2018.11.01
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【他科への手紙】皮膚科→血液内科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

慢性GVHDは全体像からあまり悩むことはありません。しかし、急性GVHDの皮疹は移植前治療あるいは移植後の免疫抑制剤等薬剤や各種感染症によりひきおこされる種々の臓器障害との鑑別が困難なので皮膚症状の専門家への相談が必要です。

 

血液内科の先生方には、皮膚原発リンパ腫治療に難渋したときや当科の症例に血球減少がみられたときなど、専門的な診察をお願いしております。

逆に、当科が血液内科よりコンサルトを頂くのは造血幹細胞移植後の患者さんに皮疹が出たときの「移植片対宿主病(graft versus host disease: GVHD)でしょうか?」という場合などです。皮疹がGVHDであるか否かにより、治療方針が転換するであろうと思います。一方、皮疹からの診断の限界もお伝えしないといけません。

GVHDの皮膚症状には、第一に、古典的には移植後100日目までに出現する急性GVHDである、手掌足底・四肢・前胸部などの浮腫性紅斑や丘疹、水疱・びらん形成、紅斑・丘疹が融合した紅皮症といった病像があります。

第二に、慢性GVHD(発症時期は問わない)とされる扁平苔癬様病変、多形皮膚萎縮、強皮症様変化(皮膚硬化)、脱毛、爪変形の不可逆的皮疹もあり、急性GVHDと慢性GVHDの混在例もあります。

慢性GVHDは、薬剤やC型肝炎など他の原因による扁平苔癬や強皮症・皮膚筋炎といった膠原病との鑑別は必要ですが、全体像からあまり悩むことはありません。しかし、急性GVHDの皮疹は視診上、中毒疹(ウイルスなどの感染症や薬剤に対するアレルギーによる皮膚症状)との鑑別が困難です。

視診上では、播種状紅斑丘疹型中毒疹、多形滲出性紅斑、また水疱・びらん形成のある紅皮症では中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と合致しています。これら中毒疹では、ウイルス感染症が原因にしろ薬疹にしろ、GVHDと同様に肝機能障害も伴うことが多いために、臨床像では鑑別困難です。

ただし、病理組織像では、苔癬反応(interface dermatitisとも言う)と呼ばれる、表皮へのリンパ球浸潤と、表皮角化細胞死を示唆する個細胞壊死・空胞変性・液状変性といった所見がみられ、これは播種状紅斑丘疹型であるウイルス性中毒疹や薬疹ではみられない所見です。

それでも多形滲出性紅斑(ウイルス性も薬疹も含む)や重症薬疹であるTENは、病理所見で同様の苔癬反応を呈するため、やはり明確に鑑別できません。

生検は確実にやらせて頂くにしても、すぐに結果が出ない検査でもあり、経過をみながらの判断になるのですが、それでもなお、皮膚症状の専門家としての我々を頼ってもらい、一緒に考えさせて頂ければ、皮膚科医冥利に尽きます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

  

結び

急性GVHDの皮膚症状の確定診断は皮膚科医の視診に生検を加えても限界がありますが、一緒に診察に当たらせて頂ければ幸いです。

    

      執筆:沖山奈緒子 (筑波大学医学医療系皮膚科講師)

 

 出典:Web医事新報

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