2019.01.11
5

【書評】在宅医療マネジメントQ&A

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2010年に超高齢者社会を迎えた日本。高齢者の割合は増え続け、2025年には約30%が65歳以上に達する見込みです。現在、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域で高齢者を支える「地域包括ケアシステム」が注目されています。しかし、在宅医療に取り組む医師の数は未だ少ないのが現状です。このたび刊行された『在宅医療マネジメントQ&A』は、在宅医療に関する実用的な情報が310問のQ&A方式で構成されています。

 

 

 

今後75歳以上人口が急増し超高齢社会を迎える中で、我が国の医療政策はこれまでの医療システムだけでの対応には限界があり、それに地域包括ケアシステムが連携した形の「治し支える医療」を目指す方向に大転換しつつある。その成否を担うのが在宅医療である。

平成30年度から在宅医療介護連携推進事業が全市町村で施行されているが、専門医中心の我が国医療界において在宅医療に取り組む医師の数は未だ少なく、事業を担当する市町村職員にとっても新しい分野であり、まずは体系的かつ実用的な情報が不可欠である。それに答えようとするのが、本書である。在宅医療の推進のための代表的な組織である日本在宅ケアアライアンスの関係者の編集協力の下で、2人の代表的な在宅医療の実践者が監修し、在宅医療に取り組む上で必要となる広範な情報を310問のQ&A方式の検索しやすい形で掲載している。

「わが国の在宅医療」「在宅医療の施設運営・経営」「マネジメントの実際」「在宅における疾病管理」「終末期医療」「様々な療養環境・条件における在宅医療」「処遇困難事例」「各種指示書・書類の書き方のコツとピットフォール」「在宅医療のスキルアップ」「在宅ケアの社会学」という章立てで、地域包括ケア、多職種協働などの最新の動きにも留意しつつ、実務で突き当たるあらゆる項目が体系的に網羅され、添付された電子版で書籍を持ち歩かずに利用することもできる。

診療所や病院の医師でない者、例えば医療介護系の様々な専門職、行政担当者、研究者、学生なども手に取ることを想定しており、図表や写真を巧みに組み合わせ、要点を押さえた実用的な情報が簡潔に述べられている。特に、本書の題名からも見て取れるように、医療経営関係者にとって疾病管理・運営・法的問題まですべてがわかる実践的でリアルな内容となっている。

広く在宅医療に関わっている方々が手元に置かれ、活用されることをお勧めしたい。

  

執筆:辻 哲夫 (東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP