2018.07.19
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過労死ラインが上限なら「救える患者も救えない」
~日医、医師の働き方改革に関する意見書を公表

メディカルサポネット 編集部からのコメント

日本医師会が医師の働き方に関する意見書を公開しました。医師の働き方改革で時間労働時間に上限を設けると、医師不足が慢性化している現在、地域医療が崩壊する恐れがあることから、時間外労働時間の「過労死ライン」の上限を超えた勤務を認めるよう求めています。医師の健康と患者の命について、さらなる話し合いが必要です。

 

日本医師会(日医)は11日、医師の働き方について「自己研さんの在り方」や「宿日直の在り方」など重点分野12項目を盛り込んだ意見書を公表した。重点項目の一つの「時間外労働時間」の上限を設定する「医師の特別条項」を提言。松本吉郎常任理事は同日の定例記者会見で、長時間労働をする医師が多い実態を踏まえて、特別条項で設定する上限を「過労死ライン」で設定すると、医師不足などで地域医療が崩壊する危険性もあり、「命を救える患者さんも救えない状況になる」と指摘。「医師の特別条項」の上限を超えることも「特例」として認めるべきだとの認識を示した。【越浦麻美】

 

意見書について説明する松本常任理事(11日、日医会館)

 

意見書は、日医の「医師の働き方検討委員会」が4月にまとめた答申がベースで、厚生労働省の検討会などに提言するため、「医師の働き方改革検討会議」が取りまとめた。

 

「医師の特別条項」は検討委員会が答申の中で提言していた。労働時間が過度に増加しないように「歯止め」を掛けるため、「時間外労働時間」に医師独自の上限を定め、これも超過しなければならない場合は第三者機関の承認を得た上で、「医師の特別条項の『特例』」で対応する。検討会議の意見書でもこれを踏襲している。

 

「医師の特別条項」の「時間外労働時間」の上限は、「1カ月間で100時間」または「2―6カ月間の時間外労働時間の平均が月80時間以上」だった場合などに発症リスクが高まる脳・心臓疾患の労災認定基準、いわゆる「過労死ライン」を基に設定。「特別条項の『特例』」は、2カ月連続でおおむね120時間以上の時間外労働をした場合などに「強い心理的負荷」が掛かっているとされる精神障害の労災認定基準などを手掛かりに、今後、検討するとしている。

 

松本常任理事は、医師の働き方の実態を踏まえると、「過労死ライン」での上限設定は医療現場が努力しても対応が難しく、医師不足などで地域医療が崩壊する恐れを指摘した。その上で、「命を救える患者さんも救えない状況になる」と訴え、上限を超えることを「特例」として認めるべきだとの認識を示した。意見書では具体的な上限を提言していないが、医師の健康への配慮が必要になる一方で、上限が高過ぎると働き方改革の取り組みが進まなくなることも考えられるため、松本常任理事は、「慎重な議論が必要だ」と述べた。

    

 出典:医療介護CBニュース

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