2018.10.20
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加齢黄斑変性に対する治療法の選択と新しい治療法の可能性

メディカルサポネット 編集部からのコメント

加齢黄斑変性の治療法として、抗VEGF薬の占める位置づけが大きくなっています。しかし、抗VEGF薬療法はコストが高いのがネックです。そのため、より長期作用が期待できる新規の抗VEGF薬や抗VEGF薬療法をサポートする薬剤の開発が進行中です。

 

加齢黄斑変性に対して,現在は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体注射,光線力学療法などが中心に行われていますが,加齢黄斑変性に対する治療法をどのような検査結果に基づき,どのように選択されているのか,また将来的な新しい治療法の可能性について,琉球大学・古泉英貴先生のご教示をお願いします。

【質問者】

渡辺彰英 京都府立医科大学眼科学教室

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【回答】

【コストを下げるべく,より長期作用が期待できる新規の抗VEGF薬の開発が進行中】

 

加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)の治療については,現状では前駆病変や網脈絡膜萎縮が本態である萎縮型AMDは有効な治療が存在しないため,脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)を有する滲出型AMDが対象となります。

 

手順としては,検眼鏡所見,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT),蛍光眼底造影などの検査結果に基づきCNVの位置の特定を行い,さらにCNVの形態により,典型AMD,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV),網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)の3つのサブタイプに分類を行います。

 

2012年に厚生労働省研究班が作成したガイドラインでは,最も頻度の高い中心窩下CNVの治療においては,前述のサブタイプにより推奨治療が定められています。具体的には典型AMDには,抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬単独療法,PCVは,視力により推奨治療が異なり,視力0.5以下の症例では光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)単独またはPDT+抗VEGF薬併用療法,視力0.6以上の症例では抗VEGF薬単独療法を考慮します。RAPには,PDT+抗VEGF薬併用療法を行いますが,視力良好眼では抗VEGF薬単独療法も考慮してよいとされています。

 

しかし,このガイドライン公表後,新規の抗VEGF薬も登場し,以前よりも抗VEGF薬の占める位置づけが大きくなっていると言えます。抗VEGF薬療法の問題点は高額なコストであり,ほとんどの症例で反復投与が必要なことから,医療経済的にも問題があります。そのような観点から,より長期作用が期待できる新規の抗VEGF薬や抗VEGF薬療法をサポートする薬剤の開発が進行中です。

 

【回答者】

古泉英貴 琉球大学大学院医学研究科眼科学講座教授

 

執筆:

渡辺彰英 京都府立医科大学眼科学教室

古泉英貴 琉球大学大学院医学研究科眼科学講座教授

 

 出典:Web医事新報

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