2018.12.16
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追加接種における3種混合と不活化ポリオ,4種混合ワクチンの選択は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

4種混合ワクチンは定期接種として生後3ヶ月から90ヶ月(7歳半まで)の間に合計4回の接種が行われます(大半が2歳までに、4回接種が完了)。一方、3種混合ワクチン+不活化ポリオを選択すると、就学までに合計6回の接種が行われます。免疫効果に関しては、3種混合ワクチンおよび不活化ポリオワクチンの同時接種と4種混合ワクチンの接種とでほぼ同等とされていますが、日本小児科学会は、3種混合ワクチン+不活化ポリオを選択するスケジュールを推奨しています。

 

日本小児科学会は2018年8月から,就学前の麻疹風疹ワクチン接種の際に,学童期以降の百日咳とポリオに対する免疫を維持するために,3種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンの追加接種を推奨しました。この接種は任意接種のため全額自己負担となります。
看護師の母親より,「3種混合と不活化ポリオを別々に接種すると,4種混合ワクチン1回よりも金額がはるかに高くなる。任意接種なので保護者が4種混合ワクチンを選択してはいけないのか?」と尋ねられました。どう答えればよいか,教えて下さい。帝京大学医学部附属溝口病院・渡辺 博先生にご回答をお願いします。

【質問者】

横井茂夫 横井こどもクリニック院長

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【回答】

【有害事象への補償の対象から除外されないよう,別々に接種することが推奨される】

 

現在,わが国で一般に使用されている3種混合ワクチン,4種混合ワクチンの中で,1期追加接種終了後の追加接種について添付文書の中で記載されているのは,阪大微研製造の3種混合ワクチン「トリビック®」のみです。トリビック®の添付文書では,「用法及び用量」の項の「用法及び用量に関連する接種上の注意」“1.接種対象者・接種時期”において「本剤を第1期の予防接種に使用する場合,生後3月から90月までの間にある者に行うが,初回免疫については,標準として生後3月から12月までの者に,追加免疫については,標準として初回免疫終了後12か月から18か月を経過した者に接種する。なお,被接種者が保育所,幼稚園等の集団生活に入る場合には,その前に接種を完了することが望ましい」と,通常の第1期接種および第1期追加接種での使用に関して述べられた後,「以後の小児への追加免疫においては,標準として11歳以上13歳未満の者に0.5mLを1回接種すること。また,成人への追加免疫は,通常,1回0.5mLを接種すること」と,第1期接種以後の追加接種への使用についても解説されています。

 

しかし4種混合ワクチンにおいては,国内で流通している3社いずれの製品においてもこの記載に相当する部分では「本剤の接種は,生後3か月から90か月までの間にある者に行うが,沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチンと同様に,初回免疫については,標準として生後3か月から12か月までの者に3~8週間の間隔で,追加免疫については,標準として初回免疫終了後12か月から18か月を経過した者に接種する。なお,被接種者が保育所,幼稚園等の集団生活に入る場合には,その前に接種を完了することが望ましい」と,通常の第1期接種および第1期追加接種に関しては述べられていますが,第1期接種以後の追加接種への使用に関しては述べられていません。

 

したがって,現在の4種混合ワクチンは第1期追加接種以後の追加接種に関しては接種対象として設定されていません。このワクチンで接種に伴う補償を伴うような有害事象が発生することはきわめて稀なことと思われます。しかし,仮に発生した場合には,ワクチンの対象外への接種ということで補償の対象から除外される可能性があり,そのような事態を避けるために質問文にあるようにわざわざ3種混合ワクチンと不活化ポリオワクチン2本の同時接種が推奨されているものと考えられます。なお追加接種後の免疫効果に関しては,3種混合ワクチンおよび不活化ポリオワクチンの同時接種と4種混合ワクチンの接種とでほぼ同等と予想されます。

 

【回答者】

渡辺 博 帝京大学医学部附属溝口病院小児科教授

 

執筆:

横井茂夫 横井こどもクリニック院長

渡辺 博 帝京大学医学部附属溝口病院小児科教授

 

 

 出典:Web医事新報

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