2020.10.29
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2021年の改正薬機法など薬局の機能分化に対応を

【薬局編】コロナ禍で変化にさらされた医療経営の今とこれから

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療業界に重大なインパクトをもたらしました。それに伴い、薬局も大きな変化を余儀なくされた今、経営という視点からどんな対応が考えられるのでしょうか。日本経営グループのメディキャスト株式会社厚生政策情報センター事業部でセンター長を務める山口聡さんにお話を伺いました。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
写真/山本 未紗子(株式会社ブライトンフォト) 
編集・構成/メディカルサポネット編集部

■オンライン服薬指導に本腰を入れるきっかけに

 

新型コロナウイルスが薬局にもたらした影響を考えるとき、まず挙げられるのが「受診控えに伴う処方箋受付枚数の減少」でしょう。医療機関を利用する患者さんが大幅に減ったこと、特に外来の受診控えが顕著になったことで、比例するように処方箋の受付枚数も減少しています。実際、日本薬剤師会の調査※によると、2020年4月の受付状況を踏まえた5~6月の処方箋受付回数の見込みが前年比で30%以上減少した薬局は、全体の27%に上ることが明らかになりました。

  

※新型コロナウイルス感染症が薬局経営等に及ぼす影響に関する要望書の再提出について(日薬発第39号)
https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/activities/20200521.pdf

 

加えて、不要不急の外出自粛が呼び掛けられたことで、長期処方を希望する患者さんが増えたことも、経営上のダメージになり得たでしょう。特に、状態が安定している生活習慣病などの場合は「60日」「90日」といった長期処方を希望されることが多く、患者さん1人当たりの調剤医療費が下がる要因となりました。こうした状況の中、業務量に対して薬剤師が過剰となる薬局も多かったはずですが、短期間で人員配置を変更するのは困難です。人件費がそのまま負担となり、経営を大いに圧迫したことは想像にかたくありません。ただ、今回のCOVID-19感染拡大の影響は地域差があること、また薬局によってはOTCや衛生用品の販売を強化していたところでは物販の売上が向上していることが分かります。

 

医療政策が専門のメディキャスト株式会社厚生政策情報センター事業部センター長の山口聡さん 

 

今後、新型コロナウイルスがさらに猛威を振るう可能性も指摘されています。患者さんが来局しづらい環境が当面は継続することを想定し、これからの経営方針を組み立てる必要があるでしょう。そこで検討すべきテーマの一つが「オンライン服薬指導」です。新型コロナ対応のための時限的な特例措置(0410対応)として先んじて解禁されていましたが、2019年に成立した改正医薬品医療機器等法(以下、薬機法)により2020年9月から本格的に施行されています。

 

ご存じの方も多いでしょうがおさらいしておくと、「薬剤服用歴管理指導料4」は、情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合に、月1回まで43点を取得できるという内容です。これまではオンライン服薬指導に積極的な薬局とそうでない薬局の差が顕著だった印象ですが、改正薬機法の施行に合わせて複数のメーカーがオンライン服薬指導のシステムを販売するなど、環境面の整備もしやすくなってきました。

 

厚生労働省による「医療機関・薬局等における感染拡大等防止支援事業」では、「電話等情報通信機器を用いた診療体制を確保する」といった取り組みに対して、薬局の場合は70万円を上限に補助を実施しています。こうした支援制度があるうちに、オンライン服薬指導の体制を整えておくといいかもしれません。「患者さんの顔が見えるようなシステムの構築はハードルが高い」と感じるなら、特例期間中である現在、まずは電話での服薬指導からスタートしてもいいでしょう。現在のところ、「薬局における薬剤交付支援事業」により、薬剤を患者宅などに配送する経費も支援されています。

 

■「在庫管理」「感染予防」「情報発信」もキーワードに

 

もう一点、コロナ禍ならではの難しさがあるのは在庫管理の問題です。長期処方が増えるということは、一度に出す薬剤の量が増えるということです。店舗ごとに平常時より多くの薬剤を仕入・保管しておく必要があり、在庫管理そのもののコストが高くなりがちです。また、マスクやガーゼといった衛生用品については、そもそも品薄が続き、仕入れ自体が困難だった地域もあるでしょう。各店舗で必要なものを厳選し、余裕を持って入手しておくと安心です。調剤報酬に頼った経営から、衛生用品の販売やOTCの提案などを通じて患者との新しい関係を構築し、来局するきっかけを作っていくことが大事になってくるのではないでしょうか。

 

「感染対策の場所を区切ることはオンライン服薬指導にも有効です」と話す山口さん 

 

また、今回の事態を受けて、店舗内の感染予防策を見直した薬局も多いのではないでしょうか。2020年8月時点で、薬局においてクラスターが発生したという報告はありません。しかし、発熱などの症状のある患者さんも多く訪れることから、感染予防が大切な場所であることに変わりはありません。病院や診療所ほど患者さんと濃厚に接触するわけではないものの、カウンターに透明の衝立を置く、発熱している患者さんとそうでない患者さんの待機場所を分けるといった対策をしている店舗も多かったようです。実は、こうした「場所を区切る」という発想は、オンライン服薬指導の観点からも有効です。PCやタブレット、電話などで服薬指導をする場合、プライバシーを保護するための配慮がより重要になるからです。

 

コロナ禍の中で働くスタッフは、「自分も感染したらどうしよう」「いつまでこの事態が続くのだろう」といった不安を抱えていると思います。経営側は、自社がこの課題にどう対応していくのか的確に情報発信し、安心感を与えることが大切です。このことは、対スタッフだけでなく対患者さん、対地域の医療機関や介護事業者についても言えることです。医療機関などのウェブサイトを見ていると、「〇〇は行っていません」といったネガティブな情報ばかり目立つものと、「〇〇という対策を実施しています」といったポジティブな情報が分かりやすく提示されているものに大きな差があります。たとえ同じような状況であったとしても、言い回しや表現の仕方で受ける印象がまったく違ってくることに広報担当者は留意すべきでしょう。情報発信の巧拙は、集客はもちろん、スタッフの採用にも影響する可能性があります。

 

このように、新型コロナウイルス対応はさまざまな視点から考えることができます。何を優先すべきかは地域や店舗の実情により異なってくるでしょうが、いずれにしても無策のまま冬を迎えるようなことのないよう、しっかりと対策を講じておきたいものです。

 

■自店舗が地域に貢献できる方法を模索して

 

最後に、新型コロナウイルスとは直接関係ないものの、これからの薬局経営における重要な変更点をお伝えしたいと思います。改正薬剤師法により、2020年9月から「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援」が義務付けられました。ほぼ同様の内容が改正薬機法にも含まれており、薬剤師の働き方に大きな影響を与えるでしょう。

 

ここでのポイントは、それぞれの薬局が独自の基準を設け、服薬フォローする患者さんを適切に選択すること。日本薬剤師会による「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」が一つの目安になりますが、これは検査値などまで盛り込んだ具体的な内容にはなっていません。副作用や効果の確認が必要な場合、不安の強い方、新規処方、用法容量の変化、独居高齢者や小児の患者などを服薬フォローが必要な患者、としているケースをよく耳にしますね。店舗の人員配置や薬剤師のスキル、患者さんの傾向などを踏まえて、実現可能なラインに落とし込むことが重要です。

 

もう一点、薬局のあり方を大きく変えるのが「新たな機能分類」です。改正薬機法により2021年8月から施行されるもので、高度薬学管理機能を備えた「専門医療機関連携薬局」、かかりつけの機能が充実した「地域連携薬局」について、都道府県知事による認定制度が導入されます。これに「健康サポート薬局」を含めた3つの薬局のあり方が今後のスタンダードになり、2025年にはすべての薬局が、専門医療機関連携薬局か地域連携薬局に分類される見通しです。このことにより、店舗の統合やM&Aが推進される可能性も高く、1店舗当たりの規模が大きくなっていくことが見込まれます。こうした政策の大きな狙いは、地域包括ケアシステムの中で薬局や薬剤師により活躍してもらうことにあります。薬剤の専門家として地域にどんな貢献ができるのか、大局的な観点から検討することが求められているといえるでしょう。

 

 

山口聡(やまぐち・さとし)
メディキャスト株式会社 厚生政策情報センター事業部センター長

専門分野は、医療政策。2008年より、メディキャスト株式会社厚生政策情報センターで政策情報の配信 業務を経験し、医療機関を始め、医師会等の職能団体などで医療政策に関する情報や業界動向をお伝えしている。マネジメントマーケティング・コーディネータ(第300290号)。商工会議所認定ビジネスマネジャー。医療・医薬品情報研究会幹事。

 

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