編集部より

病院でも本格的に始まっている外国人採用。今回は病院の現役事務長藤井将志さんが、谷田病院で実際に行っている外国人の病院スタッフ採用や育成の事例をお伝えします。

外国人採用をするとどんなメリットがあるか、定着のためにどのような工夫をしているかのほか、他病院からの「外国人採用に関するよくある質問」に回答しています。

   

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

組織のレジリエンス強化が目的

谷田病院で外国人材が初めて着任したのは2021年10月です。本当はその数年前には採用したかったのですが、技能実習や特定技能の制度変更、コロナ禍による入国制限、ミャンマークーデターなどが重なり、実現するのに時間がかかりました。これまで20人弱、介護と調理の特定技能外国人を採用してきました。本稿では、これらの経験から得られたうまくいったことと、うまくいかなかったことをお伝えしていきます。

   

まず、外国人材の採用の目的です。もちろん第一としては、①人材不足への対応が前提にあることは間違いありません。しかし、当院の場合、第二の目的として②人材のダイバーシティによる組織のレジリエンス強化があります。当院は病床数99床、従業員250人と小さな組織ですが、当時は100%日本国籍の社員しかいませんでした。規模感がその何倍もある医療機関でもそうしたところはまだ存在するでしょう。

   

一般企業で、それだけの規模があれば、外国人国籍の社員が数名いてもおかしくありません。今や中小零細企業でも当然のように外国人が働いています。日本人だけの閉じられた組織となると、どうしても“阿吽の呼吸”や“忖度”、“背中を見て覚える”みたいなことがまかり通りがちです。その空間に、育った文化が全く違う人材が交じり合うことで、組織運営をしていく過程で、日本人だけの集団なら問題がなかったことが課題として浮上し、解決を求められます。そうしたことを通して、組織が強くなると考えています。

   

 

着任時のオリエンテーション

    

勤務時間内に行う日本語勉強会

着任する外国人は日本語の勉強をしてくるとはいえ、まだまだ流暢に話せるわけではなく、入職後も勉強をしていかなければなりません。たまたま、医療マネジメント職のなかで日本語学校で教えていた人材がいて、毎週1時間、日本語の勉強会(連載「攻めの中小病院経営」第8回参照)を開いています。その甲斐あってか、この1年間の勉強で全員が日本語検定をひとつ上のN3やN2に合格しています。この勉強会は勤務時間内で行っています。これは、外国人に限らず、日本人も含めて、教育にかかる時間は勤務扱いにすることを方針としているからです。医療や介護の質を向上させるためには、そこで働く人たちの知識やスキルが上がることが必須だと考えています。

   

   

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