2019.09.04
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主体性を尊重 業務提案や勉強会が盛んに
(マルゼン薬局)

この薬局がすごい! 第8回「社員教育」

薬局を経営する中で、「社員の主体性を高めたい」と思う場面はよくあるでしょう。大阪市内に9店舗を構えるマルゼン薬局では、社員が自主的に勉強会を開いたり、疾患別のレシピを料理レシピ検索サイト「cookpad(クックパッド)」で紹介したりするなど主体的な取り組みが目立ちます。その気風の元にある社員教育制度や、これからの薬剤師像について、代表の村田卓さんに聞きました。

文/竹中孝行(薬局支援協会理事)
取材・撮影・編集・構成/メディカルサポネット編集部

この薬局がすごい! 第8回「社員教育」  マルゼン薬局 

 

社員の主体性を尊重 業務提案や勉強会、部活が盛んに

――貴社では管理栄養士のスタッフが「クックパッド」でレシピを提供するなど自発的な取り組みが多いと聞きました。例えば管理栄養士のスタッフにはどんなことを求めているんですか?


「管理栄養士には地域医療という活躍の場があると期待しています」と話す村田代表

「管理栄養士には地域医療という活躍の場があると期待しています」と話す村田代表


村田卓さん(以下、村田):会社は社員が自ら動くことが理想だと思います。実際、スタッフ同士が主導的にやり、工夫することを楽しんでいます。私たちは「健康サポート薬局」が出る前から、管理栄養士(RD)を採用し、大きな可能性を感じています。RDに任せてあとは自由に考えてもらっています。RDたちは薬剤師が考える以上に腎不全や肝不全、糖尿病などの専門疾患に関して十分対応できたので「任せればいい」と思いました。「クックパッド」は、あるRDが「まだ珍しい薬局の管理栄養士がレシピを提供していたら、目立つんじゃないかな?」と発案してくれました。継続してレシピを出しているうちに人気レシピが出て社内にフィードバックし、薬局で掲示したり、印刷したものを薬局に来た患者さんに配布するようになりました。管理栄養士には地域医療という活躍の場があるので、伸び代があり、もっと地域へ出れるよう工夫すべきだと思います。地域専従管理栄養士として栄養サポートチーム(NST)を目指すことも大切だと感じています。


――社長自身、今も現場で働き、勉強会にも参加されているようですが、それはどういった思いからですか?


村田:私のような経営者は珍しいかもしれません。今も毎日現場で8時間働いています。勉強会へ行くと「社長が来ていいんですか?」と言われます。私はいつも現場で、「薬剤師として何に取り組むか」「何を身につけたら胸を張れるのか」を探しています。みんながこの会社に永久就職するとは思っていませんが、「ここに来たからには何かを得てほしい」と思っています。医療現場からさまざまなことを見聞きし、「次はこれをやろう」と”目利き提案”を続けています。大きく成長していけるよう手助けをしなくていけないので、まだ自分は抜けられませんね。ただ、私は模範を示せるというより一緒に取り組んでいく形だと思います。「先輩らと一緒にやろう!」がうちのスタイルじゃないですかね。


村田代表は今も現場で働いているという。「模範を示すというか一緒に取り組みたいので」

村田代表は今も現場で働いているという。「模範を示すというか一緒に取り組みたいので」


――仕事だけではなく、部活動なども盛んにされているそうですね。「一緒に」がキーワードでしょうか?


村田:スタッフがお互いに上下関係や店舗は関係なく交流できる場があるのは大切だと感じます。私は酒が飲めないので”飲みニケーション”より体を動かす部活動が浸透しました。あるクリニックから「富士山登山」に誘われたのがきっかけです。他にも、陸上部だった子を中心に社内でマラソンが結構はやるなど群雄割拠でさまざまなことが広がっています。私はもうついていけませんけど(笑)。休みの都合をつけてみんな一緒に心から楽しみ、連携意識も出ているのかもしれません。社内で使っているLINEグループは、アルバムでサイクリングやマラソンイベント時の写真を共有し、思い出作りに一役買っています。Tシャツも誰が作り出したのか、どんな色があるのかも知りませんが、「自腹でよく買うなあー」と思います。 


瀬戸内しまなみ海道でサイクリングを楽しんだ時の写真。会社の揃いのTシャツを着用

瀬戸内しまなみ海道でサイクリングを楽しんだ時の写真。会社の揃いのTシャツを着用


――薬局の薬剤師に求められることはどんなことでしょうか? 健康サポート薬局への思いも教えてください。


村田:やはり、疾患や薬についてしっかり勉強して、責任を持てるということではないですか。うちは9店舗中5店舗が「健康サポート薬局」で、これからも「地域連携薬局」としてやれると思います。本当に目指しているのは、「専門医療機関に連携できる責任を果たせる薬剤師を育てること」でしたが。ジェネラリストとして薬剤師を育て、その中に高度薬学管理、地域在宅も皆ができるというのが目標です。そのためには抗生剤から抗がん剤まで広く深く学ぶ必要があります。他方で、大病院の門前薬局は患者さんも処方箋も多いですが、結局は薬剤を渡す以外薬剤師として十分に力を発揮できないという限界が知られたと思います。特に抗がん剤が出ている方にしっかり時間が取れていないのは、大きな問題だと思いましたのでチャンスだと感じ準備してきました。


――一番大切なことが「専門医療に対応できる連携薬局の責任を果たせる薬剤師を育てること」なんですね。


村田:私どものような地域薬局というのは、そんなにたくさんの患者さんが来るわけじゃないので、しっかり患者さんに向き合えます。「患者さんと向き合い、専門性を発揮したい」という薬剤師は付いてきてくれて、「何をどこから勉強したらいいんだろう」とか「どんな研修会に参加したらいいんだろう」とチームで解決することができます。勤務時間は週40時間ですが、自分を磨くためには+αでしかやれないと思います。「それも勤務時間に入れてほしい」というのは、ちょっと甘いことなのかなと思います。今後増える疾患を予測するなどの目利き力を高め、例えば高齢者がもっと増えたときに、高齢者が抱える疾患やがん治療の対応を知っていたり、麻薬のオピオイドローテーションまで学んでいたりすることが大切になるだろうと考えています。そういうことを学べる勉強会・研修会はいくらでもあって、社内で「今月はこれっ!」て発信していて年度内の参加者も”見える化”をして意識を高めています。そこで当社では、1、2年目は9店舗をローテーションで回り、経験と幅広い知識を身に付けてもらい、ひと通りのことを覚えてもらいます。3、4年目くらいから店舗の業務責任者にし、皆が管理者業務を学べるよう管理者が指導します。管理者業務も転職時に大事なスキルですから。


――社内でも勉強会や症例研究会をしているんでしょうか?


村田:社内勉強会では、医薬論文・EBMEvidence-Based Medicine=根拠に基づく医療)を取り入れています。「この薬で外国で最新のRCT(ランダム化比較試験)が出た」とか「非劣勢試験しか出ていない」などディスカッションしています。薬機法の改正案も挙がっていますが、これから「投薬後のフォローアップ」が義務付けされ、投薬後の管理の対人業務が増えますが、「薬剤に関しての国民の公衆衛生と健康に責任を持つ」という矜持が問われてるのです。そこに社内相互の情報収集の場として症例検討会は毎月やっています。朝は早いし無償の自由参加です。私は、これは「かかりつけ薬剤師」として当然の取り組みだと思います。また、日本薬剤師会のJPALSという生涯学習支援システムも大事なものだと思っています。医師は研修時から担当した患者の記録を全部残していますが、薬剤師は勉強したことを全然キャリアに残していないんですよね。これから薬剤師が増えていくので、「『私はこんなこと勉強してきた』『これができる』という記録をすぐに出せた方がいい」と社員には伝えています。このクリニカルラダー(レベル1~6)のテストが認定されるのではと予想しています。そこからJASPOの唯一の認定テストも挑戦させたいですね。


「薬剤師はジェネラリストを目指すべき。2年目までに全店舗を回り、3年目から店舗責任者をさせます」

「薬剤師はジェネラリストを目指すべき。2年目までに全店舗を回り、3年目から店舗責任者をさせます」


――未来を担う薬剤師・薬学生にはどんなことを伝えたいですか?


村田:「医療薬事行政は日進月歩。先輩のアドバイスを盲信するな!」です。学生実習を多数実施してきて強く感じます。簡単に情報をコピペ(コピー・アンド・ペースト)するのではなく、「自分の将来のために生きた情報収集をしてほしい」と。10年後の予定を立てて、逆算した方がいいでしょうね。薬剤師は35万人になっていて、「どんな薬剤師が必要とされているのか?」「必要とされない薬剤師は?」と想像し、プライド・実力のある新しい薬剤師になってほしいですね。できるなら「学位」を取得した方がいいでしょうね。今後、研究調査の指揮を取れる人が必要ですから。今、勘違いしたプライドを持っている人はいるけれど、結局は自分自身で高めていけるのが薬剤師かなと思っています。


マルゼン薬局株式会社

マルゼン薬局株式会社

住所:大阪府大阪市淀川区三津屋北1-5-18 

URL:http://www.e938.com
TEL:06-6838-7374

1958年、村田一郎氏が大阪市で創業。息子で現代表の村田卓氏が98年、第2創業期として調剤薬局を開業。今年は創業60周年。2007年には介護事業も始めた。卓氏は、製薬会社のMR時代に京都大学医学部附属病院の医師や薬剤部長から受けた影響が、薬剤師教育のベースになったという。

                 メディカルサポネット編集部(取材日/2019年7月3日)
 
 
この薬局がすごい!-選ばれる理由と成功のヒントー

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