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2020.12.07
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管理職が知っておきたい離職の原因

裵英洙のマネジメントのちから~人事で悩むあなたへ~
vol.3

 

編集部より

医師で、医療機関コンサルティング会社、ハイズ株式会社代表の裵 英洙(ハイエイシュ)さんの連載「マネジメントのちから~人事で悩むあなたへ~」の第3回目。裵さんは勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感したそうで、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)でMBA(経営学修士)を取得し、現在は各地の病院の経営アドバイザーとして活躍しています。病院経営で重要な「人事」を切り口に、組織マネジメントのポイントを毎月お伝えします。今回は、ハイズ株式会社コンサルタントでの小野田 美貴さんによる「辞めたい」の裏側にあるスタッフの本音に関するお話です。「家庭の事情で退職したい」という退職理由は果たして真実なのでしょうか?ハーズバーグの理論を用いて、管理職に求められるスキルについて解説しています。

  

執筆/小野田 美貴(ハイズ株式会社コンサルタント、看護師、保健師)

監修/裵 英洙

編集/メディカルサポネット編集部

管理職の仕事において、人材の確保と育成は大変重要です。医療は労働集約型産業であるため人材を継続的に確保することは必要不可欠な要素となります。だからこそ、突然の離職は業務を円滑に実施するためにはまず避けるべきことであり、同部署のチームメンバーにも業務量の負担、心理的な負担など多くの影響を及ぼしかねません。

今回は部下が離職を考える原因についてお伝えします。

 

離職は個人の要因か組織の問題か

管理職を続けていると退職希望の部下と接することがあると思います。管理職としてはまずは話を聞くことになります。その時、その部下は退職の理由を何と答えるでしょうか。ある企業が行った調査によると、退職時に本音を言う職員の割合は47%との結果があります。上司に報告する退職理由のうち最も多かったのは「家庭の事情」でしたが、報告しなかった「本当の理由」(≒本音)の第1位は「人間関係が悪かった」でした。結婚や介護といった個人的な理由で退職希望を伝える職員がいますが、実は本当の理由を言えないまま去っていった職員も少なくないのかもしれません。つまり、個人要因を建前の理由としてあげつつも、本音は組織要因や人間関係の悪化により退職していくケースもかなりあることがうかがえます。

 

 

人が仕事をやめようと思うとき

米国の臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは、人間が仕事に対して満足感を感じる要因(動機づけ要因)と不満足感を感じる要因(衛生要因)は全く別のものであると提唱しています。それぞれの要因の具体的内容は下記になります。

動機づけ要因に含まれる要素
「仕事における達成感」「やりがい」「昇進」「責任」「能力の向上」「成長」など
衛生要因に含まれる要素
「対人関係」「労働環境」「給与」「会社の方針」など

  

前述の退職理由の本音で最も多かった「人間関係が悪かった」は衛生要因であり、不満足を感じると言えるでしょう。また実際の傾向としても退職理由に衛生要因をあげる人の方が多いことも事実です。仕事をする上で、組織内の人間関係や労働条件といった環境が働く人にとって重要であるということはもちろんです。さらに、組織全体で文化や風土、良好なコミュニケーションの構築といった職場環境の整備が重要となってくることがうかがえます。

 

仕事の「やりがいがない」という人の本音

仕事ぶりは申し分ないのに、突然「辞めます」という部下に出会ったことはありませんか。そういう部下はよく「やりがいがない」という言葉を使います。今までは一言に「やりがいがない」といわれても、本音がわからなかった管理職は少なくなく、主観的かつ曖昧な言葉であるがゆえに、やりがいを理由にした退職には深く切り込めずに悩んでいる場合も多かったのではないでしょうか。

 

では「やりがい」を分析してみましょう。「やりがい」とは、動機づけ要因であり、満足感を感じるものです。「やり甲斐」と書き、大辞林によると、動詞「やる」の連用形「やり」に付き、その行為の結果としての効果・価値・張り合いなどのことです。つまり、仕事のやりがいは仕事によって発生する効果や価値のことを指します。効果や価値を何に感じるかは人それぞれですが、その価値に不満がある場合に人は「やりがいがない」と表現するようになります。

 

  

部下の日々の変化に目を向ける

ハーズバーグの理論では、動機づけ要因が満たされると満足感は得られますが、欠けていても絶対的に不満足感を引き起こす訳ではありません。一方、衛生要因はかけていると不満足感は引き起こしますが、満たしていてもそれが満足感につながるとは言えないとされています。よって、部下の退職希望の原因が動機づけ要因にある場合には、満足感を与えることが必要であり、衛生要因が原因である場合には、その不満足感を取り除く努力が必要ということになります。

 

部下の仕事ぶりを日々確認することはもちろん、心身の変化や取り巻く環境の変化にまで目を向けることが部下の揺れ動く退職心理に気づくことにつながります。多くの管理職は多忙であり、実際に部下との関わりの時間を十分に持てなくなっている方もいらっしゃるでしょう。しかし、部下から上司へ話を持ち掛けたり、相談したりするには勇気がいることであり、心理的ハードルが高くなります。だからこそ、管理職自ら意識的に歩み寄り、笑顔で声をかけることで部下の心理的な垣根を低くしてあげたいものです。部下が離職を考えるに至るには様々な要因があるものの、何らかの場面やシーンでシグナルを出すものです。それは言葉だけではなく、行動や表情などからも垣間見られます。だからこそ、管理職にはそのシグナルや変化を注意深く観察する能力が求められるのです。

 

管理職の重要な仕事のひとつは、部下がいかに不満を抱かずに働き続ける環境を整備することです。その視点に立つと、部内の離職率はその管理職の評価といっても過言ではありません。優秀な人材確保が難しいご時世、働きやすい環境整備を意識しつつ、部下の日々の変化を鋭く嗅ぎ取る観察力こそが管理職に求められているのです。

 

※次回は2021年1月中旬に公開予定です。

Profile

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長、慶應義塾大学 特任教授、Keio Business School 特任教授、 高知大学医学部附属病院病院長 特別補佐、高知大学医学部 客員教授、横浜市立大学医学部 客員教授。

奈良県出身。1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科に入局、金沢大学をはじめ急性期病院にて外科医・病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院 経営管理研究科(慶應ビジネススクール)に入学。首席で修了し、MBA(経営学修士)を取得。現在、ハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザーとして活躍中。 また、アカデミックの分野では慶應義塾大学 特任教授はじめ複数の客員教授を務め、病院経営に関して教鞭を取る。 さらに、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」や「医師需給分科会」の公職を歴任。日経メディカルや日経ヘルスケア等で連載を書き、発刊された書籍は通算15万部以上のベストセラーとなっている。

 

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