2021.11.30
5

適性検査で採用のミスマッチを未然に防ぐ

医療機関が抱える課題/適性検査を行うメリット/SPIとの違い…全てお答えします!
日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング 代理店支援チーム 竹沢 公規

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング 代理店支援チーム 

 

  

編集部より

昨今、医療関係者の退職理由として多いのが、人間関係と労働環境です。医療機関の事業者・人事担当者様は応募者を資格や年齢、経験値など条件だけでなく、「自院・自社の仕事への適性の有無の確認」という視点で、応募者を客観的に面接・評価することはできておりますでしょうか。履歴書や職務経歴書、短時間の面接で応募者個人のパーソナリティを測ることは難しいと考えます。この記事では、適性検査などのアセスメントサービスを用いて採用や異動、選抜など様々な局面における意思決定を支援する、日本エス・エイチ・エル株式会社の竹沢公規さんにお話を伺い、アセスメントサービス活用のメリットやポイントについてご紹介いたします。

 

取材・編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

 

 

SHLとは?

――はじめに、SHL社が提供するサービスについて教えて下さい。

 
「SHL」はイギリス発祥の会社で、人事アセスメント専門の会社です。具体的には、①適性検査に代表される「アセスメントサービス」
②各社の採用や登用時などにおける人材要件作成などの「コンサルティングサービス」、③各種アセスメントサービスを効果的に活用するための「トレーニングサービス」という3つの柱で各企業様の採用や異動、選抜などさまざまな局面における意思決定を支援しております。各サービスはイギリスで研究開発され、全世界で約40弱の言語で共通のサービス提供をしております。日本エス・エイチ・エルは、イギリス本社との間で日本国内における販売ライセンス契約を締結し、現在は国内7,800社を超える企業様にお取引いただいております。

 

――就職試験の代表的なテストとして「SPIテスト」というものがありますが

 SHLの適性検査との違いはどこにあるのでしょうか。

 

「能力検査」と「性格検査」で構成されている点は似ていますが、内容・コンセプトが異なります。能力検査については、SHLは論理的思考力や頭の回転の速さなどの「知的能力」を測定しています。学校で学ぶ知識・学力ではなく、あらゆる仕事を進める上で共通に求められる能力を測定している点がポイントです。性格検査については、良し悪しではなく、受検者の強みとなる行動/弱みとなる行動を測定し、各社の求める人物像との合致度を判断することができる内容となっています。SPIテスト含めた他社様との違いを説明することはとても難しいのですが、SHLは「仕事とのマッチング」を前提に開発されている一方、他社様のテストは「終身雇用・年功序列・学歴採用」といった日本独自の雇用環境にマッチする人材を見極めるために開発されていたり、適性検査の開発者が掲げる「ビジネス界ではこういった人材が求められている」といったモデルが存在し、それに対する合致度を測定しているものなどが多いかもしれません。 

 

SHLの適性検査は目先の採用でなく
将来活躍できる人材を見極める

 ――一般企業と医療系企業で適性検査の利用方法に違いはありますか。

 

一般の企業と医療系企業で適性検査の利用方法に大きな違いはないと考えています。あえて申し上げれば、医療系企業の方がより積極的に利用できるのではないかと考えています。その理由は、一般企業の多くはいまだに「総合職」としての採用が多く、どこに配属されるか確定しない前提での採用となるため、採用基準が「配属人数が多い部署の要件」「全社的に若手社員に求めるもの」など最大公約数のような設定となります。一方、医療系の企業では「職種別採用」が多く、「病院の中でこういう仕事を行っていただきます「介護士資格を持ち、この仕事をやるためにこういった能力が必要です」など、各職務に必要な資格や能力が明確なため、自社の求める人物像に対する合致度を適性検査でより明確に測定できると考えられます。また採用時や入社後に再受検した結果を活用することで、受検者の将来のマネジメント職としてのポテンシャルを測定も可能です。上司や同僚からの「行動評価」は「あくまで現在の職務を前提とした評価」のため、職務で求められていない能力については正確に評価することができません。しかし、SHLの適性検査は受検者に対する網羅的な情報を提供できるため、経験や勘に頼らない公平な判断材料としてご活用いただくことが可能です。

 

――「人材の定着で悩んでいる」と医療機関の事業者・人事担当者様よりお話を伺います
 SHLの適性検査は導入前だけでなく導入後の定着や選抜するためにも使えるツールなのでしょうか。

 

そうですね、定着に関しては「仕事についていけない」「人間関係」「職場環境」「報酬」などさまざまな要因が影響します。誰かが退職してしまった際、ついつい「退職した本人のせい」にしてしまいがちですが、実際には本人に非がないケースも多くありますので、まずは退職に影響する要因を整理する事が重要です。その上で、「能力がなく成果が出ずに退職」してしまうのは適性の問題であるため、適性検査や面接などを工夫する事で回避する事が期待できます。適性検査というと、どうしても「足きりするための道具」というイメージが強いのですが、実は履歴書や職務経歴書だけでは分からない部分の情報も豊富に提供されるため、是非、足切り以外の場面でも積極的に活用いただきたいと考えております。 

 

医療機関が抱える課題

――医療関係者の退職理由として多いのが、人間関係と労働環境です。
 SHLを導入することでクリアにできるものでしょうか。

 

先ほど申し上げたように、「仕事はできるけど人間関係や労働環境が原因で退職する」という場合は、本人ではなく組織やマネジメントなどの部分に問題がある可能性があります。根本的な解決を図るには、組織やマネジメント部分の改善が欠かせませんが、SHLの適性検査では、受検者のストレス要因となるものを測定することで、自社の組織・マネジメントに対して適応できるかどうかの予測も可能です。具体的には、ストレスをうまく解消できるかどうかという「ストレス耐性(ストレスへの強さ)」だけでなく、どのような要因にストレスを感じやすいかという「ストレス要因」を予測します。「チームで働く事にストレスを感じるかどうか」「ハードスケジュールにストレスを感じるかどうか」など、全部で21項目のストレス要因が出力されますので、自社の組織や採用予定の職務環境とのマッチングを図ることが可能です。

 

――竹沢様は医療系職種における中途採用の問題はどこにあると考えていますか。

  

課題を抱えているクライアントの業態・組織の規模によっても異なりますが、医療機関では慢性的な人材不足が続いており、応募者自身のパーソナリティまで目を向けることができずに「資格を保持していれば採用する」というケースが多いのではないかなと感じています。そうすると、入社しても定着せずに退職してしまい、また採用…という悪循環になってしまいます。だからこそ、応募者を資格だけでなく、「自社の仕事への適性の有無の確認」という視点で応募者を客観的に評価する、そのために適性検査を活用するということが今後重要であると考えています。

 

 

適性検査を行なうメリットとは?

――客観的にその人を判断…わかってはいるものの、なかなか難しいですよね。

 

適性検査や面接、履歴書などの評価手法が、その方の職務成果をどの程度予測できるか?」という「妥当性」に関するSHLの研究があります。その研究では、面接よりも、適性検査の方が妥当性が高いという結果となりました。面接は特定の内容について掘り下げて情報収集できるという利点がありますが「評価に主観が入りやすい」「時間が限られており、網羅的な情報収集が難しい」という側面があります。適性検査は受検者自らの「自己申告」という前提ではありますが、全ての受検者に対して同一の質問を与え、それに対する反応を統計処理しているため、網羅性が高く、客観的な情報が得られるという利点があります。しかし、「この会社に馴染める方かどうか?」「部下として一緒に働きたいか?」といった主観的な評価は適性検査では行うことができないため、面接の方が優れていると考えます。また、「応募者が話したいことをしっかりと話すことができた」といった納得感も面接で与えられます。面接と適性検査、それぞれの評価手法によってメリット・デメリットがありますので、それらをしっかりと理解した上で、皆様にとって好ましい選考プロセスを設計いただくと、新卒・中途問わず戦力・定着それぞれの観点でより良い判断が導かれると思います。

  

適性検査を行うタイミングはいつ?

――これまで多くのお話を伺ってきましたが選考時に適性検査を行う際的なタイミングはどこでしょうか。

  

少なくとも「面接選考の前」に実施し、結果を面接で活用していただきたいです。医師は問診をパッとしただけで「あなたはガンです」とは言わないですよね。事前の問診(≒履歴書、エントリーシート等)を踏まえ、然るべきレントゲンや血液検査(適性検査)を実施し、その結果を踏まえて問診(面接)で最終的なジャッジをするのと同じイメージです。面接前に適性検査の結果を持つことにより、受検者に対する網羅的な「仮説」を持つ事ができます。その仮説と履歴書やエントリーシートの情報が自社の求める人物像に対して合致するのかどうか、どの点を詳しく掘り下げるべきかのシナリオを事前に持つことで、意図的な面接の展開が可能となり、妥当性が向上します。

 

――これは入社後の適性検査活用のお話になりますが、

 現職員に対し人員配置を考える上で適性検査を実施するという場面でも効果的ですか。

 

適性検査は一般的に1年半~2年くらいが有効期限と考えられています。その間、仕事内容やポジションに変化がなければ、大きく結果が変化することは少ないとは思いますが、合理的で納得感のある判断をするためには、なるべく最新の情報を用いた方が良いと考えております。

 

SHLの強みはラインナップが豊富で的確なこと

――最後に、経営者・管理者、人事・採用担当者の皆様へ、メッセージをお願いします。

 

繰り返しとなりますが、当社の適性検査は知的能力とパーソナリティそれぞれ以下の点が特徴です。

<知的能力>

・論理的思考力などの職務遂行に関連する能力を測定

・知識の依存度が低いため、傾向と対策が立てづらい

 

<パーソナリティ>

・作為的回答がしづらい回答形式(4問2択強制選択方式)

・幅広い測定領域(全30の因子で受検者を測定)

・高い妥当性(国内500社以上における実証実績)

・専門用語を用いない分かりやすい結果帳票

 

残念ながら、適性検査を積極的に活用している事例はまだまだ少なく、「足切り道具」として留まっているケースが多いです。今回お話した通り、医療業界は職種別採用が多く、「求める人物像」が明確に定まっているケースが多いので、皆様が求める人物像に合致するか否かを適性検査の結果も踏まえてご判断いただくことで、資格とは別の側面で戦力化の期待値を評価する事ができると考えております。今回の記事を踏まえ是非、皆様の採用のあり方を見直すきっかけとなれば幸いです。

  

導入事例

A病院
導入目的 看護職員の定着や、適切な採用活動を行うために客観的なデータの必要を感じ他社のパーソナリティテストを導入し面接時に実施していた。しかし得られる情報が限られる点と、面接後に結果が出るので面接で活用できない点に不満を感じていた。

導入した際の適性検査着目尺度

状況適応力、問題解決力
導入施策 面接前にパーソナリティテストを受検していただき、面接時に気になる点を確認した。
併せて現在働いている看護職員のデータを収集し、分析も行った。
導入効果 データに基づき根拠を持って採用活動を行うことができた。
今後は管理職登用のシチュエーションでも検討したい。

 

B薬局
導入目的 面接前に応募者の知的能力やパーソナリティを確認したい。
テストの結果を個別にフィードバックし意欲形成の材料としても使いたい。

導入した際の適性検査着目尺度

知的能力(言語・計数)、チームワーク、プレッシャーへの耐力
導入施策 言語理解検査、計数理解検査、パーソナリティ検査の3つを含んだテストをWeb1次選考として設けた。また社内で応募者のデータを蓄積したものを用いた上でデータの見方講習会を開催した。
導入効果 インターンシップでも同様の活用をしつつ、優秀人材を惹きつけるためにも使っていきたい。

 

C社(社会福祉法人)
導入目的 応募者のストレス耐性を図りたい、突発的に発生したことへの対応力を図りたい

導入した際の適性検査着目尺度

コミュニケーション力、チームワーク形成力、プレッシャーへの耐力
導入施策 面接前にWEBでパーソナリティテストを実施し、面接時にストレス耐性についての記載もある受験帳票(テスト結果レポート)を用いた上で面接を行った。
導入効果 受検者が感じるストレス要素を詳細に確認することができた。
さらに面接で確認すべきことも事前に確認することができ面接の精度が上がった。

 

D社(社会福祉法人)
導入目的 現状のマネージャー層に不足している行動的要素を補うような人を採用したい。

導入した際の適性検査着目尺度

状況適応力(臨機応変に対応する力)
導入施策 現在の施設長クラスの職員、約60名にパーソナリティテストを受検していただき傾向を出した。
この分析結果から採用面接の際に見るべき項目(状況適応力)を基準として定めた。
導入効果 面接前に状況適応力についてフォーカスした採用基準を作成し、
面接へ臨んだことで客観的に人材を判断し採用することができた。
結果として以前より状況に合わせて臨機応変に対応できる人を採用することができた。

 

E社(高齢者介護総合福祉施設
導入目的 応募者のストレス耐性を図りたい、募集枠が多職種になるため配属のミスマッチが起きないようにしたい

導入した際の適性検査着目尺度

オーガナイズ能力(段取り良く物事を進める力)
導入施策 応募者にパーソナリティテストを受検していただき傾向を出した。
導入効果 当初の目的ではストレスやプレッシャーへの耐力が高いことが採用する上で重要と感じていたが、
テストの結果を確認し自社に合う人材はどのような人材なのかという点を客観的に捉え、
採用を行うことでミスマッチを防ぐことができた。

 

 

まとめ

昨今の採用を取り巻く環境を鑑みると、限られた応募者の中から、入職後に活躍する人材を見逃さずに採用することは今後、求められます。このためSHLの適性検査を導入しパーソナリティデータをもとに、コンピテンシーを見極めるという、科学的な面接を実施することが必要です。「採用して終わり」ではなく、採用してから職員を定着させるための手法として活用できることもわかりました。今回のインタビュー記事が、面接を科学的なものにするキッカケになりましたら幸いです。

 

 

 

 
 
日本エス・エイチ・エル株式会社

HRコンサルティング 代理店支援チーム
竹沢 公規(たけざわ まさのり)

 2002年日本エス・エイチ・エル(株)入社。入社以来、直販部門/販売代理店支援部門双方にてプレイヤー、マネージャーとしてあらゆる業界/職種における採用基準の設計や選考プロセスの設計・評価支援、および昇進・昇格、育成等に関する支援を多数実施。現在は、販売代理店部門のマネージャーとして東日本エリアの営業支援を行うと共に、販売代理店全体の営業施策を企画、実施している。

 

  

 

 

 

 

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP