2021.07.29
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介護報酬改定で義務化された3つの対策を網羅する
~①業務継続計画(BCP)~

介護経営コンサルタント小濱道博の先手必勝の介護経営 vol.10

 

編集部より

今、介護事業所の経営には、「新型コロナウイルス感染症への対応」と「制度改正を見据えた長期的な戦略」という2軸が求められています。先が見通しにくい時代に、介護経営支援に携わってきた小濱介護経営事務所の代表、小濱道博さんが「先手必勝の介護経営」と題して、1歩先行く経営のヒントを1年間にわたってお伝えします。介護報酬改定後の最初の国保連請求を終え、今後の対応への足掛かりをつかんだ経営者の皆さまも多いことと思います。第10回は、多くの介護事業者が早期に取り組むべきと話す「業務継続計画(BCP)」について、5つのポイントを解説いただきます。今回の介護報酬改定により作成が義務化されましたが、やらされ感で作成するのではなく今後2040年に向けて介護事業所が生き残っていくために必要なことだと認識して進めることが大切と言えそうです。

 

今回の令和3年度介護報酬改定で全サービスに義務化されたものに、以下の3つがある。

感染症対策

業務継続計画(BCP)

高齢者虐待対策

 

これらは3年間の経過措置が設けられた。しかし、3年間も何もしないことは、本当にもったいない。これは、早期に着手して作成を終えるべきだ。今回は業務継続計画(BCP)の準備について、5つのポイントを解説する。

 

 

  

1. 業務継続計画(BCP)作成に向けた準備

 

BCPとは中小企業庁が主導で進めている事業継続計画のことである。地震や台風などの自然災害によって事業活動を行う電力・ガス・水道・インターネット等のインフラ環境や施設設備が損傷することになっても、早期に回復ができるように対策をまとめた計画書やマニュアルを指す。これは、インターネット等で簡単にコピペできるものではない。

 

厚生労働省からは、すでに基本的なガイドラインやひな型が出されている。感染症BCPと自然災害BCPに分かれて、施設・通所・訪問ごとに区分される。その地域特性や事業内容、利用者層、経営理念などが基本となって事業所ごとに作る必要がある。自然災害直後やコロナ禍で職員が濃厚接触者に認定された場合は、出勤できる職員数は大きく減少する。

 

通常の20〜30%程度の出勤率で、どのようなサービスや業務を優先して提供を始めるか。

50%になったらどうするか。

80%ならどの業務を・・・。

このように有事の時に再開する優先業務を決めておくことで、素早く業務を再開することができる。

 

また、水道の断水や電気のブラックアウト、ガスの停止、道路の破損などの要因によっても優先順位が異なっていく。これらのことを、職員を交えてじっくりと計画にまとめていく。

 

 

地震調査研究推進本部全国地震動予測地図2020年版

 

 

2. 研修・訓練の定期的な実施も必要

 

業務継続に向けた計画等の策定(BCP)では、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施において、定期的(在宅サービスは年1回以上、施設サービスは年2回以上)な研修を開催して記録しなければならない。

 

なお、感染症の業務継続計画研修は、感染症の研修と一体的に実施することも差し支えないとされた。訓練(シミュレーション)は、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(在宅サービスは年1回以上、施設サービスは年2回以上)に実施する。1人で運営される居宅介護支援事業所などは、他のサービス事業者と連携してBCPの作成などを行う必要がある。

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