2018.12.17
3

30年ぶりの大改訂のポイントと国内適用の見通し【国際疾病分類ICD-11】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

6月18日に世界保健機関(WHO)が、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)を公表しましたが、11月30日に日・WHOフォーラム(WHO-Japan Forum) 2018~ICD-11・ICF大活用時代の扉を開く~が開催されました。2022年の発効を目指して、準備が進められています。

 

世界保健機関(WHO)は6月、約30年ぶりの大改訂を施した国際疾病分類第11版(ICD-11)を公表した。195月の世界保健総会での承認を待ち、国内導入が進められる。ICD-11公表を記念した厚生労働省主催のフォーラムがこのほど都内で開かれ、WHO担当官や改訂に関わった専門家が改訂の要諦や今後の見通しを語った。

11月30日のフォーラムで講演したWHOのロバート・ヤコブ氏(国際分類・用語及び標準化部門長)らによると、ICD-11の特徴としては、①世界各国の専門家を中心に検討が重ねられ最新知見が反映された、②死因・疾病統計に加え、臨床・研究の現場でも利用しやすい多様な病態を記述できるコード体系となった、③インターネットベースのツールになり、WHOからウェブサイトを介して分類提供などがなされる、④分類項目の説明、索引用語の追加など、疾患概念を含めた情報体系となった―といった点がある。ウェブサイトやツールについて、ヤコブ氏は「iPhoneやパソコンを使っている人ならば簡単に使いこなせる」と述べ、利便性の高さを強調した。

■免疫疾患、睡眠障害、漢方医学などが新設・独立

ICD-11は全26章と追補的な2部で構成される()。

新設された「免疫系の疾患」(4章)には、免疫不全、臓器非特異的全身性疾患(全身性エリテマトーデス等)、自己炎症性疾患(ベーチェット病等)、好中球減少症、サルコイドーシス、胸腺の疾患などが含まれる。アレルギーも、生体における反応をよりよく理解できるとの観点からここに分類された。複数の章に分散していた不眠症、過眠症、睡眠関連呼吸障害などは、新設の「睡眠・覚醒障害」(7章)にまとめられた。「性保健健康関連の病態」(17章)には、性機能不全や性別不合(トランスジェンダー)が分類され、これらは精神障害として扱われなくなった。初めて伝統医学が取り入れられたことも大きなポイントで、漢方医学の概念に基づく疾病や「証」をコーディングできるようになった。

新設の章以外でも変更は数多い。脳卒中は循環器系の疾患ではなく神経系の疾患として捉えられるようになった。「内分泌、栄養又は代謝疾患」(5章)では、過栄養や低栄養に関する概念が最新知見を反映して更新された。「消化器系の疾患」(13章)では実臨床の視点から詳細化が進み、好酸球性胃炎、diversion colitis(空置腸管に生じる活動性慢性腸炎)などが追加されたほか、胃食道逆流症(GERD)など重要な消化器疾患には独自のカテゴリーが割り当てられた。

追補的な2部のうち、「生活機能評価に関する補助セクション」は健康に関連する生活機能のレベルを定量的に記述するためのもので、先進国を中心とする高齢化の進展を反映して導入された。また、「エクステンションコード」を使うことで、重症度、病因、解剖学的詳細、損傷や外因の状況、診断の状況などを記述できる。

■発効は2022年予定、厚労省「まずは邦訳」

ICD-11の発効は2022年の予定となっている。厚労省の森桂氏(政策統括官付参事官付国際分類情報管理室長)によると、国内適用の時期は世界保健総会(19年5月)での承認後1~2年となる見通しで、3万2000に上る分類名の邦訳を優先的に行い、統計法の告示改正手続きに取り掛かるという。改訂に向けた内科専門部会の共同議長を務めた三浦総一郎氏(国際医療福祉大大学院長)も、今改訂における日本の専門家の貢献の大きさを語った上で「なるべく早く和訳をまとめ、円滑な国内適用を進めたい」と意欲を示した。

ICD-11の特徴を説明するWHOのヤコブ氏

出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP