2019.05.24
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認知症対策、誤解生まない「予防」施策を
当事者4団体が政府方針踏まえ共同提言

メディカルサポネット 編集部からのコメント

5月16日に認知症施策推進のための有識者会議(第3回)が開催され、70代に占める認知症の人の割合を、2025年までに6%減らすとの数値目標が公表されたのを受け、5月22日に認知症関係当事者・支援者連絡会議は、「認知症」-ともに生きるやさしい社会を実現するための共同提言を発表しました現役世代の減少や介護人材の不足、社会保障費の抑制に対応するために認知症の予防促進を勧める国に対し、「認知は本人の努力次第」という誤解を生むことになりかねないと懸念し、認知症の理解、認知症の人や家族に対する理解や保障を求めています。

 

「予防」に力点を置いた国の認知症施策について、当事者らを含めた国民の不安や偏見をあおるのではなく、診断されてからの症状の進行を遅らせるなど、二次予防に主眼を置いた施策を展開してほしい―。認知症の当事者や家族、支援者で組織する4団体でつくる認知症関係当事者・支援者連絡会議の代表者らが22日に開いた記者会見で、こうした訴えを口にした。家族介護者、若年性認知症の当事者や、現在の介護認定調査の指標では評価が困難なタイプの認知症の当事者にも支援が行き渡る社会保障・介護保険制度の充実などを求める共同提言を発表した。【吉木ちひろ】

 

会見で提言内容について説明する当事者団体代表者(22日、厚労省)

 

 4団体は、認知症の人と家族の会、全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会、男性介護者と支援者の全国ネットワーク、レビー小体型認知症サポートネットワークで、いずれも全国規模での活動を10年以上重ねてきた。

 

 提言は、政府や医療・介護の専門職、企業などに対するもの。4団体の代表者らは、厚生労働省の大島一博老健局長に提言内容について22日に説明している。

 

 医師に対しては、専門医ではない地域の開業医などの間では認知症のタイプごとの症状や特徴の違いなどの知識が「不十分」な部分があるほか、多くの診療科で認知症の診断や治療が実施されることに対して認知症当事者や家族の戸惑いが大きいとして、複数医学会の協働の元で認知症専門医制度をつくることなどを求めた。このほか、産業医などの活用で認知症と診断された従業員の労働能力の適正評価を通じた雇用継続の支援や、認知症の人が意図に反して事件や事故を起こした際の公的支援の仕組みなど、認知症対応について網羅的な対応を求めるものになっている。

 

 ケアマネジャーとして認知症当事者や家族と接するレビー小体型認知症サポートネットワークの奥山惠理子氏は、レビー小体型認知症と前頭側頭型認知症の初期段階について「記憶がしっかりしている」と説明。介護認定調査の項目では、こうした特性を踏まえたニーズが拾えないがために、介護保険サービスが使える段階まで症状が進むまで支援が行き届かないといった、現行の仕組みの問題点を指摘した。また、介護保険制度について「早期で介入し、進行を抑制するための効果を出すためにも使うことができる」と言及した。

 

 財務省の社会保障費抑制案などにおいて、介護給付の範囲から要介護1、2の被保険者に対する一部サービスを外すことが議題に上っていることについては、複数の代表者が「できるだけ本人の力を生かしていく社会をつくるという方向性とは真逆ではないか」「(サービスをうまく活用することで)認知症の人を減らしていくという場合には逆効果になるのではないか」などと見解を述べた。

 

    

出典:医療介護CBニュース

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