2023.04.13
3

日本人の大腸がんの危険因子は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

日本人に大腸がんのリスクを増加させている要因を、国立がん研究センターがん対策研究所 予防研究部のコホート研究部 井上真奈美部長が解説します。確実に大腸がんのリスクを増加させることがわかっているのは、喫煙,飲酒,加工肉多摂取,肥満,運動不足,成人期の高身長ですが、「ほぼ確実」にリスクを低下させるものとは、どんなものでしょうか?本文で詳しく取り上げます。

  

▶生活習慣の欧米化に伴い大腸がんの罹患数は増加の一途です。日本人の大腸がん発症に対する危険因子について,国立がん研究センター・井上真奈美先生にご解説をお願いします。

【質問者】林 朝茂 大阪公立大学大学院医学研究科産業医学教授

  

【回答】

  

【喫煙,飲酒,加工肉,肥満,運動不足,成人期高身長が大腸がんの確実な要因である】

         

まず危険因子の話をする前に,わが国の大腸がんの疫学的特性が近年大きく様変わりしていることを説明します。世界のがん統計の元締めである国際がん研究機関(IARC)による2020年のがん推計では,日本の大腸がんの年齢調整罹患率は世界で第8位にランクされ,世界の中でも大腸がんの多い国となっています。ちなみに韓国は36位,米国は45位と日本ほど高くはありません。また,日本国内では,2021年の最新がん統計予測値では,大腸がんは罹患部位の第1位(がん罹患数全体の15.5%)で,その年次推移も,1990年頃から横ばいから漸増の傾向です。このように,大腸がんは日本を代表するがんとなっています。

   

日本人の大腸がんには生活習慣の関与が大きいと言えます。現在わかっているリスク因子としては,喫煙,飲酒,加工肉多摂取,肥満,運動不足,成人期の高身長が「確実」にリスクを増加させることが知られています。また,赤肉多摂取は「ほぼ確実」にリスクを増加させ,全粒穀類,食物繊維を含む食品,乳製品,カルシウムサプリメントの摂取は「ほぼ確実」にリスクを低下させることもわかっています。

  

また,証拠は限定的ながら関連の示唆されているものとして,ビタミンC含有食品,魚,ビタミンD,マルチビタミンサプリメントによるリスク低下や,デンプンを含まない野菜の摂取不足,果物不足,ヘム鉄含有食品によるリスク増加が挙げられます。一方で,穀類・穀物,芋,動物性脂肪,鶏肉,魚介類,脂肪酸成分,乳製品以外のカルシウム源,砂糖添加食品,砂糖,コーヒー,お茶,カフェイン,炭水化物,総脂肪,デンプン,グリセミックロード,グリセミックインデックス,葉酸,ビタミンA,ビタミンB6,ビタミンE,セレン,低脂肪,メチオニン,β-カロテン,α-カロテン,リコペン,レチノール,摂取エネルギー,食事頻度,食パターンなど,話題になっている食事項目でも関連には結論が得られていないものが多々あります。

  

その他,クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は大腸がんリスクを増加させる一方,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や閉経後のホルモン治療が大腸がんのリスクを低下させることも知られています。

       

【回答者】

井上真奈美 国立がん研究センターがん対策研究所 予防研究部/コホート研究部 部長

   

 出典:Web医事新報

 

  

メディカルサポネットの

"オリジナル記事"が読み放題・

"採用に役立つ書類"のダウンロードも

   

ログイン(既に会員の方)

  •  採用のご相談や各種お問合せ・資料請求はこちら【無料】

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP