2018.12.12
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医師不足地域での勤務要件「対象拡大」が大勢
現在は「地域医療支援病院の一部」

メディカルサポネット 編集部からのコメント

「居住移転の自由」は憲法で認められています。医師が多い地域もあれば、医師が少ない地域も生まれます。とはいえ、どこに住んでも十分な医療を受けられる体制を行政は求められます。12月12日に第25回医師需給分科会が開催され、「医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度」について議論されました。

  

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会は12日、医師が少ない地域(医師少数区域など)での勤務経験を、一部の医療機関の管理者要件に組み込む新たな制度の枠組みを巡る議論をスタートさせ、2017年末に決めた「地域医療支援病院の一部」から、対象を拡大すべきだとの意見が大勢を占めた。この制度による医師の地域偏在解消に実効性を持たせるためで、対象拡大自体への反対意見はなかった。【松村秀士、兼松昭夫】

 

12日の分科会の様子(厚労省)

 

 分科会で議論するのは、各都道府県が指定する「医師少数区域」などで一定期間勤務した医師を、厚労相が認定する新たな制度(認定制度)の枠組み。7月に成立した改正医療法・医師法に伴って20年4月にスタートし、この制度の認定を受けることが、地域医療支援病院の一部の管理者になるための要件に加わる。

 

 厚労省は12日、医師少数区域などでの勤務期間や、認定を受けるのに必要な業務内容の案を提示。厚労相の認定を管理者要件にする対象の拡大は当初、論点に挙げなかったが、片峰茂座長(長崎大名誉教授)が「地域医療支援病院に限定すると実効性の観点から非常に問題がある」と指摘すると、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「(17年末の分科会では)インセンティブを働かせるなら、診療所を開設するための要件にも(厚労相の認定を)入れる必要があるという議論が出ていた」と述べた。

 

 今村聡構成員(日本医師会副会長)も「議論をすることは大変重要」だとの認識を示し、対象を拡大すること自体への反対意見はなかった。厚労省側も、対象拡大を巡る議論を「宿題と受け止めている」などと応じた。

 

 厚労省の「医療施設動態調査」(概数)によると、地域医療支援病院は18年9月末現在、全国に571カ所ある。分科会が17年末に決めた第2次中間取りまとめでは、そのうち医師派遣・環境整備機能を持つ病院に限り、厚労相の認定を管理者要件に加える方針を打ち出した。それに該当する地域医療支援病院がどれだけあるのかは厚労省も把握していない。

 

 分科会では、医師の偏在解消策を19年3月ごろ取りまとめることにしており、厚労省によると、認定制度もそこに書き込む。ただ、厚労相の認定を管理者要件に組み込む対象を拡大すべきかどうかは、その後も議論を継続させる可能性がある。

 

■業務内容に「診療時間外の急変対応」など

 

 12日の会合で厚労省は、厚労相の認定を受けるのに必要な医師少数区域内での業務内容として、▽患者への継続的な診療▽診療時間外の急変時の対応▽在宅医療▽退院カンファレンスなどへの参加▽健康診査・保健指導の実施―を提案した。

 

 厚労省案によると、医師少数区域などで一定期間勤務したことや、どのような勤務に従事したかを証明する書類を医師が提出して認定を申請する。二次医療圏単位の医師少数区域のほか、それよりも小さい「医師少数地区」での勤務も評価対象にし、勤務期間は6カ月から12カ月の間で詰める。

 

 仮に勤務期間が6カ月とされれば、認定医師が出るのは早くて20年10月になる。

 

出典:医療介護CBニュース 

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