2023.06.22
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看護師はなぜ残業が多い?原因や働き方改革の課題を詳しく解説

前残業、看護記録、急な手術、院内研修…

看護師はなぜ残業が多い?原因や働き方改革の課題を詳しく解説

  

編集部より

残業の多さは、看護師の心身に大きな負担をかけます。公益社団法人日本看護協会が公表している、2021年度の「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」の結果によると、就業している求職者が退職したい理由として、24歳以下では「勤務時間が長い・超過勤務が多い」との回答が最も多く、17.0%に上っていました。

この記事では、医療機関における看護師の残業の現状をご紹介します。看護師の働き方改革やワーク・ライフ・バランスの状況のほか、看護師の残業をなくすために医療機関ができることについても見ていきましょう。

                

出典:公益社団法人日本看護協会「2021年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析

編集/メディカルサポネット編集部

 

 

日本の看護師の多くは残業をしいられている標達成に向けた看護ケアを実践する組織運営業務のひとつ

日本看護協会が行った「2021年 看護職員実態調査」によると、「超過勤務をした」と答えた看護師は全体の78.4%で、平均は月17.4時間でした。一方、申告した超過勤務時間の合計は平均8.7時間となっており、申告した時間と実際の勤務時間にずれがあります。

看護師の超過勤務は常態化しており、サービス残業が多い実態がうかがえます。

 

出典:公益社団法人日本看護協会「2021年看護職員実態調査

  

残業があるかどうかは病院、所属している科、部署によって異なる

同調査では、19.8%は「超過勤務なし」と答えていることからもわかるように、すべての看護師が残業をしているわけではありません。残業があるかどうかやその時間は、医療機関の規模や緊急入院が多いかといった特性、担当している診療科といった、職場環境によって大きく異なるといえるでしょう。

 

一般的に、地域の重症患者が搬送されることが多い基幹病院や救急搬送が多い総合病院は、残業が多くなる傾向があります。また、患者の病状が変わりやすい循環器科、手術の数が多い整形外科、出産への対応が必要な産婦人科などは、どうしても残業が多くなりがちです。

 

 

看護師の残業が多い原因

看護師の残業を減らすための取り組みをしている病院や施設が増えているとはいえ、どうしていまだに看護師の残業は多くなってしまうのでしょうか。その原因をあらためて見てみましょう。

 

看護師の慢性的な人員不足のため

医療現場の中でも看護師は、慢性的な人手不足にあります。その程度が深刻なほど、看護師1人あたりが抱える患者数や業務量が増え、業務時間内に業務を終わらせることが困難に。残業の大きな原因のひとつといえます。

 

2交代制や3交代制勤務の引き継ぎのため

入院施設がある病院の看護師は、2交代制や3交代制での勤務となりますが、交代の際は引き継ぎが必要です。この引き継ぎを、始業時間前(前残業)や就業時間後(残業)に行うことが慣習化している医療機関もあります。この場合、看護師自身では不満を訴えづらいのが現状です。

 

看護記録など書類の作成・入力業務のため

看護師は患者に対する看護と並行して、看護記録のチェックや記入、看護計画の作成、研修レポートの作成など、数多くの書類業務も行っています。

患者対応に長い時間が必要だったり、書類の量が多すぎたりすると書類の作成や入力が勤務時間内に終わらず、結果的に残業に。中には、書類業務は勤務時間外に行うことを前提とする医療機関もあります。

 

急患・ナースコールの対応のため

救急対応のある病院の場合、診療時間外でも患者が飛び込んできたら対応が必要です。緊急入院となれば、患者や家族への対応、ヒアリングなどの業務が発生します。

また、ナースコールが鳴ったときにナースセンターにいれば、たとえ勤務時間外であっても対応しなければなりません。

 

手術の準備・サポートなどのため

想定外の緊急手術が発生した場合、手術準備や患者のサポートも看護師の仕事です。手術が終わるまでは、通常の業務を超えた残業となります。

 

院内研修・勉強会のため

院内での研修や勉強会は、勤務時間外に行われることが多く、その場合は残業して出席することになります。新人研修が時間外で行われる場合も少なくありません。実質強制参加にもかかわらず、自主参加とみなされて残業代が出ていないケースもあります。

 

 

看護師の働き方改革とは?

国の働き方改革を受けて、日本看護協会では、看護における働き方改革の目標を「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」と設定。「勤務間インターバルの確保」「可視化されていない労働外労働を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り込む」などの具体的な事項を取りまとめて、継続が可能な看護職の働き方の提案を行っています。

 

国が進める「働き方改革」に合わせて医療現場の勤務環境を整えていくには、このような声を取り入れ、看護師の勤務環境整備を進めることが重要です。

また、看護師が多様な働き方を実現するには、「ワーク・ライフ・バランス」の実現が大切だといわれています。看護師の「ワーク・ライフ・バランス」について具体的に見てみましょう。

       

看護師のワーク・ライフ・バランス

日本看護協会は、「看護職も生活者であり、その個人としての生活が成り立たなければ看護職の継続就労や、ひいては専門性の向上は望めません」として、看護職のワーク・ライフ・バランスの重要性を提言。ワーク・ライフ・バランス実現のための医療機関・施設向け手引き書として、「看護職のワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック」を発行するほか、各都道府県の看護協会と連携しての活動などを進めています。

 

看護師の仕事と生活の両方が充実すれば、仕事のへのモチベーションアップや心身疲労・ストレスの軽減につながり、離職・病気休暇などの減少や医療サービス利用者へのケアの質向上といった効果が期待できます。

 

 

看護師の残業を減らすための工夫

看護師の残業を減らすのは、看護師の働き方改革を進め、ワーク・ライフ・バランスを実現する上で非常に重要なポイントといえます。残業代を確実に支給してサービス残業を出さないことももちろん大切ですが、若手の看護師の離職を防ぐためにも、そもそも残業がない職場づくりが先決だからです。

続いては、残業のない魅力ある職場づくりのために、組織側ができることをご紹介します。

    

人員の拡充・職場環境の改善

人手不足で1人の業務負担が重すぎる場合は、人材採用を加速するとともに、スタッフ間のコミュニケーションの改善も重要です。看護師間のコミュニケーションが円滑になれば業務でも連携しやすくなり、それぞれの負担軽減につながるからです。

さらには、良好な人間関係のある職場であれば、離職防止・応募者増加効果も期待できます。

 

業務改善のためのデジタル化、およびシステムの導入

書類関係の残業を減らすには、データ管理や電子カルテ、音声入力システムなどの導入が有効です。例えば、看護記録の音声入力が可能になれば、ちょっとした隙間時間にも手軽に記録することができ、入力作業のための残業を解消できます。

 

業務分担を積極的に行う

入院の受付業務やオリエンテーションは事務職員、リハビリ時の看護補助はリハビリ職という風に、組織内でもさまざまな職種のスタッフと業務分担を行うことで、看護師の業務負担を減らせます。また、看護助手や准看護師を採用し、効果的に連携することも、看護師の負担軽減に役立ちます。

 

研修制度の見直し、学習環境の整備

研修・教育時間は、事実上参加が必須であれば勤務時間としての扱いが必要になります。医療技術の進歩の速さもあり、出産や育児、介護などで休職した看護師の復帰を支えるためにも、最新の技術・知識を得られる研修制度は重要です。

研修制度や学習環境を整えることは、看護の質を高め、魅力ある職場づくりを支えます。研修の時間も勤務時間として扱うなど、研修制度の整備、見直しを進めましょう。

 

 

看護師の残業ゼロの職場づくりにメディカルサポネットの活用を

看護師は、職場にもよりますが全体として残業が多く、サービス残業をしいられている職場も少なくないのが現状です。誰もが働きやすく、長く勤められる職場を作るには、残業を減らすことが重要であり、それには管理者の意識改革や業務を効率化するシステムの導入が欠かせません。

メディカルサポネットは、業務効率化に役立つ情報を発信しており、看護師が満足できる職場づくりをサポートしています。看護師の残業削減に取り組むなら、ぜひメディカルサポネットをご利用ください。

 

医療業界の人手不足についてはこちらの記事もご覧ください。

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