メディカルサポネット 編集部からのコメント人工呼吸器トラブルの考え方を身につけて、一人でトラブルシューティングできる考え方が身につく『人工呼吸器トラブルシューティングセミナー』が刊行されました。 (1章)各論として臨床現場で遭遇するさまざまなトラブルを知り、それと併せて、背景となる人工呼吸器のしくみについて学ぶ (2章)各モードでのトラブル総論として,それぞれのモードにおけるトラブルシューティングを, 現場でどのように考え、どう実践するか整理 (3章)VCVやPCVとはトラブルでの考え方が異なるところもある PRVCでのトラブル の3部構成です。初心者から熟練者まで使いやすいよう、グラフィックが多用、また、平易な文章で解説されているので、学習者から教育者まで、人工呼吸器のトラブルシューティングに関する情報のほとんどが習得できる一冊です。 |
人工呼吸器は救急や集中治療など重症患者を扱うところは当然であるが、一般病棟であっても管理する必要があり、在宅などでも関わらざるをえない場合がある。しかし、その機種や設定の多さのために、独学で勉強しても十分に理解できなくて挫折する。僕自身も集中治療に専従してはじめの15年ぐらいはまったく理解できていなかった。世間では人工呼吸器に関する多くの解説書が売り出されているので、書店や文献を探したがわかりやすいものはなかった。最近ではさらに多くの本、セミナー、Webなどの資料が溢れている。
我々も10年前から米国集中治療医学会の重症患者管理を教えるFCCSの目玉として人工呼吸器のハンズオンを位置づけている。特に受講生のニーズも高く、満足度も高いセッションである。その中で骨子となっているのは人工呼吸器の基本的な理解とトラブルシューティングである。トラブルシューティングを理解するためには人工呼吸器の基本の理解が必要である。これらを理解するには呼吸生理の基礎から学ばねばならず、忙しい臨床の合間で可能とは言い難い。
本書はセミナーを開催し多くの解説書を書かれている著者だけあって、そのあたりに細やかな配慮がみられる。単にトラブルシューティングをいくつか上げて1対1対応の原因と処置を書いているのではなく、その奥にある人工呼吸器の基本的な考え方、呼吸生理にまで踏み込んで解説している。講義のような会話形式で進められているので、読みやすく理解も早い。さらに新しい試みとして、まず各論がありその後に総論がある点が特記すべきだと思う。トラブルシューティングという入り口から人工呼吸器の基礎を解説しようとしている著者の工夫が素晴らしい。気がつけば人工呼吸器の基本まで理解できるように工夫されている。
人工呼吸器の基礎から学べる点で初学者だけでなくベテランまで人工呼吸に関わるすべての医療従事者にとって得られる物がある一冊だと思う。
安宅一晃 (奈良県総合医療センター集中治療部部長/奈良県立病院機構医療専門職教育研修センター所長)
著: 田中竜馬(Intermountain LDS Hospital 呼吸器内科・集中治療科)
出典:Web医事新報