2019.01.13
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【他科への手紙】循環器内科→感染症科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

診察にあたり、他科の先生に検査や診断を仰ぐことはストレスと存じます。いくつかの診断方法を組み合わせることで診断可能な疾患もありますが、一方で、表面的には多領域にオーバーラップする疾患もあります。今後は診断・治療・患者の希望も合わせた、マルチモダリティが求められることを聖路加国際病院の水野先生は提言されています。

 

感染症科の先生方にはいつも大変お世話になっております。特に循環器領域においては、感染性心内膜炎などの治療に際して、先生方の治療方針に対する忍耐強く熱い想いにより、患者さんがより良い方向に向かうことが多いと感じています。

感染症科の先生に一番ストレスなのは、経食道心エコー(TEE)を循環器内科に依頼しなければいけないことかもしれません。ただ、以前よりガイドラインにもあるように、経胸壁心エコーで診断がつくようなものをあえてTEEを施行する必要はないということで、最近はなんでもTEEという流れではなくなってきていると思います。さらに最近の画像検査の質向上により、他の循環器疾患でもいくつかの診断方法を組み合わせることが多くなっているのと同様に、TEE以外にもSPECTや4D-CT、MRIなどいくつかのモダリティを組み合わせながら、感染性心内膜炎を診断するような方向性になってきているようにも感じます。

もちろん人工弁感染疑いの場合など、TEEと手術はセットであるという既定路線は揺るがない部分があるのですが、診断のみではなく、治療も含めて患者の希望を含めるといくつものオプションを一緒に考えなければいけない時代が来たように感じます。感染性心内膜炎は多領域にわたりますので、ぜひ今後とも共同しての治療が継続できればと思います。

 

一緒に考えるといえば、さらに悩み深い重症下肢虚血の概念があるかと思います。これは臨床的な概念で、感染症科に入院すれば深部組織感染症、皮膚科で入院すれば表皮感染症、糖尿病科では足壊疽、一部痛風といったように、表面的にはかなり多領域にオーバーラップする疾患概念です。

爪に黒色の点があるような軽症から潰瘍といった様々なものを含むすべての表現型を循環器内科では血流を加味することで、「重症下肢虚血かどうか?」という観点で拝見します。感染症科の先生が感染性心内膜炎においてJaneway結節を探すときと同じように、下肢を見て、触って、検査して、あるポイントを見つければ高らかに「これは重症下肢虚血だ!」と雄たけびを上げる形となります。得てして、アドヒアランスが悪い糖尿病患者などに多いため、我々医療従事者と患者の距離感が遠いときも多いと感じます。そのようなときこそ我々が手を取り合うときかと思います。

たとえば、血行再建と感染症治療のタイミングが非常に悩ましいことが多いです。血行再建術で逆に創部が一時的に増悪することすら多々経験します。血流が先か感染症治療が先か、こんな基本的なことすら明確な答えがありません。ぜひ一緒に苦しい道のりを歩んでいければと考えています。

  

結び

感染性心内膜炎はマルチモダリティで評価する時代が来ています。表皮・深部組織感染では循環器内科は常に重症下肢虚血を疑います。

 

 執筆:水野 篤 (聖路加国際病院循環器内科)

 出典:Web医事新報

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