2019.12.05
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人生に答えはない。正解はあなた自身が決めるもの

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】第3回

最新刊『引き寄せる脳 遠ざける脳—「幸せホルモン」を味方につける3つの法則』が話題の中野信子さん。
今回のコラムでは、脳科学者の見地から言及した「生きることの意味」についての一節を抜粋し、3回に分けてお届けしました。わたしたちは、永遠に答えの出ることのない「生きることの意味」を見出そうと苦悩しますが、中野さんは「生きることに意味はない」と語ります。
意味のない行為(生きること)ことをどう捉えればいいのか。そして、人生の意味をどう捉えるべきなのでしょうか。今回が3回シリーズの最終回です。
  
構成/岩川悟(slipstream) 写真/佐藤克秋

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 人生に答えはない。正解はあなた自身が決めるもの(第3回)

 

生きることに理由はない

わたしは、生き延びるということの意味を、もしかしたらほかの人よりも強く感じているのかもしれません。ありとあらゆる生物の根本原理は、「生き延びようとするためのシステム」であるという前提があります。ある一定の見方からすれば、「生きる」ということそのものが、ほとんど宗教のようなものに見えるのではないかと思うほどです。

 

現在の日本では、日常生活や生き方の基本として信仰や宗教的な規範が根づいているとはややいいにくい状況にあるでしょう。むしろ、規範として機能しているのは、世間の目、もっといえば「同調圧力」ではないでしょうか。いわば「人間関係教」とでもいうべきものが、かなり強力に意思決定を支配しているような状態にあると考えることができます。

 

そんな国に生まれたというのに、わたしは世間の空気や人間関係というものをあまりよく理解することができない子どもで、「もっとクリアでわかりやすい規範があればいいのに」とずっと思っていました。そんな状況にあって、科学というものは、依拠するに足る、どんな人に対しても平等に開かれた知的でフェアな基準だとわたしには思えたのです。

 

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 人生に答えはない。正解はあなた自身が決めるもの(第3回)画像1

 

科学は、どんな人にも反論したり、批判したりする権利があり、気が済むまで思うまま検証をすることが許されています。これが従来の宗教的規範とはまったく異なるところです。般的な宗教においては、いちど信仰を持つと、教義を批判することはほとんど許されません。なぜなら、それが“信仰”というものだからです。あたりまえですが、クリスチャンなのに、「三位一体はおかしい」などということは信仰の基本から外れてしまう行為となるでしょう。

 

でも、科学にはあらゆる意見や批判が許されています。たとえば、1993年に、子どもにモーツァルトを聴かせると頭が良くなるとする「モーツァルト効果」が発表されました。かつて話題になり、いまだに信じている人もたくさんいる主張です。しかし、その6年後には、「それはアーチファクトであり、誤りである」という反論の研究結果が発表されました。いまでは、世界中の研究者がモーツァルト効果を否定する見解を支持しています。

 

このように、科学には「反証可能性」が担保されているため、とてもフェアな世界であることが前提になっているのです。これこそ、わたしが科学的な考え方に信頼を置く理由になっています。

 

では、そんな科学的な考え方に依拠してわたしたちの生を見直してみると、いったい人はなんのために生きているのでしょうか? という疑問が出てきます。

  

実は、この問いには答えがないのです。

わたしたちは、ただ生きているだけ。

 

生きている理由を探そうと思っても、どこにもないのです。すべての生物が、生存するためにただ生きているということです。

 

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 人生に答えはない。正解はあなた自身が決めるもの(第3回)画像2

 

「それでは人間の生きる意味はどうなるの?」

「宗教とちがって科学には救いがないではないか」

 

そう思われる人もきっといるでしょう。

 

でも、理由がないということは、「どう捉えてもいい」ということなのです。どんな理由をつくっても、どれも間違いではない。誰も正解だとは保証してくれないけれど、自分ですべてを決めていいのです。

 

そして、それこそが科学の素晴らしいところだとわたしは思っています。

 

正解がない人生を好きなように生きる

とはいえ、なかには、「生きる意味はない」という事実に絶望を抱く人もいるのかもしれません。でも、論理的にはこう考えることが可能です。

 

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