吉田桃子(よしだももこ)

臨床心理士。臨床心理士資格取得後、精神病院などの勤務を経て、主に産業領域において働く人のメンタルヘルスを専門に心理職として業務を行う。現在は複数の医療・福祉施設を有する社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスにて、職員の相談窓口およびメンタルヘルス対策全般を担当している。    

医療現場で働く産業保健スタッフの活動とは、どのようなものなのでしょうか。心理職として職員の相談業務を行う産業保険スタッフの、活動内容について紹介していただきます。

目次

  1. 産業領域における心理職業務
  2. 心理職の実際の活動
  3. 医療・福祉現場における特殊さ
  4. 今後の事業場内相談の発展

 

 

産業領域における心理職業務

筆者は現在、医療機関および福祉施設を複数抱える社会医療法人にて、法人職員の相談窓口および組織全体のメンタルヘルス対策の業務を担当しています。カウンセラーや心理士というと、スクールカウンセラーや、精神病院等で心理検査を実施したりカウンセリング業務等を行うスタッフをイメージする方が多いかもしれません。しかし筆者の場合は病院勤務であっても、病院や施設の職員のメンタルヘルス対策を担当し業務を行っています。

 

こういった「働く人のメンタルヘルス」を心理学の中では産業領域と呼びます。そして働く人のメンタルヘルスには、①セルフケア(従業員が自身のケアをすること)②ラインによるケア(職場の上司によるケア)③事業場(職場)内産業保健スタッフ等によるケア(産業医など事業場内のスタッフが行うケア)④事業場(職場)外資源によるケア(事業場外の専門的な機関や専門家を利用し、支援を受けること)の「4つのケア」という考え方があります。職場のメンタルヘルス活動はこの4つ全てが必要と考えられており、筆者はこの中の③にあたる事業場内の産業保健スタッフとして勤務しています。参考までに筆者の1日のスケジュールを図-01に、仕事上での年間スケジュールを図-02に示します。

 

 

 

働く人には自身で心身のストレス予防に努めるなど、4つのケアでいう①セルフケアに努めることが期待されています。そのため筆者は産業保健スタッフの心理職として、ただ一方的に支援をするのではなく、職員が自身で心の健康の維持増進ができるように、職員とのコミュニケーションを積極的にとり、職場の状況を踏まえつつ、知識の提供にも力を入れています。

 

仕事をすることは、基本的に健康でなければ難しいことです。ですから産業領域のメンタルヘルス対策では、不調者の対応のみならず、健康な人を対象にした予防の視点がとても重要になると考えられています。産業領域のメンタルヘルス対策では、以下の一次から三次の予防の段階があると考えられています。

 

●一次予防:健康の保持増進

組織全体、職員全体に向けた健康増進および疾病の発症予防の取り組み

二次予防:早期発見・早期対応

心身の調子を崩している職員の早期発見、早期対応

三次予防:治療と職場復帰、再発予防

疾病の治療や休職をしている場合の復帰の検討、復帰後の再発防止の検討

 

心理職が活動する職場はさまざまありますが、上記の一次予防にあたる健康な心身の維持と疾病予防的な活動が、産業領域における心理援助の大きな特徴ともいえます。

 

 

心理職の実際の活動

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