2021.10.20
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【最終回】ハラスメントのない働きやすい職場づくりをめざして

今さら聞けない人事・労務のイロハ vol.6

  

 

編集部より

本連載も、今回でいよいよ最終回を迎えます。2020年から2021年にかけては、コロナウイルス感染症対応のため、各職場においてもコミュニケーションがスムーズにいかずギスギスしてしまう場面が多く見られるのではないでしょうか。いわゆる、「コロナうつ」や「コロナハラスメント」というような事例にあたる相談を受けることも多くなってきています。最終回は、ハラスメントのない職場づくりのために、ハラスメントに関する正しい理解を助けるための情報をお伝えするとともに、ハラスメントの起きにくい職場づくりに向けてのヒントについてもふれていきます。

 

執筆/皆川 雅彦(特定社会保険労務士、社会保険労務士法人葵経営 代表社員、労働保険事務組合 葵経営 会長)

編集/メディカルサポネット編集部

 

 

ハラスメントによって引き起こされる職場の諸問題

ハラスメント(Harassment)とは、いろいろな場面での『嫌がらせ、いじめ』の総称です。

他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にする、尊厳を傷つける、不利益や脅威を与えるなど、ハラスメントの種類はさまざまです。

 

ハラスメントが起きやすい職場環境例

☑ 交流が少ない閉鎖的な職場(コミュニケーション不足)

☑ 過重労働やストレスが多い職場              

☑ 多様な雇用形態(正職員・非正規職員)が混在する職場

☑ 役職や世代間での価値観の相違が大きい職場      

☑ 業績主義の職場 等

 

「それはハラスメントにあたるのではないでしょうか?」というような言動が職場で日常的に起きていたとしたら、どんな諸問題が引き起こされるでしょうか。

 

ハラスメントが多い職場に良いことなど何もないと言えます。そして、大事なことは、実際に「ハラスメントにあたるかどうか?」だけでなく、職場において「それはハラスメントです」とお互いの信頼関係が揺らぐ事態に陥ることを危惧します。

 

厚労省が位置付ける「3大ハラスメント」とは

ここ最近、何にでも「○○ハラスメント」とネーミングしてテレビや雑誌など等で取り上げられる機会が増えてきましたが、厚生労働省が法律として位置づけているハラスメントは、以下の3つとしています。

①セクシャルハラスメント
②マタニティハラスメント/育児・介護に関するハラスメント
③パワーハラスメント

 

 

 

図:3つのハラスメントの概念

 

 

法律としては、3つのハラスメントそれぞれに根拠となる条文があり、定義等が縦割りで定められていますが、実際の現場ではさまざまなハラスメントが融合した形で問題化するケースが多く見受けられます。

 

ハラスメントが多い職場で日常的に起きていた問題
1) 本人(ハラスメントを受けている人)の仕事のパフォーマンスの低下
2) ハラスメントが起きている職場の士気の低下
3) 離職率の増加
4) 精神疾患(メンタル不調者)の増加
5) 事業所の損害賠償請求のリスク(加害者とともに使用者責任を問われるケースあり!)
6) 組織に対する世間の信頼低下(特にSNSを通しての風評被害など)

 

ハラスメント対策の導入に向け、まずはこれら3つのハラスメントの概念を正しく理解すること、つまり、職場において周知・共有することが出発点となります。

 

 

①セクシャルハラスメント(男女雇用機会均等法)

セクシャルハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条第1項で定められており、以下のように規定されています。

「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者が労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」

  

セクシャルハラスメントにおいて、職場で対応する際の重要なポイントをいくつか整理しておきましょう。

 



1)セクシャルハラスメントは男性から女性だけでなく、女性から男性へ、同性同士もあり得るということ。さらに言えば、近年はいわゆる「LGBT」をカミングアウトした人へのハラスメントも問題となっている
2)ハラスメントを受けた側が、unwelcome(望まない)な言動かどうかが重要である

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